子どもが家を出て、暮らしの張り合いがなくなったとき

子どもが家を出て張り合いがなくなっても、独立を喜んでいないと決める必要はありません。一緒に暮らす親としての役割が変わる寂しさと、これからの関係をどう持つかを分けて考えられます。成人した子どもの生活を尊重しながら、親自身の支えも持てます。

変わったのは、会う回数だけではない

食事を用意する人数、帰宅を待つ時間、何気ない会話、学校や仕事の話を聞く日課。子どもの独立は、一人減ったという変化だけでなく、毎日自然にしていたことがいくつも変わる出来事です。自由な時間が増えたのに、何をしたいか分からない人もいるでしょう。

親の暮らしへの影響は一様ではありません。海外の中年女性を追った研究では、最後の子どもが家を出た後、気分や日々の負担に良い変化があった人もおり、もともとの心配の違いも関わっていました。[1] 「子どもが出ると必ず空の巣症候群になる」といった決まりではなく、本人の状況から理解する必要があります。

寂しさがある人に、自由になれたのだから喜ぶべきと言う必要もありません。「子どもの将来はうれしい。でも夕方の家の静けさがつらい」と、違う側面を並べて話せます。感情研究でも、節目にうれしさと悲しさが共存することは検討されています。[2] どちらかを本音として選び直す必要はありません。

寂しさを、子どもへの連絡だけで埋めようとしない

ここからは説明用の例です。子どもが独立してから、毎晩「今日は何を食べたか」と連絡し、返信がないと何度も送ってしまう場面を考えます。心配があることと、成人した相手がいつでも生活の詳細を報告する義務があることは別です。

まず、現実の安全上の理由で連絡が必要なのか、返事がない寂しさや不安を軽くしたいのかを分けます。病気などで具体的な見守りの取り決めが必要な場合は、本人の意向と専門職の助言を踏まえて考えます。そうした事情がない日常の連絡では、親の安心だけを条件に頻度を増やさないことが大切です。

「どのくらいなら連絡しやすい?」「急ぎの用事はどう伝える?」と、双方が使いやすい方法を相談する案があります。「毎日」と一度決めた後でも、本人の仕事や都合で見直せます。返信の速さや相談の量だけで、大切にされているかを測らなくてよいのです。

助けを申し出ることと、生活を決めることを分ける

親として経験から助言したくても、子どもが求めているのは報告を聞いてもらうことだけかもしれません。「一緒に考えてほしい話か、聞いてほしい話か」を確かめる方法があります。住まい、仕事、交友関係、結婚などの選択を、親の心配だけで変更させる必要はありません。

経済的な援助がある場合も、何を支援できるかという条件と、本人の私生活を全部知ることは別に考えます。費用や家族内の役割について合意が必要なら、具体的な内容を話します。親が寂しさを理解してほしいために、援助を失う怖さで相手をつなぎ止める形は避けます。

説明例なら、「何でも送ってあげる」より「必要な物があるときは相談して。送る前には確認するね」と、助けの入口を残せます。本人が今は頼まないことを、親として不要になった証拠にしなくてかまいません。頼られる量が減っても、関係そのものがなくなったとは限りません。

自分の一日には、何が残り、何が足りないか

新しい趣味や人間関係をすぐ作るより、今の一日のどこが特に寂しいかを見てみます。食事を一人で取る時間なのか、誰とも予定を共有しないことなのか、必要とされる役割が減ったことなのかで、欲しい支えは変わります。

説明例なら、夕食がつらい日に知人と短く連絡を取る、以前から気になっていた場所へ一度行く、自分のための通院や休みを予定に入れる方法があります。「子ども以外の生きがいを作らなければ」と大きな課題にしなくてかまいません。新しい予定が合わなければ、続けない選択もあります。

配偶者や同居人がいる場合も、自然に親密さが戻るとは限りません。家事や食事、静かに過ごしたい時間など、今の暮らしの条件を話す必要があるかもしれません。一人で暮らす人には、同じ方法は当てはまりません。家族構成を前提にせず、自分に合うつながりを考えます。

自立の後も、親の気持ちは相談できる

心理相談には、「連絡しすぎだと分かっていても、返事を待つのがつらい」「子育て以外の自分の話をするのが難しい」と伝えられます。子どもの自立を妨げないためにも、寂しさを子ども以外の場で扱う選択があります。子どもへ弱音を一切見せないという規則ではなく、支えを一人に集中させないという考え方です。

研究[1]は特定の時代のオーストラリアの女性を対象にしたもので、父親、さまざまな家族、日本の全家庭に同じ結果が当てはまるとは言えません。役割の変化と同時に、体調や仕事、介護などが変わっている場合もあります。何が重なっているかを、相談で分けて考えます。

眠りや食事、気分の落ち込みで生活が保ちにくい場合は、自分自身の医療へも相談してください。「独立は良いことだから」と症状を我慢する必要はありません。親としての成功や失敗を判定することより、今の自分がどう暮らしたいかを支える相談ができます。

子どもが一時的に帰宅したときも、以前と同じ日課へ完全に戻す必要はありません。滞在中の予定や家事を確認しながら、成人同士として新しく合意する余地があります。帰ってくる回数を増やすことだけを、親子関係がよくなった証拠にしなくてもよいのです。

今日持ち帰れるのは、「子どもの新しい暮らし」と「自分の新しい一日」を別々に大切にすることです。連絡の取り決めを一つ確かめることと、自分が寂しくなる時間の支えを一つ探すことを、両方考えられます。

関連する内容は、親子の会話が減ったとき|話しかけ方・距離・関わり方、親との距離や自立に悩むとき、退職後に生きがいや役割を見失ったときでも読めます。

参考・引用文献

  1. Dennerstein, L., Dudley, E., & Guthrie, J. (2002). Empty nest or revolving door? A prospective study of women’s quality of life in midlife during the phase of children leaving and re-entering the home. Psychological Medicine, 32, 545–550. doi:10.1017/S0033291701004810.
  2. Larsen, J. T., McGraw, A. P., & Cacioppo, J. T. (2001). Can people feel happy and sad at the same time? Journal of Personality and Social Psychology, 81, 684–696. doi:10.1037/0022-3514.81.4.684.

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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