年齢とともに眠り方は変わりますが、困っていることをすべて「年のせい」で済ませる必要はありません。若い頃と同じ時間眠れるかより、日中にどう過ごせているかも合わせて考えます。
年齢による変化と、我慢しなくてよい不調
「朝早く目が覚める」という同じ悩みでも、日中は元気に過ごせる場合と、強い眠気で用事ができなかったり転びそうになったりする場合では、困り方が違います。まず、何時に起きたかだけでなく、眠りが変わってから何がしにくくなったかを考えます。
厚生労働省の「高齢者の睡眠」も、年齢だけでなく、痛み、頻尿、睡眠の病気、気分の不調などが関わることを説明しています。日中に外へ出なくなった背景にも、眠気、痛み、移動の難しさ、人と会う予定がなくなったことなどがあり得ます。睡眠と日中の暮らしを別々にせず、何がしにくくなったかを医師へ伝えられます。
床にいる時間と、眠っている時間は違う
説明用の場面として、夜眠れないのが心配で早く床に入り、朝も長く横になり、昼間はうとうとしている一日を考えます。本人は休もうとしていても、床の中で眠れず過ごす時間が増えているのかもしれません。医師には、夜の眠れなさだけでなく、昼寝や横になっている時間も話せます。
床にいた時間のうち、実際に眠っていた時間の割合を「睡眠効率」といいます。長く横になるほど眠れない時間も増える場合、床にいた長さだけでは休息の様子は分かりません。この指標は、睡眠時間とは違う面を捉えるものです。
研究の平均を、自分の基準にしない
健康な人を対象とした65研究をまとめた報告では、成人全体では、年齢と睡眠時間や深い睡眠の量などに関連が見られました。ただし、60歳以降も統計的に低下が続いたのは、この分析では睡眠効率だけでした[1]。「高齢になるほど、どの指標も一様に悪くなり続ける」と読むことはできません。
この研究の中心は、検査などで記録した睡眠です。本人が眠れたと感じるか、昼の生活に支障があるかとは、重なる部分があっても同じではありません。病気や薬、睡眠障害のある人をどのように除いたかで結果も変わっており、集団の平均を、その人に必要な睡眠時間へそのまま当てはめることはできません。
睡眠効率は、よく眠れたかを採点する点数ではありません。自分で床にいる時間を削って数値を上げたり、昼寝を厳しく禁止したりすることが目標ではありません。朝の光や、体調に合った日中の活動なども含め、今の暮らしに合う方法を考えます。持病や強い眠気、転倒の心配がある場合は、安全を優先して医師へ相談してください。
薬や体のことを、そのまま医師に話す
痛み、息苦しさ、いびき、夜間のトイレ、脚の不快感などがあれば、かかりつけ医へ伝えます。眠りに関係する薬に限らず、お薬手帳や市販薬が分かるものも持って相談できます。「飲むと朝ふらつく」「追加したくなる」といった話も、隠さず伝えてよい情報です。
睡眠薬を自己判断で増やしたり減らしたり、他の人の薬を使ったりせず、効き方や翌日の困りごとを診てもらってください。眠りの記録がなくても受診できます。まず「夜中に三回ほど起き、午前中に眠くて用事ができない」といった、覚えている範囲の説明でかまいません。
夜に心配が集まるときは、昼にも支えを持つ
静かな夜に、家族やこれからの暮らしへの心配を考え続けることがあります。心理相談では、その心配や、眠れないことへの焦りを扱えます。夜中に一人で結論を出そうとする代わりに、日中に話す相手や時間を作る使い方です。眠ろうと頑張るほど時計や翌日が気になる流れは、眠れないことが心配なときの記事でも説明しています。
眠りの工夫を全部試してから相談する必要はありません。日中に支障がある、眠りが急に変わった、体調が悪い場合は医療へつながり、気持ちへの支えも一緒に使えます。
参考資料・引用文献:厚生労働省「高齢者の睡眠」 / 厚生労働省「睡眠対策・健康づくりのための睡眠ガイド」 / [1] Ohayon MM, Carskadon MA, Guilleminault C, Vitiello MV. (2004). Meta-analysis of quantitative sleep parameters from childhood to old age in healthy individuals: developing normative sleep values across the human lifespan. Sleep, 27(7), 1255–1273. DOI:10.1093/sleep/27.7.1255
記事のつくり方
記事ごとの関連資料は本文末尾に掲載しています。情報源の選定、更新、訂正、心理療法・心理検査の掲載範囲については、記事のつくり方を確認できます。
このコラムについて
本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。
