もの忘れが気になっても、それだけで認知症かどうかは分かりません。以前との違いや暮らしで困る場面を、かかりつけ医やもの忘れ外来などで相談できます。
年齢だけでも、心配の強さだけでも決められない
もの忘れの背景にはさまざまな病気があり、治療による改善が見込めるものもあります。国立長寿医療研究センターも、認知症の原因として、脳の病気だけでなく甲状腺の病気などを紹介しています。自分で加齢か病気かを見分けようとせず、体調や薬も含めて診てもらうことが大切です。
ただし、突然会話がかみ合わなくなった、急にぼんやりするなど、いつもと違う混乱が出た場合は、通常のもの忘れの予約を待たず、早急に医療へ相談してください。意識が悪いなど緊急の状態なら、救急の対応が必要です。急な変化を、年齢や性格のせいとして様子を見続けないでください。
診察で大切なのは、本人が感じる変化、検査で確かめる力、毎日の暮らしで必要になった手助けを、一つのものにしないことです。もの忘れを強く自覚していても、それだけで検査の結果は分かりません。逆に、本人があまり困っていなくても、以前より生活の手助けが増えている場合があります。国立長寿医療研究センターでも、認知機能に加え、気分や日常生活、介護者の負担を含めて状態を見ています。
「忘れた数」より、何が難しくなったか
例えば、同じ予定を何度も確かめ、約束の日を取り違えることが増えた場面を考えます。診察では「もの忘れが多い」だけでなく、「以前は一人で予定を管理できたけれど、最近は家族に確認することが増えた」と伝えると、暮らしの変化が伝わります。
買い物、支払い、料理、薬の管理など、気になる場面が一つあれば十分です。完璧な記録や、家での記憶力テストは必要ありません。家族と見方が違う場合も、自分が困っていること、家族が気づいたことを、別々に医師へ伝えられます。
予定を守れていても、何度も確かめるために長い時間がかかる、家族の電話がなければ難しい、といった違いもあります。『できた・できない』だけでなく、以前より増えた手間や助けを見ると、困り方が伝わります。本人と家族の見方が違うことも、どちらかが間違いと決める前に、見ている場面の違いとして医療者へ伝えられます。
受診には、今の体調と使っている薬も
受診の際は、お薬手帳や使っている薬が分かるものを持ち、睡眠や食欲、最近の病気や転倒なども話します。付き添いを頼むなら、本人の話を代わりに全部答えてもらうのではなく、思い出せない点を補ってもらう形を相談できます。
気になることを一つ聞くなら、「今の困りごとについて、何を確かめる診察になりますか」「暮らしで手伝ってもらうとよいことはありますか」と尋ねられます。検査の意味や結果が分かりにくければ、その場で聞き直してかまいません。
検査は原因を考える材料の一つであり、一つの点数だけで今後の暮らしが決まるものではありません。医師の説明と、生活の変化を合わせて理解します。結果がすぐ一つに決まらない場合には、どんな変化があれば再相談するか、いつ経過を確かめるかも尋ねられます。
困る場面には、道具や人の手を使う
予定を一つのカレンダーに集める、物を置く場所を決める、必要な用事を一緒に確かめるなど、暮らしの手助けは診断が決まる前から考えられます。薬や火の扱いに不安がある場合は、安全のために家族や医療・地域の担当者と相談してください。道具を使っていても、医療で確かめることが不要になるわけではありません。
カレンダーや置き場所の工夫は、記憶を試すものではなく、頭の中だけで覚えておく量を減らす手助けです。使い慣れた方法があれば、それを生かすことから考えられます。心理相談では、忘れることへの怖さや家族への伝え方、自信が揺らぐ気持ちを話せます。会話だけで認知症かどうかを決めるものではないため、医療での確認と、心配への支えをそれぞれ持つことができます。
参考資料・引用文献:国立長寿医療研究センター:もの忘れセンター・診療のご案内 / 国立長寿医療研究センター:認知症の原因 / 国立がん研究センター:がん治療のために重要な「せん妄予防」と「心のケア」(急な混乱の説明)
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このコラムについて
本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。
