心理学の371用語を、定義だけでなく、どんな種類の知識で、どこまで推論できるかとともに読む索引です。「効果」「法則」という名称の現象、理論、実験手続、統計概念、広く使われる呼称を区別しています。これらがすべて同じ強さで実証された371の法則、という一覧ではありません。
現象の名前、説明する理論、介入の効果は別の問い
たとえばストループ効果は、定められた条件で反応時間や誤りに生じる差です。その差を説明する処理モデルが一つに確定したことや、日常生活を改善する方法の効果が証明されたこととは別です。測定値から心の過程を推論する際には、操作、測定、代替説明を照合します。[1,9]
理論は単なる思いつきではありませんが、理論に含まれる全ての命題が同時に確定するわけでもありません。歴史的なモデル、現在も競合するモデル、特定条件で観測される効果を、名前の知名度で同列に扱わないことが重要です。
専門的に読むための4つの確認
- 操作と転帰:何を変え、どの行動・評定・生理指標を測ったか。
- 比較と推論:群間差、個人内差、相関、前後差のどれか。どの代替説明が残るか。
- 大きさと不確実性:有意かどうかだけでなく、効果量、区間、研究間差、選択的報告を読む。[29,30,33]
- 一般化:対象者、文化、材料、環境、時期を変えても同じ説明が通るか。[31,32]
以下の「位置づけ」は項目の種類を示す編集上の整理で、エビデンスの等級や個人を判定する基準ではありません。共通する基礎定義には各分野の学術教科書を隣接群の読書案内として示し、重要な区別や一般性の再検討には個別の学術論文を添えています。すべての用語について原著・全追試を網羅する系統的レビューではありません。
分野別・371用語
項目は10分野に整理しました。各分野を開き、ブラウザーのページ内検索でも調べられます。同じ語が異なる分野で別の意味に使われる場合は、定義と測定手続きを優先して確認してください。
01感覚・知覚・錯視30用語
この群の基本概念を学ぶための学術教科書・総説:[2]。個別の論点の文献は該当項目に示しています。
- 絶対閾(absolute threshold)位置づけ:研究手続・方法概念
刺激が「ある」と検出される強度を、あらかじめ定めた正答率などの基準で定義する心理物理的指標です。検出できるかは試行間で揺れ、手続や判断基準にも依存するため、感覚に一つの絶対的な境界があるという意味ではありません。 [2] - 差異閾・丁度可知差異(JND)位置づけ:研究手続・方法概念
二つの刺激の違いを識別できる最小差。刺激の種類や基準となる強度によって変わります。 検討する点:「最小差」は測定手続と正答率の基準を指定した値で、すべての人に共通の固定値ではありません。 [2] - ウェーバーの法則位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
刺激の違いに気づくのに必要な変化量と、元の刺激の強さの比が、一定の範囲ではおおよそ一定になるという法則。すべての強度・感覚で厳密に成立するわけではありません。 検討する点:ΔI/Iが一定という近似は、閾近傍や極端な刺激強度などでは崩れることがあります。 [2] - フェヒナーの法則位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
感覚量が刺激強度の対数に比例するとする古典的な心理物理モデルです。弁別閾を主観的な等間隔とみなす仮定から導かれ、すべての感覚と強度域に厳密に成立する法則ではありません。 [2] - スティーヴンスのべき法則位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
感覚量と刺激強度の関係をべき関数で表す考え方。感覚の種類により増え方が異なります。 検討する点:指数は感覚様相や測定法に依存し、主観的尺度の作り方も検討します。 [2] - 信号検出理論位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
検出成績を、信号と雑音を区別する感度と、どこで「信号あり」と答えるかという判断基準に分ける理論です。ヒット・ミス・誤警報・正棄却を区別し、正答率の変化だけから感度が変わったと結論しません。 [2] - 感覚順応位置づけ:基礎的な研究概念
一定の感覚入力が続くことで、感覚系の応答特性や主観的な強さが変化することです。受容器だけでなく複数水準の調整を含み得ます。反応の低下を定義する馴化や、疲労とは同義ではありません。 [2] - 陰性残像位置づけ:基礎的な研究概念
強い色や明るさを見続けた後、反対色や反対の明暗が残って見える現象です。 検討する点:視覚系の順応と反対色処理が関わり、見えた色から一つの受容器だけの反応と断定しません。 [2] - 知覚の恒常性位置づけ:基礎的な研究概念
網膜像や音の物理的入力が変化しても、物体の大きさ・形・色などを比較的一定に知覚する働きです。 検討する点:知覚は入力の単純な写しではなく、周囲や距離等の情報との関係で生じます。 [2] - 大きさの恒常性位置づけ:基礎的な研究概念
距離が変わって網膜像の大きさが変化しても、物体の実際の大きさを比較的一定に感じる現象です。 検討する点:網膜像が同じ大きさであることと、知覚される物体の大きさが同じことは区別します。 [2] - 明るさ・色の恒常性位置づけ:基礎的な研究概念
照明条件が変わっても、物体の明るさや色を比較的一定に知覚する働きです。 検討する点:照明の強さと物体の反射率、明るさと表面の明度の判断を分けることが必要です。 [2] - 図と地位置づけ:基礎的な研究概念
視野を注目される対象である『図』と背景である『地』に分けて組織化する知覚の原理です。 検討する点:注目だけでなく、境界、奥行き、囲まれ方等が図地の成立に関わります。 [2] - ゲシュタルトの群化原理位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
近接、類同、閉合、よい連続、共通運命などにより、複数の要素をまとまりとして知覚します。 検討する点:これらは組織化の傾向を記述する原理で、どの配置でも一つだけが働く規則ではありません。 [2] - 主観的輪郭位置づけ:基礎的な研究概念
実際には線がない場所にも、配置や遮蔽の手がかりから輪郭が見える現象です。 検討する点:物理的な境界の検出と、知覚される輪郭の成立を区別する資料になります。 [2] - 文脈効果位置づけ:研究概念・記述的な総称
同じ刺激でも、前後や周囲の情報によって意味や見え方が変わる現象です。 検討する点:知覚・言語・社会判断等で用いられる広い名称で、単一の仕組みを指すとは限りません。 [2] - 対比効果位置づけ:研究概念・記述的な総称
対象の知覚や判断が、周囲や比較基準との差を広げる方向へ変わる現象の総称です。物理的な差を過大評価する場合もありますが、評価の「実際の値」が常に一つ決まっているわけではありません。 [2] - 同化効果位置づけ:研究概念・記述的な総称
対象の判断が周囲や基準の方向へ近づく現象。対比効果と反対方向の変化として整理できます。 検討する点:知覚の同化と、社会的な評価の同化を同じ機序と決めつけません。 [2] - ミュラー・リヤー錯視位置づけ:観察される現象・傾向
同じ長さの線でも、両端の矢羽の向きによって長さが異なって見える錯視です。 検討する点:線の長さの判断と、実際の線分長を区別し、背景・呈示条件も記録します。 [2] - ポンゾ錯視位置づけ:観察される現象・傾向
収束する線など奥行きの手がかりにより、同じ長さの線が違う大きさに見える錯視です。 検討する点:奥行きの解釈は代表的な説明ですが、刺激配置が結果へどう関わるかを具体的に検討します。 [2] - エビングハウス錯視位置づけ:観察される現象・傾向
同じ大きさの中心円でも、周囲の円の大きさによって中心円の大きさが違って見える錯視です。 検討する点:周囲との比較の影響を示しますが、知覚と運動制御のすべてに同じ変化が出るとは限りません。 [2] - 運動残効(滝の錯視)位置づけ:観察される現象・傾向
