集団行動が苦手な子どもの相談

集団行動が苦手なときは、皆と同じ動きをさせる前に、どこが分かりにくい、つらいのかを探します。一斉の指示、待ち時間、人や音の多さなど、同じ「参加できない」でも必要な助けは違います。

集団では、一度に使う力が多くなります

説明用の例です。「片づけて、帽子を取って、並びましょう」と言われ、子どもが途中で止まります。必要なのは言葉の理解だけでなく、順番を一時的に覚えておくこと、遊びを止めること、次の行動へ切り替えることです。大人に合わせる気がない、という一つの理由にはできません。

こうした行動を支える働きは、実行機能と呼ばれます。研究レビューでは、一時的に情報を扱うワーキングメモリ、すぐ出そうな反応を抑える力、状況に合わせた切り替えなどが整理されています[1]。専門用語は子どもを検査せず分類するためではなく、指示が多いと何が難しくなるかを考える手がかりです。

「まず積み木を箱へ」と一つ伝える、次を絵で見られるようにする方法なら、覚えておく負担を外へ出せる場合があります。逆に手順は分かっていても、音や人の動きがつらい、失敗が怖いなど、別の助けが必要な子もいます。集団での一行動から、実行機能の弱さや発達障害を決めることはできません。

短く伝えても動けないなら、何が残っているかを

先ほどの場面で「まず積み木を箱へ」と一つ伝えても、動き出せなかったとします。そのときは、指示をもっと繰り返す前に、園の先生へ「箱の場所は分かっていましたか」「遊びを終えることが難しかったのでしょうか」と、その場の様子を聞けます。言葉を短くしても、置き場所が分からなかったり、周囲の音で聞き取りにくかったりする負担は残るためです。

箱を指してもらうと始められるのか、遊びの終わりを先に知らせると違うのか。先生が普段の活動で見ていることを聞き、次に変えられる点を一つ話せます。これは家庭で能力を試して原因を決めるためではありません。「短い指示が効かなかったから、やる気の問題」と決めず、助け方が合っていたかを考え直すためです。

園や学校には、助かった場面も聞けます

「集団が苦手です」と言われたら、「どの活動の、どのあたりで止まりますか」「先生が近くにいると違いますか」と尋ねられます。家庭でできることを証明して反論するより、園の中で助かった関わりを知ると、相談が具体的になります。

予定を絵で見せる、先に場所を知る、端の席で過ごす、困ったときに行ける場所を用意するなど、本人に合う方法を担任や園の先生と相談できます。全部そろえるのではなく、一番困る活動から考えます。家庭と集団での様子の違いも、どちらかを間違いとせず、その場の負担や助けを知る情報として伝えられます。

「その場にいること」と「参加できていること」を分けます

長く座っていても、何をするか分からず苦しんでいる場合があります。一方、短い時間でも、好きな役を選び、友だちとやり取りできる場合もあります。参加の時間や姿勢だけで、本人が理解し関わっているかまでは分かりません。

近くで見てから入る、一つの役を担う、少人数から始めるなど、本人が関われる形を園・学校と考えます。「皆と同じになる」だけでなく、助けを呼べた、予告があれば始められた、楽しい場面があったことにも目を向けられます。

一度できても、疲れた日や初めての場面では、同じ手助けが必要なことがあります。道具や説明を外すことを急がず、何が役立っているかを見ます。休むことも、罰でなく、戻りやすい方法と一緒に担任へ相談できます。

家庭で集団の場面を再現しなくてもかまいません

園で難しかったことを、帰宅後も同じように練習し続ける必要はありません。家庭では休息や遊びの時間を残し、好きなこと、疲れたときの様子、伝わりやすかった声かけを、園の先生へ話せます。一つの工夫でうまくいかないことを、親子の努力不足にまとめなくてよいのです。

本人のつらさが続くなら、専門の相談へ

活動への参加が難しい状態が続く、本人が強く苦しむ、家庭でも生活上の困りごとが大きい場合は、市区町村の発達相談や小児科などへ相談できます。集団に入りにくいことだけで、診断が決まるわけではありません。痛みや聴こえ、眠りなどの心配も、必要に応じて医療で確かめます。

「周りへ迷惑をかけている」と保護者自身が追い詰められる場合も、相談してよい理由です。子どもが皆と同じになることだけを待つのではなく、今いる場所でどう過ごしやすくできるかを、園・学校と一緒に考えられます。

参考・引用文献

発達障害情報・支援センター「支援につなげる(保育・学童保育)」 / 発達障害情報・支援センター「支援方法の学習」 / 発達障害ナビポータル「乳幼児期のお子さんについて相談したいとき」 / [1] Diamond, A.(2013)Executive Functions. Annual Review of Psychology, 64, 135–168. DOI: 10.1146/annurev-psych-113011-143750.

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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