高齢者が「家族に迷惑をかける」と感じるとき

家族に迷惑をかけたくないと思っても、一人で全部続けなければならないわけではありません。助けてほしいことと、自分で決めておきたいことを、別々に伝えることができます。

「迷惑」の中で、何をいちばん心配しているか

お金を使わせること、仕事を休ませること、何度も頼むこと、自分の生活を全部決められること。心配の中身は人によって違います。家族が「迷惑じゃないよ」と言っても落ち着かないときは、その中のどれが気になるのかを話せるかもしれません。

説明用の場面として、病院へ付き添ってほしいけれど、そのあと家のことまで全部決められそうで頼めない場合を考えます。ここでは、人の手を借りたくないのではなく、選ぶところまで渡したくない気持ちがあるのかもしれません。

慢性の病気がある人への研究では、「自分が相手の負担になっている」というつらさが「自覚的負担感」として扱われています。[3] 本人がそう感じることと、家族が実際に何に困り、どのくらい負担しているかは、同じ情報ではありません。「そんなことはない」と打ち消すだけでなく、何を迷惑だと心配しているかを聞く意味が、ここにあります。

家族が通院の付き添いで困っているなら、調整するのは日時、移動、役割かもしれません。一方、本人が「頼ると自分の価値がなくなる」と感じるなら、予定の変更だけではそのつらさは残ります。実務の負担を減らす話と、助けを受けることの意味を話す時間を、両方持てます。

手を借りる範囲を、一つずつ話す

例えば、「病院まで一緒に行ってほしい。診察ではまず自分で話して、足りないところを補ってほしい」と伝える方法があります。「買い物の荷物は持ってほしいけれど、買う物は自分で選びたい」でもかまいません。できる部分を全部失う形にせず、必要な部分だけ頼むことを考えられます。

ただし、無理に自分で続けることが安全に関わる場合は、医療や地域の担当者と相談する必要があります。何を自分で行い、どこを手伝ってもらうかは、一度決めたら終わりではなく、体調や暮らしに合わせて見直せます。

支えを借りて決めることと、決定を全部代わってもらうことも区別できます。厚生労働省の認知症の意思決定支援でも、本人に意思があることを前提に、分かりやすい情報や表しやすい環境を整えることが重視されています。[4] 認知面に難しさがある場合も、助けが必要な部分を確かめずに、生活全体の希望がないと扱うものではありません。

家族からは、引き受けられる形を伝える

「何でもやるから大丈夫」という言葉は温かくても、本人はどこまで頼めるか分からないかもしれません。「今月の通院は付き添える」「平日は難しいけれど、買い物の注文はできる」と具体的に話すと、頼み方を考えやすくなります。難しい部分はサービスやほかの人を使えるか、一緒に探せます。[1]

家族にも負担があることを、本人の価値の話へ結びつけないことが大切です。疲れているなら、その用事をどう減らすかを話し、本人がいること自体を負担として伝えないようにします。家族側も、地域包括支援センターなどへ自分の疲れを相談できます。[2]

役に立てない日も、助けを受けてよい

できる役割を持ちたい場合は、予定を自分で伝える、家のことを選ぶ、話を聞くなど、体調に合う参加の仕方があります。一方で、何かを返せることが支援を受ける条件ではありません。体がつらい日は休んでいても、助けを借りることができます。

「自分がいないほうがよい」などの言葉が続く場合は、家族だけで励まし続けず、気持ちと今の安全を確かめ、医療や専門の相談先へつないでください。今すぐ自分を傷つけそうな場合は、一人にせず緊急の支援が必要です。

心理相談では、家族への気遣いや、助けを頼む怖さを話せます。診断や薬の処方を行うものではないので、落ち込みや体調の変化が続くときは医療も利用します。本人の気持ちと家族の暮らしを両方大事にしながら、頼み方を一緒に考えられます。

参考・引用文献

  1. 厚生労働省:地域包括ケアシステム・地域包括支援センターの案内
  2. 厚生労働省:厚生労働省の取組について(仕事と介護の両立・家族介護者支援、2023年)
  3. Cousineau N, McDowell I, Hotz S, Hébert P. (2003). Measuring chronic patients’ feelings of being a burden to their caregivers: development and preliminary validation of a scale. Medical Care,41(1),110–118. doi:10.1097/00005650-200301000-00013.
  4. 厚生労働省. (2025). 認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第2版).

WRITTEN BY

このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

プロフィールを見る

公開日
最終更新日

記事のつくり方

記事ごとの関連資料は本文末尾に掲載しています。情報源の選定、更新、訂正、心理療法・心理検査の掲載範囲については、記事のつくり方を確認できます。

心理コラムの記事のつくり方を見る

このコラムについて

本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。