一定方向の運動を見続けた後、静止した対象が反対方向へ動くように見える現象です。 検討する点:動きに選択的な処理の順応を調べる手がかりであり、単に眼が疲れたという説明と区別します。 [2] - ファイ現象位置づけ:基礎的な研究概念
厳密には、対象が場所を移す知覚を伴わず「純粋な動き」が感じられる仮現運動です。対象の移動が見えるベータ運動とは区別します。後世の文献には広義の用法もあり、刺激条件と用語の意味を確認します。 [2,27] - 仮現運動位置づけ:基礎的な研究概念
静止画像を時間的に連続提示することで、実際にはない運動を知覚する現象です。 検討する点:刺激間の空間距離、時間間隔、物体同一性等によって見え方は異なります。 [2] - 両眼視野闘争位置づけ:基礎的な研究概念
左右の眼に異なる画像を提示すると、二つが単純に混ざらず、知覚が交互に入れ替わる現象です。 検討する点:眼ごとの入力と知覚の交替は、意識と競合処理を検討する実験資料になります。 [2] - マガーク効果位置づけ:観察される現象・傾向
聞こえる音声が話者の口の動きによって変わる、多感覚統合の代表的な現象です。 検討する点:言語、音声刺激、視覚の信頼性、個人差によって強さが異なります。 [2] - 腹話術効果位置づけ:観察される現象・傾向
音源と視覚刺激の位置がずれていると、音が視覚刺激の方向から聞こえるように感じる現象です。 検討する点:複数感覚の信頼性や同じ原因に由来するとの推定が、統合のされ方へ関わります。 [2] - ラバーハンド錯覚位置づけ:観察される現象・傾向
見えているゴムの手と隠された自分の手への刺激が同期すると、ゴムの手を自分の身体の一部のように感じる現象です。 検討する点:同期刺激があれば必ず成立するわけではなく、位置・形・姿勢や質問の影響も検討します。 [2] - トップダウン処理位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
知識、期待、文脈などが知覚や解釈を方向づける情報処理です。 検討する点:期待が何を変えたかは、感覚処理、注意、判断、報告の各段階を分けて評価します。 [2] - ボトムアップ処理位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
感覚入力の特徴から出発し、それらを統合して対象を認識する情報処理です。 検討する点:実際の認識では、刺激駆動の過程と知識・課題による過程が相互作用します。 [2] - 知覚的構え位置づけ:基礎的な研究概念
経験や期待によって、曖昧な刺激を特定の仕方で知覚しやすくなる傾向です。 検討する点:曖昧な刺激の解釈と、その後の報告基準の変化を切り分ける必要があります。 [2]
02注意・意識・情報処理20用語
この群の基本概念を学ぶための学術教科書・総説:[1]。個別の論点の文献は該当項目に示しています。
- 選択的注意位置づけ:基礎的な研究概念
多数の情報の中から特定の刺激を優先して処理する働きです。注意されない情報も一部処理される場合があります。 検討する点:注意の選択は、感覚器へ届いた情報がすべて消える・すべて理解されるという二択ではありません。 [1] - カクテルパーティー効果位置づけ:観察される現象・傾向
周囲が騒がしくても、聞きたい会話へ注意を向けられる現象。注意を向けていない側の自分の名前などに気づくことも関係しますが、すべての音を同時に理解しているという意味ではありません。 検討する点:名前に気づく頻度も条件に依存し、無注意の全会話内容を理解している証拠ではありません。 [1] - 両耳分離聴位置づけ:研究手続・方法概念
左右の耳へ異なる音を提示する実験手続です。選択的注意の研究では片方の音声の追唱を求める課題等と組み合わせますが、両耳分離聴という手続自体が常に追唱を含むわけではありません。 [1] - 不注意盲位置づけ:観察される現象・傾向
注意を向けている課題に集中すると、視野内の予期しない対象を見落とす現象です。 検討する点:見落としは視力の不足とは異なり、課題や期待の配置によって変わります。 [1] - 変化盲位置づけ:観察される現象・傾向
場面の一部が変化しても、変化の間に遮断や視線移動が入ると気づきにくくなる現象です。 検討する点:変化がないとの知覚は、場面のすべてを詳細に保持した証拠ではありません。 [1] - 注意の瞬き位置づけ:基礎的な研究概念
短時間に二つの標的が現れると、第一標的の処理後しばらく第二標的を見落としやすくなる現象です。 検討する点:標的間隔や第一標的を報告する要求が重要で、眼の瞬きそのものではありません。 [1] - ストループ効果位置づけ:観察される現象・傾向
単語の意味と文字色のように情報が競合すると、反応が遅れたり誤りが増えたりする現象です。 検討する点:干渉の強さには練習、言語、課題、刺激と反応の対応が関わります。 [1] - サイモン効果位置づけ:観察される現象・傾向
刺激位置が課題と無関係でも、刺激位置と反応位置が一致すると反応が速くなる現象です。 検討する点:位置の処理と、課題で必要な反応の競合を検討する資料です。 [1] - フランカー効果位置づけ:観察される現象・傾向
標的の周囲にある妨害刺激が標的と異なる反応を示すと、反応が遅くなる現象です。 検討する点:妨害刺激がどの反応へ結びつくかを操作して比較します。 [1] - 負のプライミング位置づけ:基礎的な研究概念
直前に無視した刺激へ次の試行で反応すると、反応が遅くなる現象です。 検討する点:無視の抑制だけでなく、前の処理エピソードの検索等も説明候補です。 [1] - 復帰抑制位置づけ:基礎的な研究概念
いったん注意を向けた位置に出る標的への反応が、十分な時間間隔を置くと遅くなる現象です。短い時間間隔で生じる促進とは区別します。効率的な探索に役立つという説明があります。 検討する点:注意、眼球運動、刺激と反応の条件で現れ方が異なり、機能についての説明は仮説として区別します。 [1] - 視覚探索位置づけ:研究手続・方法概念
複数の刺激から標的を探す過程。特徴探索と、複数特徴を組み合わせる結合探索などを区別します。 検討する点:探索時間の項目数依存性だけで、常に一列ずつ探索していると断定しません。 [1] - ポップアウト位置づけ:基礎的な研究概念
標的が色や向きなど単一の顕著な特徴で妨害刺激と異なると、項目数が増えても比較的すぐ見つかる現象です。 検討する点:「単一特徴」でも顕著性や目標設定、妨害刺激との違いに依存します。 [1] - 自動処理と統制処理位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
自動性の高い処理と、意図的な制御を要する処理を対照させる枠組みです。速さ、意識、意図、止めやすさ、資源要求は別々の性質であり、すべてが一組になって二種類へ完全に分かれるわけではありません。 [1] - 二重課題干渉位置づけ:基礎的な研究概念
二つの課題を同時に行うと、共通する注意資源や処理段階が競合し、成績が低下する現象です。 検討する点:成績の低下が、資源共有、反応選択のボトルネック、課題切替のどれと整合するかを比較します。 [1] - 心理的不応期位置づけ:観察される現象・傾向
二つの刺激へ短い間隔で反応すると、第二反応が遅れる現象です。反応選択の処理限界を示します。 検討する点:第二課題の遅延を、刺激間隔の操作と反応時間の分布から検討します。 [1] - ヴィジランス低下位置づけ:基礎的な研究概念
単調な監視課題を長く続けると、まれな標的の検出成績が低下する現象です。 検討する点:検出感度の低下と、標的が少ないために判断基準が変わることを区別します。 [1] - マインドワンダリング位置づけ:基礎的な研究概念
注意が現在の課題から離れ、内的な思考や別の事柄へ移る状態です。 検討する点:自発的・意図的な思考の逸脱を分け、課題中の自己報告が測定へ及ぼす影響も検討します。 [1] - プライミング位置づけ:基礎的な研究概念
先行する刺激への接触によって、後続刺激の処理や反応が変化することです。知覚・意味・反復・反応のプライミング等を区別し、ある語の処理が速まる結果から、複雑な社会行動を無意識に操作できるとは推論しません。 [1] - 閾下知覚・サブリミナル刺激位置づけ:基礎的な研究概念
