親に助けてもらっていることと、自分の希望を持つことは両立します。自立を一度に全部できるようになることと考えず、どのことを自分で決めたいかから話せます。
感謝していても、苦しいことがある
学費や住まいを支えてもらっていると、意見が違うだけで申し訳なくなることがあります。一方で、親の心配に合わせ続けると、自分がどうしたいか分からなくなることもあります。感謝と窮屈さのどちらか一つだけを、本当の気持ちにする必要はありません。
説明のために、一人暮らしを考えているけれど、親から「まだ無理だ」と言われる場面を考えます。ここには生活費の心配、家事の見通し、離れる寂しさなど、違う話が含まれているかもしれません。「自立できるか」を争うより、まずどの心配を話しているか確かめる方法があります。
自分で決めることと、助けを借りないことは違う
自己決定理論では「自律性」を、自分の行動を自分なりに納得して選べることとして捉え、他人に頼らない独立とは区別しています[1]。生活の支援を受けることに自分も納得していれば、人に頼る選択にも自律性はあります。反対に、一人で暮らしていても、すべてを他人の期待だけで決めているなら、自由に選べている感じは持ちにくいかもしれません。
この理論は、親と離れればよくなる、という家族関係の処方箋ではありません。経済的な事情や大切にしたい家族との暮らしもあります。「援助を受けるなら希望を持ってはいけない」と一つに結びつけず、助けてもらう部分と、本人が意見を持つ部分を別に話せることが大切です。
一回の話し合いで、分かってもらおうとしない
先ほどの場面なら、「すぐに引っ越すと決めた話ではなく、自分で暮らしてみたい気持ちを聞いてほしい」と話し始められます。お金の話をする日は費用を、気持ちを話す日は希望を、と話題を小さくすることもできます。
親の心配を聞いたうえで、「そこは私も気になっています。その部分は調べてから、もう一度話したい」と持ち帰る言い方もあります。意見が違うまま話を終えることがあっても、その場で納得してもらえなければ失敗というわけではありません。やり取りが激しくなるなら、「今日はここまでにして、また話したい」と区切る方法もあります。
伝える量と、連絡の頻度を考える
生活のすべてを伝えなければ心配させると思うと、連絡が義務になってしまいます。「帰宅したら一度知らせる」「毎週末に話す」など、自分も続けられる形を提案できます。交友関係や仕事の細かなことまで、その都度説明したくない場合もあります。
親がすぐ受け入れるとは限りません。ただ、希望を持つこと自体を禁止しなくてかまいません。家族以外の相談相手や、学校・職場・地域で頼れる場所を持つことも、家族だけで抱えない暮らしにつながります。全部を自分一人でこなすことだけが、自立ではありません。
自分で決めるためには、選択肢の内容や費用が分かることも必要です。「全部自分で決めなさい」と情報のないまま任されることと、支えながら選ばせてもらうことは違います。親からの情報だけでは考えにくい場合、進路の担当者や生活の相談先にも聞けます。親の考えを拒むためでなく、自分でも比べられる材料を増やすために、家族以外の助けを使えます。
親への怖さが強い場合は、別の進め方を
暴力や脅し、外出やお金の厳しい制限があり、希望を話すと危険がある場合は、直接の話し合いを先にしないでください。安全に話せる公的窓口や、学校・地域の支援先へ、今の状況を伝えます。家族に知られない連絡方法についても相談できます。
心理相談では、親を嫌いになりたくない気持ちや、離れると罪悪感があることも話せます。親を悪い人と決めたり、無理に仲直りしたりするためではなく、自分の生活で何を大切にしたいかを考える時間にできます。ALVARAの個人向け相談は18歳以上が対象で、18歳未満の本人には学校や子ども・若者向けの相談先が選択肢になります。
参考資料・引用文献:厚生労働省「困ったときの相談先」 / こども家庭庁「相談窓口」 / [1] Ryan RM, Deci EL. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. American Psychologist, 55(1), 68–78. DOI:10.1037/0003-066X.55.1.68.
記事のつくり方
記事ごとの関連資料は本文末尾に掲載しています。情報源の選定、更新、訂正、心理療法・心理検査の掲載範囲については、記事のつくり方を確認できます。
このコラムについて
本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。
