高齢の家族の気分の落ち込みが心配なとき

高齢の家族が外出や食事をしなくなったときは、年齢だけで理由を決めないことが大切です。気分だけでなく、痛みや薬、睡眠など体のことも含め、本人の話を聞いていきます。

「元気を出して」の前に、変わったことを尋ねる

説明のために、毎朝散歩していた家族が、最近は家を出ず横になっている場面を考えます。「運動しないと余計に弱るよ」と励ます前に、「最近、散歩に行っていないようだけど、何かしんどいことがある?」と尋ねる方法があります。寂しさのほかに、膝の痛みや、外で転ぶ怖さがあるかもしれません。

すぐ答えがなくても、質問を重ねて理由を言わせる必要はありません。「話したくなったら聞くよ」と伝え、食事や睡眠など、家族が気づいた変化を本人と確かめられます。元気そうに話せる日があっても、それだけで困りごとがないとは限りません。

身体の訴えと、気分の変化を切り離さない

高齢期のうつ病では、気分の話より体調不良の訴えが先に目立つことがあると、国立長寿医療研究センターも説明しています。ただし、だるさや痛みを家族が「心のせい」と決めることはできません。かかりつけ医に、体の症状と、楽しみ・食事・眠りの変化を合わせて伝えてください。[1]

受診を勧めるなら、「気分を治してもらおう」より、「食べられないことと、体の重さを一緒に診てもらいませんか」と、本人が感じている困りごとから話せます。使っている薬も医師へ知らせ、家族の判断だけで増減や中止をしないでください。

うつでは、悲しさより「以前楽しめたことに気持ちが動かない」という、興味や喜びの低下が目立つ場合もあります。考える、決める、行動を始めることも難しくなりえます。[3] 家族と一度笑えたか、外出を断ったかだけでなく、普段との変化がどのくらい続き、暮らしのどこが難しくなったかを医師と確かめます。

一方、意欲が減る理由はうつだけではありません。痛み、身体の病気、薬の影響、認知機能の変化など、見た目の似た状態を区別する必要があります。家族が原因を言い当ててから受診を勧めるのでなく、気づいたことと本人の訴えを、そのまま医療へ届けられます。

日々の助けは、小さく選べる形に

「何でも言って」だけでは、本人も頼み事を決めにくい場合があります。「今日は食事を一緒に食べる? 買って届けるほうが楽?」など、負担の少ない選択肢を示す方法があります。食べられる量や体調によっては医療の助言が必要なので、無理に外へ連れ出したり活動を増やしたりすることを目標にしないでください。

家族が全部を代わると、本人が自分でしておきたいことまで失われる場合もあります。手伝ってほしい部分を聞き、難しいときは地域の担当者へ相談できます。支える家族も、心配で休めなくなっていることを話してよいのです。

急な混乱や、安全への心配がある場合

急に意識がぼんやりする、話のつじつまが合わない場合は、単なる落ち込みや加齢として様子を見ず、早急に医療へ相談してください。身体の状態や薬などに関連する急な混乱は「せん妄」と呼ばれ、反応や注意が時間帯によって変わることがあります。[2]

せん妄は興奮する形だけではありません。静かで反応が遅い、動きや食事が減る「低活動型」もあり、見逃されやすいとNICEは示しています。[4] 落ち着いて見えるから大丈夫とは判断せず、「昨日から急に」「朝と夕方で違う」など、変化の始まりと揺れを伝えます。ほとんど飲食できない、強く衰弱している場合も、医療の判断が必要です。

「死にたい」「いないほうがいい」などの言葉があるときは、否定や説得だけで終わらせず、気持ちと今の安全を直接確かめます。今すぐ自分を傷つけそう、すでに傷つけた、安全を保てない場合は、一人にせず緊急の支援につないでください。通常の心理相談の予約を待つ場面ではありません。

心理相談では、本人の寂しさや家族との気持ちの行き違い、家族側の声のかけ方も扱えます。体調を診る医療と、暮らし・気持ちを支える相談の両方を使うことができます。

参考・引用文献

  1. 国立長寿医療研究センター「精神科部」
  2. 国立がん研究センター:がん治療のために重要な「せん妄予防」と「心のケア」(急な混乱の説明)
  3. National Institute on Aging. Depression and Older Adults(うつの症状と高齢期の現れ方).
  4. National Institute for Health and Care Excellence. (2010, updated 2023). Delirium: prevention, diagnosis and management in hospital and long-term care (CG103), recommendations 1.3.1–1.3.2.

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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このコラムについて

本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。