家族のもの忘れが気になっても、記憶力を試したり、認知症だと指摘したりすることから始める必要はありません。本人が困っていることと、家族が心配なことを、具体的な生活の場面から話せます。
「また忘れた」では、受診の話が難しくなることがある
同じことを何度も聞かれると、家族も疲れます。ただ、間違いを示して納得させようとすると、本人は責められたり、今までの生活を取り上げられたりするように感じるかもしれません。「病気を認めてもらう」より、「暮らしで困っていることを一緒に診てもらう」という話へ近づけます。
説明用の場面として、通院日を取り違えたことが続いた場合を考えます。「何も覚えていないから病院へ行こう」ではなく、「予定が行き違うことが続いて、私も心配しています。体調や薬のことも、一緒に先生へ聞いてみませんか」と伝える方法があります。本人が何を心配しているかも尋ねます。
何が嫌なのかを、先に聞いてみる
受診を嫌がる理由は、病名を告げられる怖さ、検査への不安、移動の負担、家族に全部決められそうな気持ちなど、さまざまです。理由が分からないまま繰り返し勧めるより、「病院へ行く話で、いちばん気になるのは何ですか」と聞けます。
いつものかかりつけ医に先に話す、受診の流れを聞く、付き添う人を本人に選んでもらうなど、できることも変わります。約束せずに連れて行く、別の用事と偽るといった進め方は、本人との信頼に影響するため、まず医療や地域の担当者と相談してください。
もの忘れと、自分で決める力を一括りにしない
予定を忘れることがあっても、「何を心配し、誰と受診したいか」を話せる場合があります。厚生労働省の意思決定支援は、認知症があっても本人に意思があるという考えを基盤に、考えを形にすること、表すこと、暮らしに反映することを支えます。[5] この家族に認知症があると決める説明ではなく、病名を疑う段階でも本人を話し合いから外さないための視点です。
情報を一度に伝えすぎない、静かな場所で話す、本人が話しやすい相手と相談するなど、表しやすい条件を考えます。言いよどむことを「希望がない」と受け取らず、本人の言葉を待ちながら、医療や地域の担当者にも助けを求められます。家族がその場で判断能力を判定する必要はありません。
本人が今は望まなくても、家族だけで相談できる
地域包括支援センターなどには、家族から接し方や受診の勧め方を相談できる場合があります。忘れたことを全部集めるより、「支払いが重なった」「料理で火を消し忘れそうになった」など、生活で気になる場面を伝えます。家族自身の疲れや、話すと衝突することも相談してよい内容です。[1]
受診することになったら、誰が話すかも本人と確かめます。「まず自分で話して、足りないところだけ補ってほしい」という希望もあります。家族の心配だけで進めず、本人の不安や困りごとも医師へ届く形を考えます。
診察では、記憶の課題だけでなく、生活での変化、身体の状態、薬などを合わせて確認します。[2][3] 家族からは、「何も分からなくなった」という結論より、以前との違いと、実際に困った場面を伝えると、本人の話とは別の手がかりになります。記憶力を試すために、日常で質問を増やす準備は必要ありません。
急な変化と、安全への心配は別に対応する
突然ぼんやりする、会話がかみ合わなくなるなど、急な混乱は、徐々に進むもの忘れだけとは限りません。早急に医療へ相談し、意識が悪いなど緊急の場合は救急の対応を求めてください。本人の受診への気持ちをゆっくり考える場面と、今の安全を守る場面は分ける必要があります。[4]
普段の薬、火、お金の扱いなどが心配な場合も、一人で監視を増やすだけで抱えず、医療や地域の支援と具体的な助けを考えられます。心理相談は、その過程で生じる怖さやいらだち、家族としてどこまで担うかを話すためにも使えます。
参考・引用文献
記事のつくり方
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このコラムについて
本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。
