会社の相談窓口で話したことはどこまで伝わる?|利用前に確かめたい情報共有

会社の相談窓口で話した内容が、どこへどの形で伝わるかは、窓口の役割や契約、情報の種類によって異なります。「会社がお金を出すから全部伝わる」「外部の窓口だから何も伝わらない」と決めず、詳しく話す前に共有の範囲を確かめられます。

最初に、窓口が何をするところかを確認する

同じ会社の案内に載っていても、人事の手続き窓口、産業医・保健師等による健康相談、外部機関のカウンセリングでは仕事が違います。たとえば、休職の手続きを受け付ける窓口と、本人の気持ちを扱う相談が、同じ情報を同じ目的で持つとは限りません。

予約前なら「この窓口は、本人の相談を支える機関ですか。それとも会社への報告や就業上の判断も担当しますか」と聞けます。案内にEAPなどの名称があっても、それだけで運用全体は分かりません。会社の外にあるかどうかより、自分と会社に対してどんな役割を持つかが確認の手がかりです。

公認心理師には秘密を守る義務があります。[1] ただし、これだけで受付情報、会社との契約上の報告、法令や安全上の例外まで全て説明できるわけではありません。相談担当者の資格と、利用する仕組みの説明の両方を確かめます。

利用した事実、話した中身、集計した報告を分ける

「会社に報告しますか」という一つの質問では、双方が違う情報を思い浮かべることがあります。次のように分けると、何を心配しているのかが伝わります。これは、実際に全ての情報が報告されるという一覧ではありません。

情報の種類 確認したいこと
利用・予約の情報 氏名や利用日、利用回数を会社が把握するか。請求や予約の担当者には何が見えるか。
相談の具体的な内容 話した言葉、相談記録、担当者の見立て等が、誰にどの範囲で渡るか。
個人を特定しない集計 どんな項目をまとめるか。少人数の部署や珍しい出来事から本人が推測されることへの配慮はあるか。

集計という説明であっても、個人の記録そのものとは分けて聞けます。「上司は利用したことを知りますか」と「相談内容を知りますか」は別々に尋ねてよい質問です。今は上司に知られたくない事情があるなら、内容を話す前に、その希望を伝えられます。

共有が必要なときも、何を伝えるかを話し合う

説明用の例です。仕事量が増え、眠れなくなった人が、相談で家族との葛藤も話したとします。勤務上の配慮を検討するには業務量や就業上の負担を伝える必要があっても、家庭で起きた全ての経緯が同じように必要とは限りません。

厚生労働省の職場の健康情報に関する指針は、情報を扱う目的、担当者の権限、取り扱う範囲等を明確にする考え方を示しています。[2] 個々の窓口に当てはまる制度や手続きは確認が必要ですが、「支援のため」という言葉を、具体的な説明へ進める入口になります。

たとえば「人事へ伝える目的は何ですか」「上司には勤務上の配慮だけを伝える形にできますか」「文書を送る前に、内容と送付先を一緒に確認できますか」と尋ねます。希望が全てかなうと約束されるわけではありません。それでも、何が相談でき、何が制度上必要なのかを知ってから選ぶ助けになります。

同意の取り方と、例外の説明まで聞いてよい

「必要な場合は共有する」と言われたら、必要かどうかを誰が判断するのか、本人にはどの時点で説明があるのかを聞けます。命や身体の保護、法令に関わる事情では、本人の同意だけで決められない場合もあります。[1][2] 例外があることと、いつでも自由に会社へ話してよいことは同じではありません。

署名やチェック欄のある書類は、可能なら目的と範囲を読んでから確認します。分からない言葉に印をつけ、一度説明を受けてもかまいません。同意の変更を希望するときの連絡先、既に共有された情報がある場合の扱いも聞けます。「とにかく何も書かないほうが安全」と一律に考えるより、支援と情報の扱いを一緒に理解する方法です。

話し始める前に、一つ確認するなら

説明用の質問例:「相談を利用したことと、ここで話す内容について、会社の誰に何が伝わりますか。私に確認せず共有する場合があるなら、その条件も先に教えてください。」

全部の規程を自分で読み解いてから相談する必要はありません。この問いへの説明を受け、納得できる範囲から話す方法もあります。窓口が目的に合わない、説明が分からない場合は、説明を行う責任者や別の相談先を尋ねられます。

勤務の正式な調整は人事や産業保健の窓口、体調の評価は主治医等へ、という役割の違いも大切です。会社の対応の適法性と、心理的なつらさへの支援は同じ判断ではありません。相談先を選ぶ際には、話を聴く姿勢だけでなく、その機関が扱えることと扱えないことも確かめられます。[3]

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参考・引用文献

  1. 公認心理師法(厚生労働省掲載条文)
  2. 厚生労働省.労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針(2022年3月31日改正)
  3. 公益社団法人日本公認心理師協会.倫理綱領(2020年9月18日理事会議決)

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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このコラムについて

本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。