意識的に報告しにくい刺激の処理を調べる研究領域です。何をもって「見えていない」とするか、客観的弁別と主観的報告をどう測るかが重要です。限られた実験効果は、欲求と無関係な行動を自在に操作する証拠ではありません。 [1]
03記憶・忘却33用語
この群の基本概念を学ぶための学術教科書・総説:[1,10]。個別の論点の文献は該当項目に示しています。
- 記憶の三過程位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
記憶を、符号化・貯蔵・検索という三つの過程から捉える基本的な枠組みです。 検討する点:符号化・保持・検索は分析の区別であり、三つの独立した脳内貯蔵庫を意味しません。 [1,10] - 感覚記憶位置づけ:基礎的な研究概念
感覚入力をきわめて短時間保持する記憶。視覚のイコニック記憶、聴覚のエコイック記憶などがあります。 検討する点:保持時間は手続によって異なり、感覚そのものの持続や注意の効果との区別が必要です。 [1,10] - 短期記憶位置づけ:基礎的な研究概念
限られた情報の短時間の保持を指す概念です。短期記憶とワーキングメモリの区別はモデルによって異なり、単純な「保存箱」と「加工箱」が脳内で一対一に分離していると考えるものではありません。 [1,10] - ワーキングメモリ位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
課題遂行のために情報を利用可能な状態に保ち、処理や制御に用いる仕組みです。多成分モデルや注意を重視するモデルなどがあり、保持と操作の区別は有用ですが、定義と測定課題は一つではありません。 [1,10] - チャンク化位置づけ:基礎的な研究概念
複数の情報を意味のあるまとまりにまとめ、短期的に扱いやすくする方法です。 検討する点:知識が増えて一つのまとまりとして扱えることと、容量自体が無限に増えたことは別です。 [1,10] - 長期記憶位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
比較的長く保持される記憶。宣言的記憶と非宣言的記憶などに分類されます。 検討する点:宣言的・非宣言的等の区分には神経心理学的資料がありますが、完全に互いに独立とは限りません。 [1,10] - エピソード記憶位置づけ:基礎的な研究概念
個人的な出来事を時間や場所の文脈とともに覚える記憶です。 検討する点:出来事の詳細と、「自分がそこにいた」という再体験の性質の両方を検討します。 [1,10] - 意味記憶位置づけ:基礎的な研究概念
言葉の意味や一般的知識など、特定の体験場面に依存しにくい記憶です。 検討する点:知識の獲得には個別体験が関わりますが、検索時にその体験を思い出す必要はありません。 [1,10] - 手続記憶位置づけ:基礎的な研究概念
技能や習慣など『どのように行うか』に関する記憶で、言葉で説明しにくい場合があります。 検討する点:技能学習と、技能を言葉で説明できることの乖離が重要な研究資料です。 [1,10] - 処理水準効果位置づけ:観察される現象・傾向
意味に関わる処理等が、文字の形などへの処理より後の記憶をよくするという研究で知られます。ただし「深い」を記憶のよさだけで定義すると循環するため、処理操作と検索時の課題を明示します。 [1,10] - 精緻化位置づけ:基礎的な研究概念
新しい情報を既有知識や具体例と関連づけ、検索手がかりを豊かにする符号化です。 検討する点:関連づけを増やせば常に正確になるとは限らず、関連の適切さと検索課題を考えます。 [1,10] - 自己参照効果位置づけ:観察される現象・傾向
情報を自分自身と関連づけて処理すると、記憶成績が高まりやすい現象です。 検討する点:自己との関連づけの比較対象や、意味処理の程度を揃えて検討します。 [1,10] - 生成効果位置づけ:観察される現象・傾向
完成した答えを読むより、自分で答えを生成した情報の方が記憶されやすい現象です。 検討する点:生成の難しさ、失敗後の訂正、測定する転帰によって効果は変わります。 [1,10] - 間隔効果位置づけ:観察される現象・傾向
学習を一度に詰め込むより、時間を空けて分散させた方が長期保持されやすい現象です。 検討する点:保持したい期間によって適切な間隔は変わり、固定した復習時刻表を直接導く法則ではありません。 [1,10,11] - テスト効果・検索練習効果位置づけ:観察される現象・傾向
再読だけでなく、思い出す練習を行うことで長期的な記憶が強化される現象です。 検討する点:長期保持に役立つ知見ですが、誤った答えにはフィードバックも必要です。 [1,10,11] - 系列位置効果位置づけ:観察される現象・傾向
リストの最初と最後の項目が中間より想起されやすい現象。初頭効果と新近効果を含みます。 検討する点:即時・遅延再生、妨害課題の有無等で初頭・新近の大きさが変わります。 [1,10] - フォン・レストルフ効果位置づけ:観察される現象・傾向
並んだ情報の中で目立つ項目や異質な項目が記憶されやすい現象です。 検討する点:異質性は文脈との関係で定まり、目立つ刺激がすべての情報の記憶を改善するわけではありません。 [1,10] - 符号化特定性原理位置づけ:基礎的な研究概念
学習時に利用した手がかりが検索時にもあると、想起しやすくなるという原理です。 検討する点:検索手がかりが記憶の符号化時の特徴と適合することを重視します。 [1,10] - 文脈依存記憶位置づけ:基礎的な研究概念
学習時と想起時の環境的文脈が一致すると、思い出しやすくなる現象です。 検討する点:環境の一致の効果は、他の検索手がかりが使えるかでも変わります。 [1,10] - 状態依存記憶位置づけ:基礎的な研究概念
学習時と想起時の身体的・生理的状態が似ていると、想起が促されることがある現象です。 検討する点:同じ状態の再現を生活上の推奨へ直結させず、実験条件と依存関係を確認します。 [1,10] - 気分一致効果位置づけ:観察される現象・傾向
現在の気分と一致する感情価を持つ情報を思い出しやすくなる傾向です。 検討する点:学習時と検索時の気分一致をいう「気分依存」と、内容の感情価が一致することは別です。 [1,10] - 順向干渉位置づけ:基礎的な研究概念
先に学んだ情報が、後から学ぶ情報の記憶を妨げる現象です。 検討する点:競合する情報の類似性や、どの記憶をどの課題で検索するかを明示します。 [1,10] - 逆向干渉位置づけ:基礎的な研究概念
後から学んだ情報が、先に学んだ情報の想起を妨げる現象です。 検討する点:観測された再生低下から、元の痕跡自体が消失したと即断しません。 [1,10] - 忘却曲線位置づけ:基礎的な研究概念
学習後の忘却が初期に速く、その後ゆるやかになる傾向を示した古典的な記述です。内容や再学習で形は変わります。 検討する点:エビングハウスの特定の材料・手続を、全員の忘却割合を示す固定時刻表にしません。 [1,10] - ツァイガルニク効果位置づけ:観察される現象・傾向
未完了・中断課題が完了課題よりよく想起されるという古典的な主張です。2025年の研究統合は一般的な記憶優位を支持せず、未完了課題を再開しようとする傾向とは区別しました。日常や広告で必ず働く法則として扱いません。 [1,10,40] - フラッシュバルブ記憶位置づけ:基礎的な研究概念
重大で感情的な出来事の状況を鮮明に覚えている感覚。鮮明さや確信が正確さを保証するわけではありません。 検討する点:感情的な出来事の確信と、時間を経た報告の一貫性・正確さを別に測ります。 [1,10] - 事後情報効果位置づけ:観察される現象・傾向
出来事の後で与えられた誤情報が、元の出来事の記憶報告を変える現象です。 検討する点:元の記憶の変化、情報源の混同、回答時の判断等の説明を切り分けます。 [1,10] - 虚記憶位置づけ:基礎的な研究概念
