仕事と家庭の両立が苦しいとき|役割・時間・頼り方を整理する

仕事と家庭の両立が苦しいときは、自分の時間の使い方だけが問題とは限りません。実際に動くことに加えて、予定を覚え、先を考え、誰かに頼む役まで一人に集まっていないかを見てみます。

「手伝ってもらっている」のに、なぜ疲れるのか

買い物を頼めても、何が足りないか調べ、献立を考え、必要な物を伝えるのがいつも自分なら、気持ちは休まりにくいかもしれません。「言ってくれればやる」と言われても、その指示を出すこと自体に力が要る日があります。

例えば、残業になった日に家族へ夕食を頼み、帰宅途中も何度も質問に返事をする場面を考えます。料理を作る人は変わっても、何をどうするか決める役は変わっていないのかもしれません。分担したいのは作業だけか、一つの用事を最初から終わりまで持つことかを話してみます。

作業の前後にも、家事は続いている

家事には、手を動かす以外の「考えておく仕事」があります。Damingerの研究は、35組のカップルへの計70件のインタビューから、必要を先に察する、選択肢を探す、何をするか決める、進み具合や結果を見届ける、という側面を整理しました[1]。この研究だけで、すべての家庭の分担や性別による違いを決めることはできませんが、見えにくい負担を言葉にする助けになります。

例えば通院の送迎だけを交代しても、予約日を覚え、持ち物を確かめ、次回の予定を入れる人が同じなら、その人の頭から用事は離れません。「どの作業をしたか」と「誰が最後まで気にかける役か」を分けて話すと、手伝いの量だけでは解けなかった不満が具体的になります。

頼む範囲を、一つの用事ごと渡してみる

「夕飯を手伝って」より、「水曜は、食べる物を決めるところから片付けまでお願いしたい。買ってきても大丈夫」と伝える方法があります。どこまで任せるかが分かると、頼まれた人も一つずつ確認せず動きやすくなります。

安全やアレルギーなど必要なことは伝えつつ、普段と違うやり方まで全部直さない余地を持てるかも考えます。任せたあとに確認し続けてしまう場合は、その怖さも話してよいことです。ただし、相手が約束を守らない、頼むと怒鳴るといった場合まで、自分が上手に任せられないせいにする必要はありません。

任せるには、責任だけでなく、決められる範囲や必要な情報も渡せることが大切です。頼まれた人が毎回許可を求めなければ動けないなら、元の担当者も休めません。一方、費用や安全について一人に情報が集中している場合は、すぐに全面交代できないこともあります。「次の一回は、予約から付き添いまで一緒にやってみる」のように、知っていることを移す時間そのものを用事に含められます。

急な予定変更を、いつも同じ人の仕事にしない

子どもの発熱、親の通院、仕事の急な依頼など、通常の分担だけでは足りない日があります。余裕のあるときに「呼び出しが来たら誰が最初に連絡を受けるか」「難しい日は誰に頼るか」を一つ決めると、そのたびの話し合いを減らせる場合があります。

家族だけでは回らないときは、職場の勤務制度、自治体の子育て支援、介護のサービスなども選択肢になります。使える制度や費用は家庭によって違うため、全部調べるのではなく、今いちばん困る時間帯について窓口に尋ねる始め方ができます。

休む時間も、用事が終わった残りにしない

一人だけが「全部終わったら休む」形だと、その人の休みは後回しになりがちです。休日の一部、帰宅後の短い時間など、仕事も家事も受け持たない時間を家族と話せます。「何もしない時間がほしい」は、家族を大切にしていないという意味ではありません。

心理相談では、頼むと罪悪感が出る、相手に不満を言う自分が嫌だ、仕事も家庭も中途半端に感じるといった気持ちを話せます。睡眠や体調が崩れている場合は医療への相談も必要です。頑張り方をもう一つ増やすのでなく、誰かと持ち直せる暮らし方を考えるために相談を使えます。

参考資料・引用文献:厚生労働省「こころの耳・15分でわかるセルフケア」 / [1] Daminger A. (2019). The Cognitive Dimension of Household Labor. American Sociological Review, 84(4), 609–633. DOI:10.1177/0003122419859007.

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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このコラムについて

本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。