子どもが嘘をついたとき|責める前に確かめたいこと

子どもの説明が事実と違うときは、すぐ人柄を決めず、何が分かっていて何が未確認かを分けられます。言いにくかった事情を聞くことと、物が壊れた等の問題に対応することは別です。強く問い詰めて認めさせることだけを、信頼を取り戻す方法にしなくてよいのです。

最初に、事実と大人の推測を分ける

宿題をしていないのに「終わった」と言った、物が壊れたのに「知らない」と言った。保護者には、出来事だけでなく「今後何を信じればよいのか」という怖さが生じることがあります。その気持ちは大事ですが、一つの返事から子どもの全体を「嘘つき」と判定する必要はありません。

AACAPの資料は、幼い子の空想と現実の区別、叱責を避けたい事情、課題の難しさ等、事実と違う説明の背景がさまざまであると述べています。[1] これらはどの子も同じ理由で嘘をつくという一覧ではありません。記憶や理解の違いも含め、本人が何をどう受け取っていたかを確かめます。

説明用の例です。子どもは宿題が終わったと言いましたが、ノートは空白でした。「自分をだまして遊んでいた」と推測する前に、課題の内容を理解していたか、別のページを終わりと思っていたか、できないと言いにくかったかを分けられます。大人が見たことは「このページは空白」という事実で、その理由はまだ未確認です。

言わせる質問より、確認したいことを小さくする

すでに分かっていることを隠して「本当に何もしていない?」と繰り返すと、会話が正解を当てる場になるかもしれません。「ノートはまだ書かれていません。どこまでやったつもりだったか教えてもらえますか」と、知っていることと聞きたいことを示す方法があります。

本人が話を変えたり黙ったりしても、その場で全て認めるまで続ける必要はありません。落ち着く時間を置き、今すぐ必要な安全の対応だけ先にできます。「話せないならやっていないことにする」ということでも、「黙るのは認めた証拠」とすることでもありません。分からない部分を分からないまま保つこともできます。

目をそらす、笑う、詳しく話すといった様子だけから結論を出さず、実際に確認できたことへ話を戻す方法を考えます。話しにくい様子があれば、質問を続ける必要があるかを大人が見直せます。隠し撮りや誘導的な聞き方で自白を得る手順を、家庭の支援として勧めるものではありません。

正直に話すことへの怖さと、起きた問題への対応は別

Talwarらは、4〜8歳の子どもを対象に、禁止された物を見たかを尋ねる実験で、正直さへの働きかけと予想される罰の組合せを調べました。正直に話すよう促す言葉の影響が、罰を予想する条件によって変わることを示しています。[2] 単に強く叱れば本当を話すとは言えないという視点になりますが、特定の質問法を使えば家庭でも真実が分かるという証明ではありません。

先ほどの例で「できなかったと言うと怒られると思った」と話したなら、その怖さを聞けます。同時に、宿題をどうするかは学校と相談する必要があるかもしれません。「話してくれたことは受け止めます。宿題で困った部分を一緒に確かめよう」と、開示への反応と問題への次の対応を分けられます。

「本当を言えば絶対に何も起きない」と約束する必要はありません。誰かの安全や権利に関わるなら、大人が対応しなければならないことがあります。その際も、怒鳴ることや人格を否定することと、必要な対応をすることは別です。これから誰へ何を伝えるかを、本人へ分かる形で説明します。

次に困ったとき、使える別の言葉を考える

「二度と嘘をつかない」と大きな約束を求めるだけでは、できない、怖い、まだ話したくない場面で何と言えばよいかが残ります。AACAPは、正直さの意味に加え、嘘以外の応じ方を話すことを挙げています。[1] 言葉を教えて終わりでなく、その言葉が実際に受け止めてもらえるかも大人の課題です。

例えば、「まだ終わっていません」「どこから始めるか分かりません」「今は話しにくいので後で話したい」と言える形を考えます。大人が後で話すと約束したなら、戻る機会も用意します。ただし、安全に関わる確認を無期限に延ばすのではなく、どの部分を今確認する必要があるかを分けます。

親自身が思い違いをしたときに訂正することも、家庭の中でできることです。「さっきはやっていないと思って言いましたが、別のページを見ていました」と、自分の誤りと修正を示せます。子どもだけが間違いを認める役になっていないかを振り返る視点になります。

繰り返すときは、内容と生活への影響から相談する

同じ課題のたびに事実と違う説明が出るなら、学習の難しさ、予定の多さ、叱られる怖さ、学校での関係等、今も続く条件を確認できます。金銭、暴力、物質使用、被害等の安全への心配がある場合は、「嘘を直す」だけで済ませず、その内容を扱う専門窓口へ相談します。

暴力や性的な被害を受けたという話は、「以前も嘘をついたから」という理由で退けないでください。家庭で真偽を決めようと質問を重ねず、本人の話を受け止め、安全を確かめるために児童相談所や警察等へ相談します。[3]

深刻な嘘が繰り返される場合は、専門家の評価が選択肢になります。[1] 一方、一度の嘘から発達特性や人格の病名を決めることはできません。相談へは「どんな内容が、どの場面で、何につながっているか」を伝え、家庭だけの追及で結論を出そうとしなくてよいのです。

保護者も、裏切られたような気持ちや、強く叱った後の後悔を話せます。ALVARAは18歳以上の保護者ご自身の相談で、子どもの真偽判定や診断を行うものではありません。「認めさせたい気持ちが強くなる。起きたことへの対応と、次に話せる関係を分けて考えたい」と相談できます。

信頼は、今日すべて本当を話したかだけで完成するものではありません。分からないことを確認し、間違いを直し、必要な助けを頼むやり取りを、大人も含めて少しずつ考えられます。

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参考・引用文献

  1. AACAP. Lying and Children, Facts for Families No.44(2017年7月更新)
  2. Talwar V, Arruda C, Yachison S. (2015). The effects of punishment and appeals for honesty on children’s truth-telling behavior. J Exp Child Psychol,130,209–217. doi:10.1016/j.jecp.2014.09.011.
  3. 大阪府警察本部「子どもから犯罪の被害や目撃の相談を打ち明けられたら?」

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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