家族から結婚や出産を急かされてつらいとき|答える範囲を選ぶ

結婚や出産についてまだ決めていなくても、今は答えたくない話題を選べます。自分の人生をどうするかと、家族にどこまで説明するかは、別々に考えてよいことです。

質問に答えるたび、自分の人生を試されると感じるとき

説明用の例です。実家へ帰るたび、「結婚はまだ」「子どもは考えているの」と聞かれます。家族を傷つけたくなくて笑って答えますが、帰宅後は次の集まりが憂うつになります。自分でも将来を決めていないので、断る理由がないと感じています。

この場面では、将来への迷いと、繰り返し説明を求められる負担が重なっています。結論がないことは、誰にでも考えの途中を公開しなければならないことではありません。「まだ分からない」と「今日はその話をしたくない」は、同時に言ってよいのです。

また、家族の質問が善意からだと感じていても、つらさはなくなりません。家族の安心を願う気持ちと、自分が私的な情報を守りたい気持ちは両立します。「相手を悪く思わないなら我慢すべき」と、一つへ決める必要はありません。

本人の希望と、周囲が期待する順序を分ける

結婚を望むか、誰とどんな関係を築くか、子どもを望むかには、それぞれ違う問いがあります。「結婚したら次は出産」とひと続きにすると、本人の希望や健康、パートナーとの考えが見えなくなります。望まない、望んでいるが難しい、考えを決めていない、どの場合も話す範囲は選べます。

性と生殖に関する健康と権利は、子どもを持つかどうか等を強制や差別、暴力なく決めるという原則を含みます。北京行動綱領も、その考え方を示しています。[1] これは1995年の国際文書上の原則で、個別の国内制度や医療上の判断をこの記事が決めるものではありません。

家族へ説明するために、自分の性のあり方、交際、妊娠・不妊治療等の情報を開示する必要があるとは限りません。医学的な見通しや選択肢が知りたい場合には、医療機関で本人の相談として確認できます。「家族を納得させる診断」を得ることを、受診の目標にしなくてよいのです。

答えの内容より、話題の扱い方を伝える方法もある

先ほどの例なら、説明用の言い方として「気にかけてくれているのは分かります。ただ、会うたびに聞かれるとつらいので、この話は私から話したくなったときにしたいです」と伝えられます。将来の答えを約束せず、質問の繰り返しについて希望を示す言葉です。

長く説明すると議論になる場合は、「今は話しません」「今日は別の話をしたいです」と短く終える方法もあります。質問されるたび新しい理由を提出する必要はありません。NHSの一般向け情報は、自分が担える範囲や意思疎通を考える視点を示しています。[2] ただし言葉を整えれば必ず家族が尊重する、という保証ではありません。

家族の集まりで言いにくければ、事前に一人へ伝える、滞在を短くする、別の話題へ戻すなど、本人が使える方法を選べます。「一度はっきり言うべきだ」という宿題にしなくてかまいません。伝えることで困ることがあるなら、その事情から相談を始められます。

経済的な依存や怖さがあるときは、言い方だけで解決しない

同居している、生活費や学費を支えてもらっているなどの事情があると、希望を伝えた後の生活が心配になることがあります。その場合、すぐ距離を取るという助言だけでは現実的ではありません。住まい、収入、相談できる窓口などを、必要な範囲で先に確かめる道があります。

拒否すると脅される、望まない交際や結婚を迫られる、身体や通信を管理されるなどの場合は、本人同士の説得で乗り切る課題にしないでください。自治体の福祉・人権相談や、法律の専門窓口等へ安全に相談できます。法テラスは制度や適切な相談先を案内しています。[3] 危険が切迫する場合は警察や緊急の医療を優先します。

相談内容や連絡先を家族に知られたくない場合は、使う端末や連絡方法について窓口へ先に確認できます。全ての施設が同じ対応をできるとは限らないので、「家族への連絡はあるか」「どんな場合に情報が伝わるか」を聞いてから話す範囲を決められます。安全のための準備も、自分で選ぶことの一部です。

相談では、決めきれなさも、望まない気持ちも話せる

家族への返事ばかり考えていると、自分が何を望むかを考える時間がなくなる場合があります。心理相談では、家族への感謝、期待に応えられない罪悪感、別の人生への希望を、結論を急がずに扱えます。望んでいるのに叶わない痛みと、そもそも望まないことも同じ説明にまとめません。

心理職の倫理では、経済状態や性的指向等にかかわらない尊重と、本人の自己決定が重視されています。[4] 相談者を特定の結婚や出産へ導くことが目標ではありません。面談で価値観を押しつけられたと感じたら、その違和感を話したり、相談先を選び直したりすることもできます。

次に一つ選ぶなら、将来を決めるより、「次の集まりで、この質問にどこまで答えたいか」を考えることからでも始められます。今は答えないことができるか、誰に支えてもらいたいかを相談できます。自分の暮らしの結論を、毎回の家族の会話で決め直す必要はありません。

説明用の一言:「将来のことは私自身も考えています。ただ、今は詳しく話したくありません。必要になったらこちらから相談したいので、繰り返し質問するのは控えてほしいです。」

ALVARAの個人相談は18歳以上が対象です。本人の希望と家族との関わりを話す場であり、妊娠・出産の医学的な見通しや、法的な個別判断を行うものではありません。

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参考・引用文献

  1. 第4回世界女性会議(1995)北京行動綱領「C 女性と健康」94–96項(内閣府男女共同参画局掲載)
  2. NHS Every Mind Matters「Maintaining healthy relationships and mental wellbeing」
  3. 日本司法支援センター(法テラス)「お電話でのお問合せ(法テラス・サポートダイヤル)」
  4. 公益社団法人日本公認心理師協会(2020年理事会議決)倫理綱領

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。