子どもが性のあり方を話してくれたとき|保護者が尊重しながら支えるには

子どもが性のあり方を話したとき、まずは本人の言葉を聞き、今してほしいことを確かめられます。その場で用語や将来を決めたり、親族や学校へ知らせたりする必要はありません。保護者自身の戸惑いは、子どもに説明や安心を与えてもらう役を負わせず、別の相談相手へ話せます。

最初の返事で、全部理解したふりをしなくてよい

驚いて言葉が出ないことや、知識が足りず何と言えばよいか迷うことはあります。「話してくれてありがとう。今すぐ全部は分からないので、あなたが伝えたいことを聞かせてほしい」と返す方法があります。質問することと、本人の経験を否定することは別です。

「その年で分かるはずがない」「友人やネットの影響でしょう」と理由を決めると、今困っていることを聞く機会が減ってしまうかもしれません。一方、「分かった、これからはこうしよう」と親が先に決めることも、本人が望む支えと違う場合があります。まず、聞いてほしいのか、暮らしを変えたいのかを確かめます。

AACAPの家族向け資料は、性別についての自己認識、表現、性的指向を区別し、子どもが自分をどう説明するかを理解することを勧めています。[1] 服や遊びの好みだけで、本人の性のあり方や将来が決まるわけではありません。本人が用語を使っても、今は名前を選んでいなくても、その日の言葉から話せます。

性のあり方をどう呼ぶかと、今日困っていることを分ける

説明用の例です。子どもが、学校で呼ばれる名前や更衣の時間につらさがあると話しました。保護者は将来のことを急いで聞きたくなりますが、本人はまず明日の学校をどう過ごすかを相談したかったのかもしれません。将来の全てに答えることを、今の助けの条件にしなくてよいのです。

「家ではどの呼び方がよい?」「学校でいちばん困るのはどの時間?」と、小さく聞けます。家と外で使いたい呼称が違う場合も、誰に知られているかによって事情が変わります。本人へ何度も一貫性を証明させるのでなく、今どんな条件なら過ごしやすいかを考えます。

AACAPの2024年の方針は、性自認や表現の多様性を尊重し、本人ごとのニーズに応じた支援を示しています。[2] 性のあり方を変えることを目標にせず、いじめや不安など、本人が感じている苦痛への支援を考えます。医療に関する希望や疑問がある場合は、経験のある専門家へ個別に相談する課題であり、この一般記事で治療の必要性や時期を決めるものではありません。

誰へ伝えるかを、善意だけで決めない

支えてほしいと思って、もう一人の保護者や担任へすぐ知らせたくなるかもしれません。しかし、本人がまだ知られたくないこと、伝わると家や学校で困ることがあるかを先に聞けます。「誰に知ってほしい?」「伝えるならどの内容まで?」「今は伝えないでほしい人はいる?」と、相手と範囲を分けます。

文部科学省の生徒指導提要は、本人が知られたくない場合への配慮と、学校で支援のために情報を共有するときの説明・相談を示しています。[3] 「学校へ相談したら全員に伝わる」でも、「一人に話せば絶対にほかへ伝わらない」でもなく、共有の目的、相手、内容を具体的に確認します。

先ほどの例なら、「担任には更衣の負担を相談したいが、クラスで説明することは今は望んでいない」と伝えられます。学校へ行く前に、本人が何を希望し、どの説明ならよいかを話せます。親が相談するために本人の情報を使うときも、できる範囲でその意図を説明することが大切です。

学校では、診断の名前より必要な条件から相談できる

服装、呼び方、更衣、トイレ、宿泊行事等、困る場面は一人ひとり違います。文部科学省の提要は、個別の状況に応じた支援を示し、診断がない場合も悩みや不安に寄り添う支援を求めています。[3] 掲載された配慮が、すべての学校で希望どおり提供されるとの保証ではありませんが、何を確かめたいかの材料にできます。

「この場所なら必ず使える」と先に本人へ約束するより、学校の担当者へ選択肢を聞きます。どの大人が本人の希望を確認し、対応を決め、困った場合に見直すのかも相談できます。本人を全教職員への説明係にしたり、同級生を説得する役にしたりする必要はありません。

からかい、脅し、無断の情報拡散があるなら、本人が目立たないよう振る舞う努力だけにせず、安全を守る対応を学校へ求められます。[1][3] 性のあり方を尊重することと、いまの危険や強い不調を確認することは両立します。安全を保てない状態は通常の心理相談を待たず、医療や公的支援へ知らせます。

親の不安は、子ども以外の場所で支える

周囲の反応や将来を心配したり、自分の期待が変わったようで戸惑ったりすることがあります。その気持ちを持った自分を責め続ける必要はありません。ただし「親を安心させるために考えを変えて」と、子どもへ役割を渡さないことを考えます。

保護者の相談では、「否定したくないのに、将来が怖くて質問を重ねてしまいます。本人への返事と、自分の不安の行き先を分けて考えたい」と話せます。同じ立場の保護者の集まりが役立つ場合もありますが、他家庭の選択を本人の正解にしないこと、子どもの情報の扱いを確認することが必要です。

相談先へは、性の多様性をどう理解して支援するか、本人や家族にどんな目標を求めるかを尋ねられます。親の望む性のあり方へ子どもを変えることを目的にせず、本人の希望、困りごと、安全を尊重して考えられるかを確かめます。[2]

ALVARAでは18歳以上の保護者ご自身の迷いや関わりを相談できます。本人の言葉を一度で理解し切ることより、分からないところを尊重して聞き直し、必要な助けを一緒に確かめる関係を考えられます。

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参考・引用文献

  1. AACAP. Transgender and Gender Diverse Youth, Facts for Families No.122(2024年3月)
  2. AACAP. Policy Statement on Access to Gender-Affirming Healthcare(2024年6月承認)
  3. 文部科学省「生徒指導提要」(2022年12月)第12章12.4

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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このコラムについて

本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。