実際には経験していない出来事を経験したように思い出す、または実際と異なる内容を記憶する現象です。 検討する点:誤記憶が生じ得ることだけで、特定の人の証言が虚偽だと判定することはできません。 [1,10] - DRMパラダイム位置づけ:研究手続・方法概念
関連語を学習すると、提示されていない中心語を誤って再生・再認しやすくなる虚記憶の実験手続です。 検討する点:関連語の実験で生じる誤再認から、複雑な自伝的記憶のすべてを直接説明しません。 [1,10] - ソースモニタリング・エラー位置づけ:基礎的な研究概念
情報の内容は覚えていても、見た・聞いた・想像したなど出所を取り違える誤りです。 検討する点:出所の判断は、感覚的詳細、文脈、知識などの手がかりを用いる過程です。 [1,10] - 幼児期健忘位置づけ:基礎的な研究概念
成人が乳幼児期の自伝的出来事をほとんど思い出せない現象です。 検討する点:幼児が記憶を全く形成しないという意味ではなく、後の自伝的検索の問題を区別します。 [1,10] - 記憶の固定化と再固定化位置づけ:基礎的な研究概念
固定化は学習後の記憶が安定していく過程、再固定化は再活性化後に一定条件で不安定化した記憶が再び安定する過程です。ラットの恐怖条件づけ研究等で検討され、人が思い出せば常に全記憶が消去・書換えされるという意味ではありません。 [1,10,25] - 展望記憶位置づけ:基礎的な研究概念
将来のある時点や出来事を手がかりに、予定していた行動を思い出して実行する記憶です。 検討する点:時刻を手がかりにするものと、出来事を手がかりにするもの等を区別します。 [1,10]
04学習・条件づけ・行動変容35用語
この群の基本概念を学ぶための学術教科書・総説:[3]。個別の論点の文献は該当項目に示しています。
- 古典的条件づけ位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
刺激間の関係を経験することで、一方の刺激が他方を予測するようになる学習です。獲得後の反応は元の反応の単純な複製とは限らず、時間関係、随伴性、予測誤差、生物学的制約等を検討します。 [3] - 無条件刺激・無条件反応位置づけ:基礎的な研究概念
学習前から反応を引き起こす刺激と、それによって自然に生じる反応です。 検討する点:「無条件」はその実験での条件づけを必要としない意味で、経験から完全に独立とは限りません。 [3] - 条件刺激・条件反応位置づけ:基礎的な研究概念
条件づけ後に予告信号となる刺激と、その刺激によって生じる学習された反応です。 検討する点:条件反応は無条件反応と形や機能が完全に同じとは限りません。 [3] - 獲得位置づけ:基礎的な研究概念
条件刺激と無条件刺激の関係が学習され、条件反応が形成・強化される段階です。 検討する点:反応が観察されることと、潜在的な学習がどの程度進んだかを区別します。 [3] - 消去位置づけ:基礎的な研究概念
条件刺激を無条件刺激なしに経験する等の手続に伴い、学習された反応が弱まることです。元の学習を完全に消去したとは限らず、文脈や時間によって反応が戻ることが、新しい学習という説明を支えます。 [3,46] - 自発的回復位置づけ:観察される現象・傾向
消去後に時間を置くと、弱くなった条件反応が再び現れることがある現象です。 検討する点:再出現の程度は時間や文脈等に依存し、消去が無意味だったという結論にはなりません。 [3,46] - 更新効果・復元位置づけ:観察される現象・傾向
消去後に文脈が変わると反応が戻る現象が更新(renewal)、無条件刺激の再経験後に反応が戻る現象が復元(reinstatement)です。時間経過による自発的回復とは操作が異なります。日本語訳には揺れがあるため英語と実験手続も照合します。 [3,46] - 刺激般化位置づけ:基礎的な研究概念
学習した刺激と似た別の刺激にも、同様の反応が生じる現象です。 検討する点:般化の勾配は刺激の物理的類似性だけでなく、学習歴やカテゴリにも左右されます。 [3] - 刺激弁別位置づけ:基礎的な研究概念
似た刺激の中から、結果を予告する特定の刺激にのみ反応するよう学習することです。 検討する点:反応する刺激・しない刺激の経験に加え、どの指標で弁別を測ったかを示します。 [3] - 高次条件づけ位置づけ:基礎的な研究概念
すでに条件づけられた刺激と新しい中性刺激を対提示し、新しい刺激にも条件反応が生じる過程です。 検討する点:もとの無条件刺激との直接経験がなくても学習が成立する条件を調べます。 [3] - ブロッキング位置づけ:基礎的な研究概念
結果を十分予測する既存の刺激があると、同時に加えられた新しい刺激について学習されにくくなる現象です。 検討する点:単に同時に起きた回数だけでは説明しにくい学習を示し、予測や注意の理論を検討します。 [3] - 潜在制止位置づけ:基礎的な研究概念
結果を伴わず繰り返し経験した刺激は、後から条件刺激になっても学習が遅くなる現象です。 検討する点:事前経験による単純な疲労と区別するため、提示文脈や条件づけの測定を吟味します。 [3] - 生物学的準備性位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
特定の刺激・反応の組合せが、他の組合せより学習されやすいという生物学的制約の考え方です。人が生まれつき特定の恐怖を必ず持つ、あるいは学習で変えられないという決定論ではありません。 [3] - オペラント条件づけ位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
行動の後に起こる結果によって、その行動の生起頻度が変化する学習です。 検討する点:行動と結果の随伴性が要点で、結果が時間的に後に起きただけでは十分な説明になりません。 [3] - 強化と罰位置づけ:基礎的な研究概念
強化は結果との関係で行動が増えること、罰は行動が減ることを定義に含みます。支援者の「ご褒美のつもり」「罰のつもり」という意図ではなく、後の行動を測って分類します。正・負は善悪ではなく刺激の付加・除去です。 [3] - 正の強化位置づけ:基礎的な研究概念
行動の後に刺激を加えることで、その行動が増えることです。 検討する点:加えた刺激がその人・状況で実際に強化子として働いたかを、行動の変化で確認します。 [3] - 負の強化位置づけ:基礎的な研究概念
行動の結果として嫌悪刺激が除去・回避・延期され、その行動が増えることです。罰とは異なります。 検討する点:「負」は嫌悪刺激の除去・回避等に関わる分類で、行動を弱める罰とは逆に行動を強めます。 [3] - 正の罰位置づけ:基礎的な研究概念
行動の後に刺激を加えることで、その行動が減ることです。 検討する点:刺激の付加という分類は、その方法が望ましい・安全であるという倫理的評価を含みません。 [3] - 負の罰位置づけ:基礎的な研究概念
行動の後に好ましい刺激を取り除くことで、その行動が減ることです。 検討する点:取り除く操作の意図だけでなく、対象行動がその後減ったかによって定義します。 [3] - 強化スケジュール位置づけ:基礎的な研究概念
反応回数や時間に応じて強化する規則。固定比率・変動比率・固定間隔・変動間隔を区別します。 検討する点:比率は反応数、間隔は時間を基準とし、同じ報酬量でも行動パターンは異なり得ます。 [3] - シェイピング位置づけ:基礎的な研究概念
目標行動に近い反応を段階的に強化して、新しい行動を形成する方法です。 検討する点:どの近似反応を強化し、基準をいつ変えるかを観察可能にします。 [3] - 消去バースト位置づけ:基礎的な研究概念
これまで強化されていた行動が強化されなくなると、一時的に行動が増加・激化することがあります。 検討する点:必ず起こるわけではなく、激化を予期して安全や別の行動の支援を設計します。 [3] - 効果の法則位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
満足をもたらす結果に続く反応は生じやすく、不快な結果に続く反応は生じにくくなるというソーンダイクの原理です。 検討する点:歴史的な原理であり、現代の強化・罰の機能的定義と完全に同じ用語法ではありません。 [3] - プレマックの原理位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
