大切な人との別れや喪失に向き合うとき

大切な人との死別や別れのあと、悲しいだけではなく、腹が立つ、何も感じない、ほっとして自分を責めることもあります。気持ちが一つにまとまらなくても、決まった順番で立ち直ろうとしなくて大丈夫です。

普段どおりにできる日があっても、悲しみが終わったとは限らない

仕事では笑って話せても、家に帰ると急につらくなることがあります。逆に、周囲が心配するほど泣けず、自分の気持ちが分からないこともあります。ある一日の様子だけで、大切に思っていたかどうかや、悲しみの深さは決まりません。

例えば、連絡や手続きをこなしている間は忙しく、夜になって一人分減った食卓を見ると、急に現実を感じる場面を考えます。手続きが終わる時期と、気持ちが落ち着く時期は同じとは限りません。周囲が日常へ戻っても、自分には支えが必要なことがあります。

悲しみに向き合う時間と、離れて過ごす時間

死別後の対処を考える「二重過程モデル」は、亡くなった人を思うことなど喪失に向き合う側面と、変わった生活や役割に取り組む側面の間を行き来すると捉えます[1]。悲しみに触れることだけを続けるのでも、暮らしの用事だけをこなすのでもなく、その両方から一息つくことも含む考え方です。

これは死別への対処を説明する理論で、全員が同じ順番や割合で進むという規則ではありません。離別など別の喪失へ、そのまま当てはめられるとも限りません。ただ、悲しみを話せない日や、別のことに集中できた日を「逃げている」と採点しなくてよい、という見方の助けになります。

気持ちを話したい日と、用事を助けてほしい日

助けてもらうというと、悲しみを語ることを思い浮かべるかもしれません。でも、買い物、食事、手続きの付き添いを頼むことも支援の受け方です。「今日は詳しく話せないけれど、夕飯を一緒に食べてもらえると助かる」と伝えられます。

たくさんの連絡に返事をするのが重いなら、「気にかけてくれてありがとう。今は返事に時間がかかります」と短く知らせる、信頼できる人に連絡を取り次いでもらう方法があります。毎回、気持ちを説明して相手を安心させる役を担わなくてかまいません。

参加するか、断るかの間を作る

集まりに誘われたとき、全部参加するのはつらくても、少し人に会いたいことがあります。「短い時間だけ行く」「途中で帰ってもよいことにする」「今日は断って、別の日に一対一で会う」など、間の形を選べます。楽しめる瞬間があっても、亡くなった人や失ったものを大切にしていないことにはなりません。

思い出の品をどうするかも、急いで決めなくてよい場合があります。ただ、手続きに期限があるものは、気持ちの話とは別に、家族や専門の窓口へ確認できます。生活上の用事を助けてもらうことと、悲しみを早く片づけることは違います。

支えを頼むときも、気持ちと暮らしを一つにまとめなくてかまいません。話を聞いてくれる人には手続きが分からないことも、事務を助けてくれる人には気持ちを話しにくいこともあります。一人にすべてを求めず、「この用事だけ」「今日はこの話だけ」と分けられると、今ほしい助けを選びやすくなります。支援を受けることは、悲しみを終わらせる約束ではありません。

一人で抱える時間が長くなったら

心理相談では、同じ話を何度しても、話さないまま今の暮らしを考えてもかまいません。「前を向けないこと」ではなく、「帰宅後の時間がつらい」「人からかけられる言葉に困る」といった話から始められます。支え合う集まりが合う人もいれば、個別の相談のほうが話しやすい人もいます。

眠れない、食べられない、身の回りのことが難しい状態が続くときは、悲しみだから仕方ないと我慢せず、医療機関にも相談してください。安全を保つのが難しいときには、身近な人と一緒に緊急の支援につながる必要があります。悲しみ方を採点するためではなく、いまの生活を支えるために助けを求められます。

参考資料・引用文献:国立がん研究センター「家族のがんが進行・再発したとき」グリーフケアの案内 / [1] Stroebe M, Schut H. (1999). The dual process model of coping with bereavement: Rationale and description. Death Studies, 23(3), 197–224. DOI:10.1080/074811899201046.

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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