痛みが続き、気持ちも疲れているとき|医療と心理的な支えを使うには

痛みが続いて気持ちも疲れているとき、心理的な支えを使うことは「痛みは気のせい」と認めることではありません。身体の診察を受けながら、眠れなさ、予定を立てにくい不安、分かってもらえないつらさも相談できます。痛みの程度と、暮らしで困っていることを、両方伝えるのが入口になります。

痛みが見えにくくても、体験は尊重される

検査の説明を聞いても、痛みのすべてに納得できる理由が見つかるとは限りません。周囲から「異常がないなら大丈夫」「考えすぎでは」と言われると、痛いことに加えて、痛いと言うことまで難しくなるかもしれません。

国際疼痛学会は、痛みを個人の体験として捉え、生物学的・心理的・社会的な要因がさまざまな程度に関わること、本人の痛みの訴えを尊重すべきことを示しています。[1] 心理面が関わるという説明は、身体の問題がないという判断や、本人が痛みを作っているという意味ではありません。

「気持ちの問題と片づけられたようでつらかった」ことも、次の診察や心理相談で話せます。痛みの原因をこの記事や自分だけで決める必要はありません。原因についての説明を理解することと、その時点で困っていることへの支えを得ることは、どちらも大切です。

新しい変化は、長く続く痛みと分けて医療へ

治療中でも、痛む場所や出方が変わった、急に強くなった、新しい身体の変化が重なった場合は、いつもの痛みと決めず医療へ相談してください。英国NICEの慢性疼痛の指針も、状態が変われば診断を見直すことを示しています。[2] 急な重い症状や意識などの異常があれば、通常の相談予約を待たず、救急医療の助けを求めます。

通院先では、「どんな変化なら予定より早く連絡するか」「次の受診までに困ったらどこへ相談するか」を確かめられます。痛みのある人が、すべての変化を一人で医学的に判定するためのルールを覚える必要はありません。迷いがあること自体を医療者へ伝えます。

薬が効きにくい、眠気などで生活が難しい場合も、医師や薬剤師へ相談します。自己判断で薬を増減・中止したり、痛みを我慢して予定をこなすことを治療の代わりにしたりせず、治療の目的と負担を一緒に確認します。

「どれくらい痛いか」の次に、生活への影響を話す

説明用の例として、痛みが少ない日に買い物と掃除をまとめて済ませ、翌日は予定を断って横になる暮らしを考えます。「今日は痛みが軽い」と伝えるだけでは、その後の生活や、予定を入れる怖さまでは見えません。活動の前後を含めて話すと、調整したい部分が具体的になります。

NICEは、痛みと暮らしがどう影響し合うかを、仕事、睡眠、身体・心理的な健康、人との関係などから本人と話すよう勧めています。[2] これは「生活を正せば痛みが消える」という因果の断定ではありません。痛みの治療と並べて、生活上の負担を見落とさないための視点です。

たとえば、「痛みが何点か」に加えて、「入浴すると夕食の準備ができない」「外出の翌日に休めず、予定を入れられない」「家族へ説明するたびに責められる」と伝えられます。記録を付けるなら、医療者と必要な範囲を相談し、記録そのものが生活を圧迫しない方法を選びます。

動くか休むかを、根性の選択にしない

「少し動くべき」と「しっかり休むべき」の間で迷うことがあります。けれど、病気やけがの状態、治療の段階、仕事の条件によって、必要な調整は異なります。この記事から運動量を決めたり、痛みを押して活動を増やしたりすることは勧めません。

医師やリハビリテーションの担当者には、できた動作だけでなく、その後の影響や、本人が戻したい生活も伝えられます。説明例なら、「買い物に行けること」だけでなく、「翌日に食事を作る余力を残したい」が相談の目的になります。できる日と難しい日の両方を見て計画を考えます。

仕事については、主治医や産業医・産業保健、人事などの正式な窓口で、勤務上の配慮を相談します。「痛みのことを全員へ説明する」以外にも、必要な配慮と共有範囲を確かめる方法があります。病状の判断を同僚に委ねたり、理解を得るために機微な情報をすべて話したりする必要はありません。

心理的な支えは、痛みを否定せず使える

心理相談では、痛みが強くなる怖さ、できなかった自分への厳しさ、人に頼むことへの迷いなどを扱えます。大切な予定を断った悲しさや、「また迷惑をかける」と連絡を避ける負担も相談の対象です。痛みの医学的評価を終えるまで、気持ちの支えを受けられないわけではありません。

ただし、心理相談を受ければ痛みがなくなると保証することはできません。何を目標に、どんな方法を使い、負担をどう確かめるかを担当者へ尋ねてください。診断や治療法、運動や服薬の判断は医療へ確認し、心理相談にどこまでを期待するかを分けて考えます。

厚生労働省は慢性の痛みに関する医療と相談支援の情報を案内しています。[3] 通院先へ、痛みを多職種で相談する選択肢や、暮らしを支える窓口を尋ねられます。専門機関へすぐ通えない場合も、費用、移動、仕事の都合を含め、今使える支えから相談してかまいません。

家族や友人へ助けを頼む際も、理解してもらう説明と、実際にしてほしい手伝いは分けられます。「詳しい原因はまだ確認中です。今日は重い荷物を運ぶことだけ頼みたい」のように、説明を完了させずに頼める用事があります。相手の反応が乏しくても、痛みが軽いという証拠にはなりません。

「痛みをゼロにする」だけでは今日の目標が遠すぎるときは、「予定を断る連絡を一緒に考えたい」「診察で困り方を伝えたい」という具体的な目的もあります。痛みがある今の生活も、大切に扱われる対象です。気持ちが疲れたことを話すために、痛みの存在を証明し直す必要はありません。

関連する内容は、気分の落ち込みが続くとき、カウンセリングを受ける目安|相談を考えるサイン・医療機関との違い・相談先、ストレスコーピングとはでも読めます。

参考・引用文献

  1. International Association for the Study of Pain. Terminology: Pain.
  2. NICE. (2021). Chronic pain (primary and secondary) in over 16s: assessment of all chronic pain and management of chronic primary pain. NG193, recommendations 1.1.5–1.1.8.
  3. 厚生労働省「慢性疼痛対策」.

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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