担当者が変わると言われたとき|新しい相談先へ何を引き継ぐか

担当者の交代が決まったときは、気持ちの整理がつく前でも、引継ぎの方法や次の相談までの支えを確認できます。もう一度全てを詳しく話すことを、当然の条件にしなくてかまいません。何を引き継ぐかと、交代についてどう感じるかを、分けて話し合えます。

分かっていても、納得できない気持ちは残りうる

異動や退職の事情は理解していても、「やっと話せたのに」「また一から関係を作るのか」とつらくなる場合があります。新しい担当者がよい人かどうかだけでは、今の関係が終わる寂しさや不安は説明できません。

説明用の例です。相談者は、担当者の異動を知り、「大丈夫です」と答えました。しかし帰宅後、次の予約を取りたくなくなり、紹介の書類も読めなくなっています。ここでは交代に賛成したかどうかだけでなく、急に知らされたこと、初めから話す怖さ、次の支援の見通しがないことも話題にできます。

「事情は分かりますが、気持ちは追いつきません」でかまいません。NICEの成人精神保健の指針も、支援の終わりや移行に伴う感情を踏まえ、本人と計画的に相談する考え方を示しています。[1] 日本の全機関に同じ移行手順があるという説明ではありませんが、見通しを確かめる視点になります。

交代の理由と、選べる範囲を聞く

同じ機関内での交代なのか、別の機関への紹介なのかでも条件は変わります。誰が次の担当を決めるか、別の候補を聞けるか、初回を受けてから継続を検討できるかを確認します。希望が全て通るとは限りませんが、何も選べないと決める前に説明を求められます。

担当者がいなくなることと、支援が不要になったことは同じではありません。次の相談先が適している理由、対応できる内容、料金や予約方法、受付までの期間も聞きます。以前の機関の条件が、そのまま次へ続くとは限らないためです。

交代前に話す時間が残っていない場合は、機関の責任者や受付窓口へ、誰が引継ぎを説明するかを尋ねられます。担当者本人に連絡できないために、全ての確認を諦める必要はありません。

引き継ぐのは、過去の詳しい経緯だけではない

本人の負担を減らすための引継ぎには、既に分かっている情報を送ることだけでなく、「どんな進め方なら話しやすいか」を残す意味もあります。支援を適切に引き継ぐことは、専門職の倫理でも重視されています。[2]

  • 今の相談の目的と、特に困っている生活の場面。
  • 役立った対応と、負担が強くなった進め方。
  • 既に受けている医療やほかの支援、調整が必要なこと。
  • 繰り返し詳しく話すのがつらい内容や、今は扱いたくない話題。

先ほどの例なら、「急に過去を詳しく尋ねられると話せなくなる」「次回に何をするか最後に確認できると安心する」も、大切な情報になります。初回の負担を減らすために、何を先に説明しておくとよいかを相談できます。本人が完全な引継ぎ書を作る義務はありません。

何がどこへ渡るかは、送る前に確認する

同じ建物の中の交代と、別の機関への情報提供では、確認事項が異なる場合があります。「誰が、どの資料を、何のために受け取りますか」「私が希望を伝える場はありますか」と聞きます。本人の意思や守秘への配慮は、連携でも必要です。[3]

一方、共有を避けたい事情があるときも、必要な安全情報や医療との連携を含め、どこまで本人の希望で決められるかは説明を受けます。全てを渡すか、全てを拒むかの二択にせず、目的に必要な範囲と、難しい場合の理由を確かめます。

新しい担当者が、既に書いてあることをもう一度尋ねる場合もあります。現在の状態や理解を確認するためか、資料が届いていないのか、意図は同じではありません。「前にも話している内容なので、何を確認したい質問か教えてください」と聞くことができます。

面談の空白と、初回後の見直しまで考える

次の面談日、予約が取れないときの連絡先、状態が変わったときの相談先を確認します。体調が不安定なら、既に関わる医療機関とも支援の空白について相談します。差し迫った危険がある場合、担当者の交代が終わるまで一人で待つ計画にはしません。

初回で全てを話せなかったからと、引継ぎの失敗と決めなくてかまいません。「今日は現在困っていることから始めたい」「前の担当者との進め方で役立ったことがあります」と、今の希望を伝えられます。新しい関係でも、進め方を確かめる時間を持てます。

説明用の相談例:「次の担当者へ、今の目的と話すときの配慮を引き継いでほしいです。何を共有するかと、次の面談までに困ったときの窓口を確認できますか。」

引継ぎを受けることは、自分の気持ちを早く片づけることではありません。寂しさや不安が残ったままでも、負担を減らし、必要な支えをつなぐための準備を進められます。

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参考・引用文献

  1. NICE. Service user experience in adult mental health(CG136), Recommendations. 2011.
  2. 一般社団法人日本臨床心理士会.倫理綱領(2017年5月15日改定)
  3. 公益社団法人日本公認心理師協会.倫理綱領(2020年9月18日理事会議決)

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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このコラムについて

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