仕事のことが休日も頭から離れないときは、休み方だけでなく、仕事量や人とのやり取りにも目を向けてみます。何がいちばん負担かを、昨日の一日から考えてみましょう。
負担は、仕事の量と自分で動かせる余地で変わる
仕事のストレスを考えるときは、求められる量や難しさに加え、順番や進め方を自分で選べる余地も見ます。後者を仕事の『裁量』といいます。同じ量でも、途中で相談して順番を変えられる仕事と、割り込みを受け続けるしかない仕事では、必要な助けが違います。忙しさを本人の処理能力だけで説明しないための見方です。
説明のために、資料の締め切りが近い日に問い合わせが次々と来る場面を考えます。一日働いても資料が進まず、帰宅してから「自分の段取りが悪い」と責めてしまう。ここでは作業の速さだけでなく、一人で同時に受け持っている仕事の数も問題かもしれません。自分の努力と、職場で決め直す必要があることは、分けて考えられます。
働く人を追跡した研究をまとめた2017年の報告では、高い要求と低い裁量の組み合わせが、その後のうつ病と関連していました[1]。ただし、もとの抑うつ症状を考慮すると関連が弱まる分析もあり、気分が仕事の受け止め方に影響する逆方向も考えられます。この観察研究だけで、個人の不調の原因や退職の必要性は決められません。仕事の構造と心身の状態を両方確かめる理由になります。
今日いちばん重いのは、どの場面か
「仕事が全部嫌だ」と感じるときは、昨日の一日を短く思い出してみてください。朝に連絡を見る前なのか、誰かに報告するときなのか、仕事が終わらない夕方なのか。つらさが強くなる場面が一つ分かると、次の手がかりになります。記録を毎日続ける必要はありません。
仕事が多すぎるなら、担当や締め切りを見直す話が必要です。分からないことを聞けず止まっているなら、質問する相手や時間を決められると助かるかもしれません。夜の連絡で休めないなら、返信する時間について職場に確かめることができます。「ストレスをなくす」という大きな目標を、いま起きている困りごとへ近づけてみます。
「頑張ります」の前に、決めてもらうことを一つ
先ほどの場面なら、「資料と問い合わせを今の担当のまま進めると、金曜までに両方終えるのが難しいです。どちらを先にするか相談できますか」と伝える方法があります。見通しがはっきりしないときは、「今週、何を優先すればいいか確認したいです」でもかまいません。
言い出すのが怖い場合、いきなり大勢の前で話す必要はありません。短い連絡で時間を頼む、信頼できる先輩に同席してもらうなど、自分にできそうな方法を選べます。相談しても仕事が増えるだけだったり、威圧されて話せなかったりするなら、人事、産業医・保健師、社外の労働相談など、直属の上司以外を頼ってよい場面です。
順番や担当を職場で決めてもらうのは、弱音を認めてもらうためだけではありません。一人では動かせない仕事の量や権限を、決められる人へ返すためです。不安への心理的な支えと、業務の仕組みを変える対応は、別の場所に働きかけます。どちらかだけで解決しないこともあります。
帰宅後まで仕事が続いてしまう夜に
明日のことを考え続けるときは、忘れたくないことを一つだけ書き、「今夜はここまで」にする区切りを試せます。食事を取る、連絡から少し離れる、横になって休むなど、何かを改善するためではなく、自分の生活の時間を取り戻すつもりで選んでみてください。休んでも仕事量そのものは減らないので、休息と職場への相談は両方あってかまいません。
うまく休めなかった日を、さらに自分を責める理由にしなくて大丈夫です。余裕がないほど、簡単そうなことも難しくなります。家族や友人には「解決してほしいわけではないけれど、今日は仕事のことが頭から離れない」と話すだけでも、いまの状態を伝えられます。
生活が崩れ始めたら、仕事の結論を急がず助けを借りる
眠れない、食べられない、出勤の支度ができないなどの変化が続くときは、医療機関や職場の産業保健へ相談してください。心理相談では、何が怖いのか、休むことや頼むことにどんな気持ちがあるのかを話せます。退職するかどうかまで一度に決めなくても、「今週をどう過ごすか」から一緒に考えられます。
参考資料・引用文献:厚生労働省「こころの耳・15分でわかるセルフケア」 / [1] Madsen IEH, Nyberg ST, Magnusson Hanson LL, et al. (2017). Job strain as a risk factor for clinical depression: systematic review and meta-analysis with additional individual participant data. Psychological Medicine, 47(8), 1342–1356. DOI:10.1017/S003329171600355X.
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このコラムについて
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