ある条件で起こりやすい行動を、起こりにくい行動の後にできるようにすると、後者を強める働きを持つ場合があるという原理。「好きなこと」かどうかだけでなく、実際の行動の起こりやすさが基準です。 検討する点:行動の基準頻度と、アクセスを制約した条件を確かめます。 [3] - 逃避学習と回避学習位置づけ:基礎的な研究概念
すでに生じた嫌悪刺激を止める行動が逃避、嫌悪刺激が起きる前に防ぐ行動が回避です。 検討する点:回避が短期に苦痛を減らす働きと、長期に持続させる関係を分けて考えます。 [3] - 学習性無力感位置づけ:基礎的な研究概念
制御できない嫌悪事象を経験した後、制御可能な状況でも行動が生じにくくなるという古典的な実験現象と説明枠組みです。「努力しない性格」の名称ではなく、統制可能性の学習、課題、種、経験の条件を区別します。 [3] - 観察学習・モデリング位置づけ:基礎的な研究概念
他者の行動と結果を観察することで、新しい行動や反応を学ぶ過程です。 検討する点:観察による獲得と、実際の遂行を区別します。見ただけで同じ行動が必ず出るわけではありません。 [3] - 代理強化・代理罰位置づけ:基礎的な研究概念
他者が強化または罰を受けるのを見て、観察者の行動が増減する現象です。 検討する点:観察した結果は、注意、モデルとの関係、本人が予期する結果等との関係で働きます。 [3] - 潜在学習と認知地図位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
すぐ行動に表れなくても環境の構造が学習され、動機づけが生じたとき行動に現れるという考え方です。 検討する点:行動に現れなかったことを学習がなかったことと取り違えないための枠組みです。 [3] - 洞察学習位置づけ:基礎的な研究概念
試行錯誤の漸進的な積み重ねだけでなく、問題構造の理解により解決が突然生じるように見える学習です。 検討する点:突然の正答という報告だけで、それ以前の学習・探索がなかったと結論しません。 [3] - 馴化と脱馴化位置づけ:基礎的な研究概念
馴化は、同じ刺激が繰り返されることで反応が弱まること。脱馴化は、新しい刺激などをきっかけに、弱まっていた反応が回復することです。時間がたって反応が戻る自発的回復とは区別します。 検討する点:反応の低下を、感覚順応や運動疲労では説明できないかも検討します。 [3,45] - 鋭敏化位置づけ:基礎的な研究概念
強い刺激の後などに、別の刺激にも反応しやすくなる非連合学習です。 検討する点:馴化と同時に生じ得る過程で、観察された反応の大小だけで二者を決めません。 [3] - 刻印づけ位置づけ:基礎的な研究概念
出生後の限られた時期に特定対象への追従などが急速に形成される初期学習です。 検討する点:典型は特定の動物種の初期学習です。人の愛着を同じ不可逆な手続と説明しません。 [3] - 過剰正当化効果位置づけ:観察される現象・傾向
もともと内発的に行っていた活動へ外的報酬を導入すると、その後の自発的関心が低下する場合がある現象です。 検討する点:報酬の予告、統制的な意味、課題への関心、測定時点によって異なり、報酬全般の悪影響ではありません。 [3,22] - 学習転移位置づけ:基礎的な研究概念
ある課題で得た学習が別の課題の成績を促進または妨害する現象です。 検討する点:似た課題への近転移と、異なる能力・日常機能への遠転移を区別します。 [3]
05思考・判断・意思決定・認知バイアス42用語
この群の基本概念を学ぶための学術教科書・総説:[1,12]。個別の論点の文献は該当項目に示しています。
- ヒューリスティック位置づけ:研究概念・記述的な総称
複雑な判断を速く行うための経験則や近道。効率的ですが、一定方向の誤りを生むことがあります。 検討する点:簡便な方略が環境に適している場合もあり、「近道を使うこと」と「誤ること」は同一ではありません。 [1,12] - 利用可能性ヒューリスティック位置づけ:基礎的な研究概念
思い出しやすい出来事ほど頻度や確率が高いと判断しやすい傾向です。 検討する点:想起のしやすさと実際の頻度が一致する条件・ずれる条件を比較します。 [1,12] - 代表性ヒューリスティック位置づけ:基礎的な研究概念
ある対象が典型例にどれほど似ているかを手がかりに確率を判断する傾向です。 検討する点:典型性の判断と、母集団の頻度や標本の生成過程を含む確率は別です。 [1,12] - 係留と調整・アンカリング効果位置づけ:観察される現象・傾向
最初に提示された数値や情報を基準にして、その後の推定が十分に修正されない現象です。 検討する点:数値への係留には、調整不足だけでなく選択的な情報検索等の説明もあります。 [1,12] - 感情ヒューリスティック位置づけ:研究概念・記述的な総称
対象への好悪や直感的感情を手がかりに、利益や危険を判断する傾向です。 検討する点:どの感情をどう操作・測定したかを明示し、直感が常に誤りとは考えません。 [1,12] - フレーミング効果位置づけ:観察される現象・傾向
同じ結果でも、利益として示すか損失として示すかによって選択が変わる現象です。 検討する点:情報が実際に等価か、好みと理解の違いがないかを確認して比較します。 [1,12,13] - プロスペクト理論位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
リスクのある選択を、参照点からの利得・損失と、非線形の価値・確率の重みづけで記述する理論です。規範として「どう選ぶべきか」を一律に指示するものではなく、原型と累積版等の発展を区別します。 [1,12,13] - 損失回避位置づけ:基礎的な研究概念
同じ大きさの利得より損失側の価値変化が大きいという記述です。参照点、範囲、経験、提示形式等に左右され、あらゆる選択で損失が常に利益の一定倍重いという普遍定数ではありません。 [1,12,13] - 保有効果位置づけ:観察される現象・傾向
同じ物でも、自分が所有していると手放すために高い価値を求めやすい現象です。 検討する点:所有、参照点、交換経験、支払意思額と受取意思額の測定方法を区別します。 [1,12] - 現状維持バイアス位置づけ:観察される現象・傾向
選択肢を変更せず、現在の状態を維持する方を選びやすい傾向です。 検討する点:変更に実際の費用や不確実性がある場合、現状を選ぶことを即座にバイアスとは呼べません。 [1,12] - デフォルト効果位置づけ:観察される現象・傾向
あらかじめ設定された選択肢が、そのまま選ばれやすい現象です。選択環境の影響を示します。 検討する点:初期設定には推奨の解釈、手間、参照点等が関わり、同じ仕組みだけで説明しません。 [1,12] - サンクコスト効果位置づけ:観察される現象・傾向
すでに回収できない費用や時間に引きずられ、将来の利益に合わない選択を続ける現象です。 検討する点:すでに支払った費用と、今後回収可能な価値・撤退費用を明確に分けます。 [1,12] - 現在バイアス・時間割引位置づけ:観察される現象・傾向
時間割引は将来の結果の主観的価値が遅延で変わること、現在バイアスは特に「今すぐ」へ大きな重みを置く非一貫性です。時間割引が観測されたことだけでは、必ず現在バイアスや自制の失敗があるとはいえません。 [1,12] - 省略バイアス位置づけ:観察される現象・傾向
行動による害を、不作為による同程度の害より重く判断しやすい傾向です。 検討する点:結果の予測可能性、意図、責任の判断等を揃えて比較する必要があります。 [1,12] - 結果バイアス位置づけ:観察される現象・傾向
判断当時に得られた情報より、後に判明した結果の良し悪しで判断の質を評価する傾向です。 検討する点:結果を知る前の意思決定の合理性と、偶然による結果の良し悪しを区別します。 [1,12] - 確証バイアス位置づけ:観察される現象・傾向
