眠るためのお酒が増えたときは、「意志が弱い」と責めるより、眠れない理由と飲酒の影響を一緒に医療で相談することが大切です。長く多量に飲んでいる場合、急な断酒が危険になることもあります。自己流の中止や減量計画を始める前に、安全な対応を医師と確かめてください。
「寝つける」と「休める」は同じではない
飲むと一度は眠くなるので、不眠への対処になっていると感じるかもしれません。それでも夜中に目が覚める、朝すっきりしない、以前より多く飲まないと眠れないなら、寝つけたかどうかだけでは、その後の睡眠や体への影響を捉えられません。
厚生労働省の睡眠ガイドでは、アルコールは一時的に寝つきを促す一方、睡眠後半の質を悪くし、習慣的な使用で依存や耐性、飲まないと眠れない状態に至る可能性があると説明されています。寝酒につながる不眠は、医師に相談することが勧められています。[1]
これは、すべての不眠がお酒から始まったという意味ではありません。仕事の時間、痛み、気分の落ち込み、生活の心配などが先にあり、それをしのぐために飲み始めた人もいるでしょう。飲酒だけを切り離して叱られるのが怖いなら、「眠れなかったことも含めて相談したい」と伝えられます。
急にやめる前に、医療で安全を確かめる
「今日から一滴も飲まない」と強く決めれば安全、とは限りません。長期間にわたる多量の飲酒のあと、急に飲酒をやめると、離脱によりけいれんなど、生命に関わる問題が生じる場合があります。米国の国立アルコール乱用・依存症研究所も、安全な回復の計画を医療と相談するよう案内しています。[2]
すでに飲酒をやめたり減らしたりしたあと、けいれんや意識の異常など急な体調の変化がある場合は、通常の心理相談の予約を待たず、救急医療の助けを求めてください。次に飲む量を自分で調節して乗り切ろうとせず、飲んでいた状況と変化を医療者へ伝えます。
この記事では、安全にやめられる量や、家庭での減らし方の手順は示しません。期間、飲み方、体の状態、服薬などで判断が変わるためです。「受診するには先にやめておく必要がある」と考えず、今の状態のまま、受診先へどう相談すればよいか連絡できます。
量のほかに、「何のために飲むか」を話す
説明用の例として、翌日の仕事を考えると眠れず、最初は夕食時だけだった飲酒が、寝る直前や夜中にも増えた場合を考えます。このとき、飲酒量の確認に加え、「眠れないと翌日働けない」「一人の夜に考え事を止めたい」という目的も、支援を考える手がかりになります。
診断は、自分で量だけを比べて決めるものではありません。「周りはもっと飲んでいる」「毎日仕事には行けている」ことだけで、相談する必要がないとも決まりません。飲酒で困っていることがある段階から、医療機関や公的な相談先を使えます。[3]
話せる範囲で、いつ頃から、どんな種類をどのくらい飲むか、飲む時間、夜中や翌朝の様子を伝えます。正確な数字を覚えていなくても、普段使う容器や購入の頻度などから話せます。記録がないために受診を先延ばしにする必要はありません。少なく申告したくなる怖さがあれば、その怖さも相談の対象です。
不眠・不安・薬のことを、同じ受診で確かめる
診察では、「眠れないから飲む」のか、「飲まないと落ち着かない」のか、どちらとも言いにくいのかを、生活の経過に沿って話せます。飲む前からの不眠、飲み始めた後に変わった体調、やめようとしたときの経験を区別できれば、医師が安全な対応を考える資料になります。
使っている処方薬、市販薬、サプリメントも伝えてください。アルコールと特定の薬の併用には有害な相互作用があり得ます。[2] 眠れない夜に薬を追加したり、飲酒のために処方薬を抜いたりするなど、自己判断の変更は避け、処方医や薬剤師へ確認します。
「今は安全に飲み方を変えられる状態か」「不眠はどこで相談するか」「体調が変わったときはどこへ連絡するか」と、知りたいことを分けて尋ねられます。医療の説明が難しかったら、言い換えや再説明を求めてかまいません。治療の選択や今後の方針は、自分の生活上の事情も伝えて相談します。
受診の入口と、気持ちを話す場を分けて持つ
どこを受診すればよいか分からない場合は、保健所、精神保健福祉センター、地域の依存症相談拠点などへ相談できます。厚生労働省が相談機関を案内しています。[3] まず受診先や相談の流れを聞くこともできます。名称や担当範囲、予約の要否は地域の窓口へ確認してください。
心理相談では、夜への不安、飲酒を知られる恥ずかしさ、仕事上の負担、家族とのすれ違いなどを話せます。ただし、離脱の危険や身体の診察、薬の判断を心理相談だけで引き受けることはできません。医療による安全の確認と、気持ちや生活を支える相談を並べて考えます。
誰かに一緒に受診してほしい場合は、どこまで話したいか、診察に同席してほしいかも選べます。家族がいない、知られたくない事情がある、費用や通院時間が心配という場合は、その条件を窓口へ伝えられます。相談する前に、周囲へすべて打ち明ける義務はありません。
予約の連絡が負担なら、まず相談窓口に「受診先を探すところから手伝ってほしい」と言えます。医療につながった後も、次に何を相談すればよいか迷うことはあります。説明を受けて納得できなかった点や続けにくい事情は、隠すより次回の相談に持ち込める内容です。
持ち帰る一言は、「お酒をやめる決意が固まっていません。でも、眠るために増えているのが心配です」で十分です。完璧な決意を作ることより、今の不眠と飲酒を安全に相談できる相手へつながることから始められます。
関連する内容は、眠れないことが心配なとき、不安が頭から離れないとき、ストレスコーピングとはでも読めます。
参考・引用文献
記事のつくり方
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このコラムについて
本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。