ことばの発達が気になるときは、話す言葉の数だけでなく、子どもが何をどう伝えているかも大切にします。心配があるなら、年齢の目安を調べ続けるだけでなく、保健師や小児科へ相談できます。
「ことばが心配」にも、違う困り方があります
言葉を理解したり使ったりすることと、音をはっきり出すこと、ことばが滑らかに出ることは、同じではありません[1]。また、家では文章で話すのに園では声が出にくいなど、話す場所によって困る場合もあります。心配の中身は重なることもあるため、ここで病名を選ぶ必要はありません。まず「何が、どんなときに難しいか」を相談できます。
言葉を覚える時期には、「分かる」と「言う」を分けて
言葉を理解することを受容言語、自分から言葉で表すことを表出言語と呼びます。また、知っている言葉を相手に伝わる形で使うことも、別に考えます。物の名前は言えても頼みたいときに言えない、決まった手順なら動けても言葉だけの説明では分かりにくい、といった違いがあるためです。
説明用の例です。子どもが冷蔵庫を指さして声を出します。「言ってごらん」と待ち続けると泣きます。この場面では、言葉の数を増やす前に、「お茶かな」と確かめ、伝わったことを返す道があります。指さし、物を持ってくる、体を向けるなども、やり取りの一部です。目を合わせたり言葉で言ったりするまで、応じない練習にする必要はありません。
相談では、単語の数に加え、何を分かっているか、どう要求や気持ちを知らせるか、遊びで相手とやり取りするかも見てもらいます。一つの姿だけで特定の病名や、将来の言語能力が決まるわけではありません。
言わせる回数より、伝わるやり取りを考えます
子どもが見ている物や伝えようとしたことへ、大人が短い言葉で返すと、言葉がどんな場面で使われるかを一緒に経験できます。絵本を試験のように何度も指して答えさせるより、「大きい車だね」と添えて待つなど、本人の興味から始める方法があります。発音の違いを毎回言い直させず、伝わった内容へ応じることもできます。
主に就学前の子どもについて、親が言語支援の方法を学ぶ介入をまとめた76研究のメタ解析では、言語・コミュニケーション等の改善との関連が報告されました[2]。研究されたのは支援者から具体的な方法を学ぶプログラムであり、「家庭で話しかける量を増やせばよい」「遅れは親の関わりのせい」という結果ではありません。
言葉の理解や使い方に迷うなら、言語聴覚士等に、普段の短いやり取りのどこを助けるとよいかを相談できます。家庭全体を訓練時間に変える必要はありません。ここで紹介した言語支援の研究を、発音、ことばの詰まり、場面による話しにくさへ、そのまま当てはめることはできません。
話し方や、話す場所が気になるとき
音が出しにくい、ことばが詰まって本人がつらそうなどの心配は、単語を増やす練習だけにまとめず、小児科や言語聴覚士のいる専門機関へ相談できます。家庭で毎回言い直させたり、滑らかに話せたかを採点したりする必要はありません。伝えたい内容を聞きながら、どのような支援が必要かを見てもらえます[3]。
家では話せても園では声が出にくい場合も、「話せるのだから頑張ればよい」とは限りません。話す場面による難しさは、言語の力に加え、不安なども含めて確かめる必要があります[4]。園の先生から様子を聞き、小児科や子どものこころ・ことばの相談に対応する専門機関へ伝えられます。場面の違いだけで、場面緘黙などの診断を決めることはできません。
聴こえの心配も、一緒に確かめられます
呼びかけへの反応が気になる、聞き返しが多い、以前と聴こえ方が違うように感じる場合は、小児科や耳鼻咽喉科へ相談してください。聞こえているかどうかを、家庭で大きな音を何度も出して試す必要はありません。必要な検査は医療機関で考えます。
ことばの少なさだけから、特定の病名に決めることはできません。発達の様子、聴こえ、身体の状態、普段のやり取りを含めて見てもらいます。いったん使っていた言葉や反応が減ったなど、以前からの大きな変化がある場合も、その時期と様子を医療や保健の窓口へ伝えてください。
最初の連絡は、気になる一場面で十分です
乳幼児健診、市区町村の発達相談、保健センターなどへ、「言葉のことで心配があります」と連絡できます。園へは、友だちや先生とどうやり取りしているかを聞けます。言語聴覚士等の相談が必要かは、窓口から案内してもらうこともできます。
「物の名前は言いますが、頼みたいときに泣くことが多いです」「家では話しますが、園では声が出にくいそうです」のように話せます。母子健康手帳や、すでにある園の記録が使える場合もあります。嫌がる動画を撮ったり、新しい記録を毎日作ったりしないと相談できないわけではありません。
保護者が自分の話しかけ方を責めて苦しくなることもあります。ALVARAでは18歳以上の保護者ご自身の心配や関わりの迷いを話せます。子ども本人の言語評価や聴力検査、訓練・治療は、対応する専門機関へ相談してください。何が心配かを一度に整理し切れなくても、気になる一場面から専門機関へ伝えられます。
参考・引用文献
発達障害ナビポータル「乳幼児期のお子さんについて相談したいとき」 / こども家庭庁「乳幼児健診に関する取組み」 / 発達障害ナビポータル「医療機関への受診について」 / [1] American Speech-Language-Hearing Association(ASHA). Speech and Language Disorders. / [2] Roberts, M. Y., Curtis, P. R., Sone, B. J., & Hampton, L. H.(2019)Association of Parent Training With Child Language Development: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Pediatrics, 173(7), 671–680. DOI: 10.1001/jamapediatrics.2019.1197. / [3] American Speech-Language-Hearing Association(ASHA). Stuttering, Cluttering, and Fluency. Practice Portal. / [4] American Speech-Language-Hearing Association(ASHA). Selective Mutism. Practice Portal.
記事のつくり方
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このコラムについて
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