自分の信念を支持する情報を探し、反証する情報を軽視しやすい傾向です。 検討する点:情報探索、解釈、記憶の各段階で異なる形があり、ラベルだけで原因を説明しません。 [1,12] - 後知恵バイアス位置づけ:観察される現象・傾向
結果を知った後に、『最初から分かっていた』と予測可能性を高く見積もる傾向です。 検討する点:当時の予測記録と事後の回想を比べ、単なる自信の高さと区別します。 [1,12] - 楽観性バイアス位置づけ:観察される現象・傾向
望ましい出来事は自分に起こりやすく、望ましくない出来事は起こりにくいと見積もる傾向です。 検討する点:自分の絶対的な危険度と、他者と比較した相対的な危険度の評価を分けます。 [1,12] - 過信効果位置づけ:研究概念・記述的な総称
自分の知識、判断の正確さ、能力などを実際以上に高く見積もる傾向です。 検討する点:自己成績の過大評価、他者より上という評価、確信の狭さは異なる過信の側面です。 [1,12] - 信念固執位置づけ:基礎的な研究概念
信念の根拠が否定された後も、その信念を維持しやすい現象です。 検討する点:訂正の理解、元の説明の記憶、代替説明の有無も含めて検討します。 [1,12] - 継続的影響効果位置づけ:観察される現象・傾向
誤情報が訂正された後も、推論や判断に影響し続ける現象です。 検討する点:訂正が無効という意味ではなく、残る影響と訂正で減った影響を別に測ります。 [1,12] - 真実性錯覚効果位置づけ:観察される現象・傾向
同じ主張を繰り返し目にすると、内容の正しさとは別に真実らしく感じやすくなる現象です。 検討する点:繰り返されることと正しいことを分け、既知の内容や情報源の信頼性も考慮します。 [1,12] - 処理流暢性位置づけ:研究概念・記述的な総称
情報を処理しやすい感覚が、親近感、好ましさ、真実らしさなどの判断へ影響することがあります。 検討する点:処理しやすいことと正確・望ましいことは別で、どの判断へ帰属されたかが要点です。 [1,12] - バーナム効果・フォアラー効果位置づけ:観察される現象・傾向
誰にでも当てはまりやすい曖昧な性格記述を、自分だけに当てはまる正確な説明だと感じる現象です。 検討する点:記述の曖昧さ、肯定性、フィードバックへの期待等を検討する現象で、性格を評価する方法の妥当性の証明ではありません。 [1,12] - ダニング=クルーガー効果位置づけ:観察される現象・傾向
成績が低い群で相対的な自己評価の過大さが大きいという結果と、その説明を指す名称です。測定誤差、平均への回帰、得点範囲によって似た図が生じ得るため、「無能な人ほど必ず自信過剰」という人の分類には使えません。 [1,12,35,47] - 錯誤相関位置づけ:研究概念・記述的な総称
実際には弱い、または存在しない二事象の関連を強く感じる現象です。 検討する点:同時に目立つ事象、期待、少ない観察等による影響を区別します。 [1,12] - 基準率無視位置づけ:基礎的な研究概念
一般的な発生率より個別の目立つ情報を重視し、確率判断を誤る傾向です。 検討する点:文章で示された確率と自然頻度等の提示によって理解が変わり得ます。 [1,12] - 連言錯誤位置づけ:観察される現象・傾向
二つの出来事がともに起こる確率を、構成する一方の出来事が起こる確率より高く見積もる誤りです。 検討する点:確率として答えたか、もっともらしさや会話上の意味で答えたかを手続から検討します。 [1,12] - ギャンブラーの誤謬位置づけ:観察される現象・傾向
独立した偶然事象でも、同じ結果が続くと反対の結果が出やすいと考える誤りです。 検討する点:抽選や投球等が本当に独立かを先に確認します。実際に依存関係がある系列とは別です。 [1,12] - ホットハンド錯誤位置づけ:観察される現象・傾向
成功の連続を将来の成功の手がかりとする判断を、一律に錯誤とみなすのは不適切です。古典研究の条件付き割合には選択バイアスが指摘され、補正で結論が変わりました。実際の系列依存性と、それに対する判断の過剰さを分けて検討します。 [1,12,14] - 計画錯誤位置づけ:観察される現象・傾向
過去に遅れた経験があっても、将来の課題に必要な時間や費用を少なく見積もる傾向です。 検討する点:見積り対象の詳細だけでなく、類似課題の実績という外部情報と比べます。 [1,12] - 選択支持バイアス位置づけ:観察される現象・傾向
自分が選んだ選択肢の長所を強調し、選ばなかった選択肢の長所を軽視しやすい傾向です。 検討する点:選択後の記憶や評価を、選択前に存在した好みの差と切り分けます。 [1,12] - おとり効果位置づけ:観察される現象・傾向
一方の候補には劣るが、もう一方には単純に劣らない第三案を加えると、その第三案に勝る候補の選択が増えることがある現象です。非対称優越という選択肢構造が要点で、単に悪い案を示せば起きるという法則ではありません。 [1,12,28] - 妥協効果位置づけ:観察される現象・傾向
複数の選択肢があると、極端な選択肢より中間的な選択肢が選ばれやすくなる現象です。 検討する点:中間という配置が何の属性で成立するか、極端な候補の現実的な意味を確認します。 [1,12] - 選択過多位置づけ:基礎的な研究概念
選択肢の増加によって、選択の先送りや満足の低下が生じるという主張です。研究統合では平均効果がほぼゼロでも研究間差が大きく、選択肢が多ければ必ず悪いとはいえません。困難さや好みの明確さ等を具体的に検討します。 [1,12,37] - ピーク・エンドの法則位置づけ:基礎的な研究概念
経験全体の評価が、最も強い瞬間と終わりの印象に強く影響される傾向です。 検討する点:経験後の要約評価についての知見で、すべての経験・判断で平均や時間が無関係とは限りません。 [1,12] - 持続時間の無視位置づけ:基礎的な研究概念
経験の長さが全体評価へ十分反映されないことがある現象で、ピーク・エンドの法則と関連します。 検討する点:苦痛や満足の総量、終わった後の記憶、もう一度選ぶかという転帰を区別します。 [1,12] - 焦点化の錯覚位置づけ:観察される現象・傾向
注目している一要因が幸福や結果へ与える影響を、実際以上に大きく見積もる傾向です。 検討する点:注意の向け方を変えた比較によって、着目要因の影響をどの程度過大視したかを測ります。 [1,12] - 機能的固着位置づけ:基礎的な研究概念
物の典型的な用途にとらわれ、新しい使い方を思いつきにくくなる現象です。 検討する点:物の知識が役立つ場合もあり、既知の用途が常に創造性を妨げるわけではありません。 [1,12] - 構え効果・アインシュテルング効果位置づけ:観察される現象・傾向
以前成功した解法に固執し、より簡単で適切な解法を見落とす現象です。 検討する点:熟練した方法の活用と、不適切な方法への固執を課題条件から区別します。 [1,12] - インキュベーション効果位置づけ:観察される現象・傾向
問題から一度離れた後に、解決が進みやすくなることがある現象です。 検討する点:休憩中の無意識的な解決だけを原因とせず、疲労の回復や不適切な構えの減衰等も検討します。 [1,12] - 身体化認知位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
身体の状態、行為、環境との相互作用を認知の説明に組み込む研究上の立場の集合です。身体が関わるという広い主張と、特定の姿勢・温度等が判断を変える個別仮説は別で、すべてを一つの実証済み理論として扱いません。 [1,12,38]
06社会心理・対人関係・集団47用語
この群の基本概念を学ぶための学術教科書・総説:[4]。個別の論点の文献は該当項目に示しています。
- 単純接触効果位置づけ:観察される現象・傾向
中性的な対象へ繰り返し接触すると、親近感や好意が高まりやすい現象。嫌悪刺激や過剰接触では同じ結果とは限りません。 検討する点:繰り返しへの反応は対象の初期評価、飽き、提示回数等によって変わります。 [4] - ピグマリオン効果位置づけ:観察される現象・傾向
他者の高い期待が、接し方等を通じて成績や行動へ影響する自己成就的過程の呼称です。教師の期待と成績の相関には元の能力の正確な予測も含まれるため、期待だけによる因果効果と区別します。効果の大きさには条件差があります。 [4,36] - ゴーレム効果位置づけ:広く使われる呼称・説明枠組み
