家での介護が終わっても、すぐ休めるとは限りません。施設へ入居した場合と、亡くなった場合では、続く関わりや必要な手続きも違います。まず「何が終わり、何が続いているか」を分けると、残った緊張や空いた時間に必要な支えを考えられます。
介助がなくなっても、気持ちの切り替えは別のこと
夜中の呼びかけがなくなったのに目が覚める。電話が鳴るとすぐ立ち上がる。予定を入れようとしても、「何かあったら」と決められない。長く続いた暮らしの中で、することは減っても、まだ待っているように感じる人がいます。
米国の認知症介護者を追った研究では、家族が施設へ入居した後も、介護者の抑うつや不安が一様に軽くなるわけではありませんでした。[1] ただし、これは特定の介護者集団の結果で、施設入居が必ずつらさを増やすという意味ではありません。自分の負担は、介助の時間だけでは決まらないと考える視点です。
一方、「やっと眠れる」とほっとする人もいます。安堵があることと、大切に思っていなかったことは同じではありません。寂しさと安堵のどちらかを本心に決めたり、介護の大変さを証明してから休んだりする必要はありません。
施設入居後なら、続く役割と連絡の仕方を確かめる
ここからは説明用の例です。家族が施設へ入居し、毎日の身体介助はなくなったものの、連絡や面会をいつでも引き受けるつもりで、外出を控えている場面を考えます。介護の終了というより、担う役割が変わった状態かもしれません。
施設の正式な担当者やケアマネジャーへ、どんな場合に家族へ連絡が来るか、普段の連絡の窓口、面会や持ち物の相談を誰と行うかを確認できます。運用は施設ごとに違うため、「もう任せたのだから連絡を気にしない」と一律に決めず、実際の役割を整理します。
面会の頻度は、本人の希望や体調、自分の仕事や移動の負担を踏まえて相談します。毎日行ける家族と比べ、自分の関心が足りないと判断する必要はありません。本人の支援に関わりたい気持ちと、自分が休む予定を持つことを、両方相談できます。
死別後なら、介護の役割と関係の喪失を分けて話す
亡くなった後は、連絡や介助の役割がなくなることに加え、その人がいないことへの悲しみがあります。食事の時間、通院の道、薬を準備する棚など、日々の場面に不在を感じることもあるでしょう。施設入居後と同じ「空いた時間」としてまとめず、何を失ったと感じるかを話せます。
悲嘆の表し方や経過には違いがあります。米国NCIも、関係や支え、文化や生活の条件などによって悲嘆は異なると説明しています。[2] 泣く量、遺品を整理する速さ、新しい予定を持つ時期で、介護や関係の大切さを測ることはできません。
医療や介護の判断を何度も思い返すなら、「もっとできたのでは」という気持ちと、当時使えた情報や人手、費用を分けて考えられます。ここで唯一の正しい介護だったと判定し直す必要はありません。自分を責める気持ちを聞いてもらうことと、実際に説明を求めたいことを整理することは別の支援です。
新しい役割を埋める前に、自分の用事を取り戻す
周囲から趣味や仕事を勧められても、すぐ始める力がないことがあります。まず、介護のため後回しにしていた自分の受診、睡眠、食事、家の用事などを確認できます。空いた時間を全部有意義にするより、何も引き受けず休む時間が必要な場合もあります。
説明例の施設入居後なら、最初に遠出や新しい仕事を決めるのでなく、連絡の扱いを確かめたうえで、自分の通院や短い用事を一つ入れる案があります。死別後なら、一人分の食事や手続きを誰かと分担するなど、生活を回す助けを考えられます。同じ予定が、どちらの場面にも合うとは限りません。
介護中心の暮らしで収入や働き方が変わっていた場合、気持ちを整えるだけでは解決しない問題があります。生活や就労、費用については自治体や専門の窓口へ確認し、心理相談では焦りや空虚さ、働き始める怖さを扱うなど、支えを分けて使えます。仕事や地域での活動を急いで始めることを、回復の条件にしなくてかまいません。
「介護している自分」以外のつながりを、急がず考える
介護の連絡だけで毎日が埋まっていた人には、他愛のない話をする相手を思い浮かべるのも難しいことがあります。新しい人間関係を一度に作る課題ではありません。以前の知人へ短く連絡する、定期的に行く場所を一つ持つ、一人で落ち着ける時間を作るなど、何が必要かから考えます。
介護仲間の話を聞くのがつらい日や、以前の仲間とつながっていたい日もあるでしょう。「もう介護していないから場違い」と決めず、参加できる対象や、その会で話したい内容を確認する方法があります。どの集まりでも必ず理解されると約束はできないため、負担が大きければ別の場を選べます。
家族へは、「今は休めるはずと言われるとつらい」「介護の話を少し聞いてほしい」「今日は別の話をしたい」と、その日の希望を伝えられます。家族も違う変化を経験しており、同じ速さで気持ちが動くとは限りません。
相談は、次の生きがいが見つかる前から使える
心理相談では、「連絡を待ってしまって休めない」「ほっとした自分を責める」「することがなくなり、自分が誰か分からない」と話せます。介護の全経過を最初から説明するより、いま一番困る時間帯や場面から始められます。
眠れない、食事や水分が取りにくい、気分の落ち込みで自分の生活を保てない場合は、ご自身の医療にも相談してください。介護が終わったことを理由に、支援も終えなければならないわけではありません。終わった役割と、まだ支えが必要な自分を、分けて大切にできます。
関連する内容は、大切な人との別れや喪失に向き合うとき、高齢期に大切な人と死別したとき、介護を担う家族が疲れたときでも読めます。
参考・引用文献
記事のつくり方
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このコラムについて
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