トラウマフォーカスト認知行動療法(TF-CBT)は、トラウマに関連する症状を持つ子ども・青年と、その安全な養育者を対象とする、成分と段階を明確にした心理療法です。ここでのTF-CBTはCohen、Mannarino、Deblingerらの固有の心理療法モデルを指します。成人のトラウマ焦点認知行動療法を広く表す言い方とは区別が必要です。[1]
発達と養育関係を介入に組み込む
子どものトラウマ反応は、記憶や不安だけでなく、行動、自己理解、対人関係、学校生活にも現れます。TF-CBTは、子どもが反応を理解し調整する技能を学ぶとともに、養育者が子どもの状態を理解し支えられるよう、並行して取り組む構造を持ちます。養育者を原因と決めつける介入ではありません。[1]
養育者の参加には、子どもを安全に支える人であることが前提です。家族であれば誰でも共同面接へ参加させるわけではなく、継続する虐待や暴力、安全、養育者自身の症状を評価します。本人と保護者の話を分けて聞く時間と、必要な内容を共有する時間の目的を明確にします。
言語能力、認知発達、感情を表す方法、文化的な理解に応じて、説明や表現を調整します。年齢のみで適否を決めるのでなく、子どもの状態、支援者、生活条件に対して、このモデルを適切に実施できるかを検討します。
介入の構造をどう理解するか
TF-CBTでは、心理教育、養育者への支援、リラクセーションや感情の調整、認知的な対処、体験を発達に合う形で扱う作業、子どもと養育者の共同作業、安全と今後への支援などを組み合わせます。レビューでは、技能の獲得、トラウマ記憶と意味の処理、統合という段階的な構成と、段階的な曝露が各成分に含まれることが説明されています。[1]
これは、全員が同じ回数を順番どおりに消化すればよいという意味ではありません。各段階へ配分する時間や表現方法は、症状の複雑さや発達、生活の安定性に応じて調整します。技能の練習だけを続けて記憶や意味を扱わない場合も、準備を省いて体験を詳しく語らせる場合も、モデル全体の再現とは限りません。
本稿は家庭で子どもに記憶を書かせたり、語らせたりするための手順書ではありません。体験を心理療法の中で扱う作業には、訓練を受けた専門家による評価、説明、子どもの同意への配慮、負担を把握する仕組みが必要です。
専門施設の試験と地域外来の試験
Cohenらの2004年の多施設無作為化比較試験は、性的虐待に関連したPTSD症状のある8〜14歳の子ども229人と保護者を対象に、TF-CBTと子ども中心療法を比較しました。PTSDのほか、抑うつ、行動問題、羞恥、虐待に関連する認知などを評価し、TF-CBTの優位な改善が報告されています。[2]
Jensenらの2014年の試験は、ノルウェーの地域外来で、10〜18歳156人をTF-CBTと通常ケア(TAU)に割り付けました。PTSD関連症状、抑うつ、機能障害などの改善はTF-CBTで良好でしたが、一般不安の群間差は統計的に有意ではありませんでした。専門施設の結果を地域外来で検証した点に意味があります。[3]
ただし、性的虐待を受けた児童の試験と、複数の体験・症状を持つ地域外来の試験は対象が異なります。両試験をまとめて「全てのトラウマを受けた子どもへ同じ効果」と表現することはできません。評価時点と研究体制を踏まえ、介入直後の改善と長期維持も区別します。
臨床評価の焦点
評価では、体験の有無だけでなく、再体験、回避、警戒、気分や考え方、発達に応じた行動の変化を確認します。睡眠、登校、遊び、友人関係、家庭内の安全も重要です。子どもと養育者の報告が一致しない場合には、一方を直ちに誤りと扱わず、それぞれが観察できる場面と内面の違いを検討します。
クライエントが多くの苦痛を持つとしても、全てがトラウマ由来とは限りません。発達、学習、身体疾患、抑うつ、他の不安症状、喪失への悲嘆なども評価します。分類基準を満たすかという問いと、どの支援が必要かという問いを区別すると、分類基準への該当の有無だけで支援を狭めずに済みます。
継続する危険があるなら、安全の評価と保護を含む支援が先行または並行して必要です。現在の危険に対する適切な警戒を、過去の記憶への過度な回避と同じように扱ってはいけません。介入で扱う対象を、本人・家族・関係機関と共有します。
実施忠実度と個別化は両方が必要
介入の名称だけでは、研究された内容が実施されているか分かりません。成分の有無、養育者の参加、担当者の訓練・相談体制、症状評価の方法を確認する必要があります。TF-CBTの一部だけを取り出した相談の効果を、モデル全体の試験結果で保証することはできません。[1][3]
一方、実施忠実度とは、子どもの反応を無視して台本を守ることでもありません。どの核心成分を保ち、何を発達や文化に合わせて変更したかを説明できることが大切です。面接での反応に加え、家庭・学校での生活の変化、面接後の負担、本人と保護者の希望を確認しながら進めます。
子どもの語りが増えたことだけで回復を判断しません。日常で安全を区別できる、支えを求められる、回避が減って活動が戻るといった変化を評価します。研究で有意な改善が示されても、全員が十分に改善するわけではないため、反応が乏しい場合の再評価や別の支援も必要です。
相談先を検討するとき
TF-CBTを希望する場合には、子どもを対象とする医療・心理支援機関で、モデルの訓練を受けた担当者、養育者が参加する方法、学校などとの連携、危機時の対応を確認してください。乳幼児と養育者の関係を主に扱うCPPなど、別のモデルとの違いも、発達と症状に応じて検討されます。
ALVARAでの18歳以上の保護者本人への相談と、子ども本人と養育者へ提供するTF-CBTは区別されます。保護者自身の困りごとを話す支援は、子どもの評価・介入を代替するものではありません。
参考文献
- Cohen JA, Mannarino AP. (2015). Trauma-focused Cognitive Behavior Therapy for Traumatized Children and Families. Child and Adolescent Psychiatric Clinics of North America, 24(3), 557–570. 論文・書誌情報(DOI: 10.1016/j.chc.2015.02.005)
- Cohen JA, Deblinger E, Mannarino AP, Steer RA. (2004). A multisite, randomized controlled trial for children with sexual abuse-related PTSD symptoms. Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry, 43(4), 393–402. 論文・書誌情報(DOI: 10.1097/00004583-200404000-00005)
- Jensen TK, Holt T, Ormhaug SM, et al. (2014). A randomized effectiveness study comparing trauma-focused cognitive behavioral therapy with therapy as usual for youth. Journal of Clinical Child & Adolescent Psychology, 43(3), 356–369. 論文・書誌情報(DOI: 10.1080/15374416.2013.822307)
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このコラムについて
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