低い期待が接し方を通じて成績や行動へ不利に働く可能性を指す呼称です。負の自己成就的予言という枠組みですが、すべての低期待が必ず害を生む独立法則ではありません。元の成績と期待の因果方向を確かめます。 [4,36] - 自己成就的予言位置づけ:研究概念・記述的な総称
ある期待や信念が行動を変え、その結果として期待に沿う現実が生じる現象です。 検討する点:最初の予測が正確だった場合と、期待に基づく行動が結果を生んだ場合を区別します。 [4,36] - 社会的促進位置づけ:基礎的な研究概念
他者の存在によって、単純・習熟課題の成績が向上しやすくなる現象です。 検討する点:単純さや習熟度という課題条件のほか、評価への懸念や注意の配分も説明候補です。 [4] - 社会的抑制位置づけ:基礎的な研究概念
他者の存在によって、複雑・未習熟課題の成績が低下しやすくなる現象です。 検討する点:人前で悪化したという一例から、能力の低さや固定した性格を推定しません。 [4] - 社会的手抜き位置づけ:基礎的な研究概念
集団で共同作業をすると、個人の貢献が特定されにくい場合に努力量が低下する現象です。 検討する点:個人の貢献の識別可能性、目標の意味、他の人への期待等で変わります。 [4] - リンゲルマン効果位置づけ:観察される現象・傾向
集団人数が増えるほど、一人あたりの発揮量が低下する現象。協調損失と動機づけ損失を含みます。 検討する点:協調が難しいことによる損失と、努力を控える動機づけの損失を同一視しません。 [4] - 脱個人化位置づけ:研究概念・記述的な総称
匿名性や集団没入により自己への注意や個人的規範が弱まり、状況の集団規範に沿いやすくなる状態です。 検討する点:匿名性が直ちに暴力や非道徳性を生むという一般法則ではなく、顕著な集団規範も重要です。 [4] - 集団思考位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
合意や凝集性を優先する集団で、代替案や危険の検討が狭くなるという説明枠組みです。集団の失敗を後からこの名称で説明するだけでは検証にならず、事前の過程、反対意見、比較事例を調べます。 [4] - 集団極性化位置づけ:基礎的な研究概念
集団で話し合うと、個人の当初の傾向がより強い方向へ移る現象です。 検討する点:議論後の平均が変わる方向は、初期の傾向や情報の構成に依存します。 [4] - 傍観者効果位置づけ:観察される現象・傾向
緊急場面で他の傍観者がいると、一人の場合より援助が起こりにくくなることがある現象です。 検討する点:危険の明確さ、他者の役割、援助の種類等で異なり、人数が多いほど必ず誰も助けないわけではありません。 [4] - 責任の分散位置づけ:基礎的な研究概念
人数が増えると、一人ひとりが感じる責任が小さくなる現象。傍観者効果の一要因です。 検討する点:援助の遅れをすべて責任分散だけで説明せず、状況の曖昧さも検討します。 [4] - 多元的無知位置づけ:基礎的な研究概念
多くの人が内心では同意していないのに、他者は同意していると推測し、集団規範が維持される状態です。 検討する点:各人の実際の態度と、他者の態度についての推測をそれぞれ測る必要があります。 [4] - 同調位置づけ:研究概念・記述的な総称
集団の多数意見や規範に合わせて、判断や行動を変えることです。 検討する点:表面上の承諾と私的な信念の変化、規範的影響と情報的影響を区別します。 [4] - 規範的影響位置づけ:基礎的な研究概念
受け入れられたい、拒絶されたくないという動機から集団へ同調する影響です。 検討する点:他者の承認への関心があることと、本人がその判断を真実と信じたことは同じではありません。 [4] - 情報的影響位置づけ:基礎的な研究概念
不確かな状況で他者の判断を正しい情報として利用し、同調する影響です。 検討する点:不確かな状況で他者を頼ることは適応的な場合もあり、無条件に誤りとはいえません。 [4] - 服従位置づけ:基礎的な研究概念
権威者からの命令に従って行動すること。状況要因や責任の認知が影響します。 検討する点:古典実験の結果は状況依存で、特定の国民性・人格や全ての権威関係の説明にはしません。 [4] - フット・イン・ザ・ドア法位置づけ:基礎的な研究概念
小さな依頼を受け入れてもらった後に、大きな依頼への承諾を求める方法です。 検討する点:最初の依頼、時間間隔、依頼者、実際の負担等によって結果が変わります。 [4] - ドア・イン・ザ・フェイス法位置づけ:基礎的な研究概念
最初に大きな依頼を断らせた後、より小さな依頼を示して承諾を得やすくする方法です。 検討する点:譲歩の知覚等が論点で、相手を操る万能な対人技法ではありません。 [4] - ローボール法位置づけ:基礎的な研究概念
好条件で承諾を得た後に条件を悪化させても、承諾が維持されやすい現象を利用した方法です。 検討する点:選択への関与や撤回可能性を検討する概念で、不利益な条件変更を正当化するものではありません。 [4] - 返報性の規範位置づけ:基礎的な研究概念
他者から受けた利益や譲歩に対して、返礼すべきだと感じる社会的規範です。 検討する点:文化や関係によって義務感の意味が変わり、誰もが返礼するとは限りません。 [4] - 希少性効果位置づけ:観察される現象・傾向
入手しにくい、期限が限られると知ると、対象の価値を高く評価しやすい現象です。 検討する点:希少さが品質や需要の情報として解釈されたのか、自由への制約として働いたのかを分けます。 [4] - 社会的証明位置づけ:広く使われる呼称・説明枠組み
他者の行動を適切さの手がかりにすることを表す、説得・社会的影響の文脈で広く用いられる呼称です。情報的影響等と重なり、独立した一つの心理機構や「多数なら正しい」という原理を証明した語ではありません。 [4] - 基本的帰属の誤り位置づけ:基礎的な研究概念
他者の行動を説明するとき、状況要因を過小評価し、性格など内的要因を重視しやすい傾向です。 検討する点:傾向は課題や文化に依存し、他者の行動を性格で説明しただけで必ず誤りとはいえません。 [4] - 行為者―観察者バイアス位置づけ:観察される現象・傾向
自分の行動を状況、他者の行動を人の性質で説明しやすいという古典的仮説です。173研究のメタ分析では全般的な非対称性はほぼなく、出来事の感情価や測定法等で違いがありました。普遍的バイアスとして断定しません。 [4,15] - 自己奉仕バイアス位置づけ:観察される現象・傾向
成功は自分の能力や努力、失敗は状況に帰属しやすい傾向です。 検討する点:成功・失敗の判定、文化、自己への関与、実際の原因情報を考慮します。 [4] - 公正世界仮説位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
世界は公正で、人は相応の結果を得ると信じる傾向。被害者非難につながる危険があります。 検討する点:公正への価値と、「起きたことは当然の報い」という事実判断を混同しません。 [4] - 偽の合意効果位置づけ:観察される現象・傾向
自分の意見や行動が、実際より多くの人に共有されていると見積もる傾向です。 検討する点:同じ情報や集団を共有しているため実際に類似する場合との比較が必要です。 [4] - 偽の独自性効果位置づけ:観察される現象・傾向
望ましい自分の特性や能力を、実際より珍しいと見積もる傾向です。 検討する点:どの特性を望ましいとし、比較対象をどう選んだかを明示します。 [4] - スポットライト効果位置づけ:観察される現象・傾向
自分の外見や失敗が、実際以上に他者から注目されていると感じる傾向です。 検討する点:他者の実際の注意と本人の推測を比較するもので、全く注目されないと保証する言葉ではありません。 [4] - 透明性の錯覚位置づけ:観察される現象・傾向
自分の感情や意図が、実際以上に他者へ伝わっていると考える傾向です。 検討する点:表出している手がかりと、相手が理解した内容のずれを実測します。 [4] - 内集団バイアス位置づけ:観察される現象・傾向
