落ち込みが続き、楽しめない、動き出せないときは、気合いの足りなさと決めなくて大丈夫です。理由を説明できなくても、生活への影響が出ていることを相談できます。
気分だけでなく、暮らしに起きていることを見る
落ち込んでいても笑える日や、仕事だけは何とかできる日があります。それでも、帰ると何もできない、食事を抜く、好きだったことに手が伸びないなら、本人には大きな負担があるかもしれません。元気そうに見えることだけで、つらさは判断できません。
説明用の場面として、仕事へ行っているけれど、帰宅後は友人のメッセージを開けず、洗い物もたまっている一日を考えます。このとき必要なのは、「以前のように全部こなす」計画より、食事や休息を確保し、急がない用事を減らすことかもしれません。
気分が沈むと動く力が減り、外出や人との接点、楽しみだった時間が少なくなることがあります。その結果、気分が変わる機会も減るという循環が生じる場合があります。一方、仕事や家事を無理に続けて消耗している人には、さらに予定を足すことが負担になります。同じ「何もしたくない」でも、生活が細っているのか、頑張りすぎて休みがないのかで、最初の助けは変わります。
今日の用事を、少なくしてよい
食事は作れなければ買えるものを使う、片付けは生活に必要な場所だけにする、返事は「今は余裕がなく、返信に時間がかかります」と一行にする。丁寧さを下げることが、いまの暮らしを支える方法になる場合があります。
できそうなら、カーテンを開ける、着替える、玄関の外へ少し出るなど、小さい動きを一つ選べます。ただし、できることの数を増やす試験ではありません。動いたあとに強く疲れるなら量を減らし、できなかった日を失敗として数えなくてかまいません。休みながら支援を受けることも、一つの進め方です。
小さな行動と、治療としての行動活性化
心理療法には、気分と行動のつながりを調べ、生活で大切な活動を取り戻していく「行動活性化」があります。成人の大うつ病を対象としたCOBRA試験では、定められた方法で行う行動活性化と認知行動療法を比較し、症状の改善について事前に決めた基準で劣らない結果が報告されました[1]。これは、専門家と進める治療の研究です。散歩や家事を一つすれば同じ効果が得られる、という意味ではありません。
生活の中では、「今日これをすると少し暮らしが保てるか」「終わったあと消耗しすぎないか」を目安にします。休む、食べるために助けを借りることも含め、現在の体力に合う量を探します。動けなさが強いときに、自分で活動計画を完成させてから受診する必要はありません。
「元気を出して」より、具体的な助けを頼む
周囲に話すなら、「気分が落ち込んでいて、夕食を決めるのも難しい。今日は一緒に買いに行ってほしい」のように、手伝ってほしいことを一つ添えられます。励まされるのがつらいときは、「今は解決策より、話を聴いてもらえると助かる」と伝える方法もあります。
身近な相手に伝わらなかった場合も、つらさが小さいという意味ではありません。本人をよく知る人だけが相談相手ではなく、医療機関、地域の相談先、心理職など、関係のない相手から始める道もあります。予約の電話が難しければ、付き添いや連絡の手伝いを頼めます。
受診と心理相談は、役割が違う
落ち込みは、うつ病に限らず、体の病気や薬の影響などとも関係することがあります。眠れない、食べられない、日常のことができない状態が続く場合は、医療機関で診てもらってください。急な悪化や安全への心配がある場合は、通常の予約を待たず緊急の支援が必要です。
心理相談では、抱えている負担や、自分を責める気持ち、周囲への頼み方などを話せます。医療が必要な状態で、話すことだけですべて対応するものではありません。すでに通院中なら、今の変化を主治医へ知らせたうえで、心理相談をどう一緒に使うか確かめられます。
相談の最初は、「いつからか分からないけれど、帰宅後に何もできない」でかまいません。きれいな説明より、今の暮らしをそのまま伝えることが、助けを探す出発点になります。
参考資料・引用文献:国立精神・神経医療研究センター「こころの病気について理解を深めよう」 / [1] Richards DA, Ekers D, McMillan D, et al. (2016). Cost and Outcome of Behavioural Activation versus Cognitive Behavioural Therapy for Depression (COBRA): a randomised, controlled, non-inferiority trial. The Lancet, 388(10047), 871–880. DOI:10.1016/S0140-6736(16)31140-0.
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このコラムについて
本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。