自分が所属する集団の成員を、外集団の成員より好意的に評価しやすい傾向です。 検討する点:集団の状況、地位、競争、評価する属性によって優遇の程度は変わります。 [4] - 外集団同質性効果位置づけ:観察される現象・傾向
外集団の成員を、内集団の成員より互いに似ていると捉えやすい傾向です。 検討する点:接触経験や自己カテゴリ化による違いもあり、外集団を常に均一視するとは限りません。 [4] - 最小条件集団パラダイム位置づけ:研究手続・方法概念
些細で恣意的な分類だけでも、内集団を優遇することがあると示す実験枠組みです。 検討する点:実験での最小の分類条件と、歴史・制度を持つ現実の集団を区別します。 [4] - ステレオタイプ脅威位置づけ:基礎的な研究概念
否定的な集団ステレオタイプが意識される状況で、関連課題の成績が低下するという仮説・現象です。対象と課題で結果は異なり、女子の数学等を扱った統合研究には出版バイアスの懸念もあります。集団間の成績差すべての説明にはしません。 [4,42] - 接触仮説位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
適切な条件下で集団間接触が偏見を減らし得るという仮説。対等性、協同、制度的支持などが重要です。 検討する点:接触の量だけでなく質、地位、協働、制度的条件を考え、強制的接触の推奨へ直結させません。 [4] - 認知的不協和位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
態度、信念、行動の不一致から生じる不快感を減らすため、認知や態度を変えることがある現象です。 検討する点:不一致の解釈、責任、外的理由等を操作して検討する説明枠組みです。 [4] - 不十分な正当化位置づけ:基礎的な研究概念
行動を説明する外的理由が弱いと、行動に合わせて内的態度を変えやすくなる現象です。 検討する点:外的理由の弱さと、本人が選んだと感じる程度などを区別します。 [4] - 社会的比較位置づけ:研究概念・記述的な総称
自分の能力や意見を評価するため、他者と比較する過程です。上方比較と下方比較があります。 検討する点:上方比較が常に悪く下方比較が常によいわけではなく、同一視や対比で働きは変わります。 [4] - 近接効果位置づけ:観察される現象・傾向
物理的・機能的に接触機会が多い人ほど、関係が形成されやすい傾向です。 検討する点:繰り返し接触する機会と、元々似た人が集まる選択の影響を区別します。 [4] - 類似性―魅力効果位置づけ:観察される現象・傾向
態度、価値観、背景などが似ている相手へ好意を持ちやすい傾向です。 検討する点:実際の類似性と、本人が感じる類似性も別に測ります。 [4] - 好意の返報性位置づけ:基礎的な研究概念
相手が自分を好いていると知ると、その相手への好意が高まりやすい現象です。 検討する点:相手からの好意の情報が、誰から・どの文脈で与えられたかが関わります。 [4] - ハロー効果位置づけ:観察される現象・傾向
目立つ一つの肯定的特徴が、他の特徴の評価まで好意的にする現象です。 検討する点:一つの評価から他の評価へ波及することと、実際に特性が相関していることを分けます。 [4] - ホーン効果位置づけ:広く使われる呼称・説明枠組み
一つの否定的な印象が他の評価へ波及することを指す「負のハロー」の呼称です。肯定的なハローと別の独立した普遍法則が確立したという意味ではありません。どの特性をどの情報で評価したかを明示します。 [4] - プラットフォール効果位置づけ:広く使われる呼称・説明枠組み
有能だと評価されている人の小さな失敗が、好感度を高める場合があるという古典的実験に由来する呼称です。失敗前の能力印象や関係、失敗の性質に依存し、「弱みを見せれば誰でも好かれる」という一般則ではありません。 [4,44] - 観客効果位置づけ:研究概念・記述的な総称
他者に見られていることが、課題遂行、自己呈示、感情表出などへ影響する現象の総称です。 検討する点:評価懸念、自己呈示、遂行への注意等を含む広い名称で、一つの方向の変化とは限りません。 [4]
07発達・教育・生涯発達39用語
この群の基本概念を学ぶための学術教科書・総説:[5]。個別の論点の文献は該当項目に示しています。
- 臨界期と敏感期位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
経験の影響が特に大きい時期が敏感期、その時期の特定経験が正常な機能成立に不可欠とされる場合が臨界期です。神経回路や機能ごとに検討する概念で、その時期以後に一切の学習や可塑性がなくなることを意味しません。 [5,26] - 同化と調節位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
ピアジェ理論で、既存の認知枠組みに経験を取り込むのが同化、枠組み自体を変えるのが調節です。 検討する点:同化は既存枠組みへの取り込み、調節は枠組みの変更をいう理論用語です。知覚の同化効果とは別です。 [5] - 対象の永続性位置づけ:基礎的な研究概念
物が見えなくなっても存在し続けると理解する認知的能力です。 検討する点:探索行動と注視を使う課題では、必要な記憶や運動の負担も異なります。 [5] - 保存概念位置づけ:基礎的な研究概念
見かけの形や配置が変わっても、量・数・体積などが変わらないと理解する概念です。 検討する点:物理量を理解していないことと、質問の意味や課題要求が難しいことを区別します。 [5] - 自己中心性位置づけ:基礎的な研究概念
ピアジェの発達理論で、他者の視点や知識を自分と区別しにくいことを指します。道徳的な利己性の評価ではありません。課題の言語・記憶・反応要求によって、子どもが示せる理解は変わります。 [5] - 発達の最近接領域位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
子どもが一人では難しくても、より熟達した他者の援助があれば達成できる範囲を指します。 検討する点:単に少し難しい課題という意味ではなく、他者との協働によって可能になる範囲を考えます。 [5] - 足場かけ・スキャフォールディング位置づけ:基礎的な研究概念
学習者の現在の力に合わせて援助を提供し、習熟に伴って援助を減らす支援です。 検討する点:援助の量を増やすだけでなく、学習者の応答に合わせる随伴性と徐々に外す過程が要点です。 [5] - 共同注意位置づけ:基礎的な研究概念
他者と同じ対象へ注意を向け、相手の視線や指さしを共有する能力です。言語や社会性の発達と関連します。 検討する点:同じ方向を見るだけか、相互に注意の共有を理解しているかを手続で区別します。 [5] - 社会的参照位置づけ:基礎的な研究概念
不確かな状況で養育者などの表情や反応を手がかりに、自分の行動を調整する現象です。 検討する点:養育者の表情の読み取りと、状況・接近行動の変化を分けて評価します。 [5] - スティルフェイス効果位置づけ:観察される現象・傾向
養育者が突然無表情・無反応になると、乳児が働きかけを増やした後に不快や回避を示す現象です。 検討する点:短い実験的な相互作用の中断への反応で、これだけで愛着や養育者の関わりの質を判定しません。 [5] - 視覚的断崖位置づけ:研究手続・方法概念
透明な板の下に段差があるように見せ、乳児や動物の奥行き知覚を調べる実験装置です。 検討する点:奥行きを検出できるかと、その手がかりを使って移動するかは、移動経験等にも依存します。 [5] - 選好注視法位置づけ:研究手続・方法概念
乳児が二つの刺激のどちらを長く見るかを測り、弁別や選好を推定する方法です。 検討する点:長く見たことが、好み、弁別、新奇さのどれを反映するかを対照条件から検討します。 [5] - 馴化・脱馴化法位置づけ:研究手続・方法概念
同じ刺激への注視低下と新刺激への注視回復から、乳児の弁別や記憶を調べる方法です。 検討する点:回復した注視が、刺激のどの特徴への弁別を示すかを統制します。 [5] - 期待違反法位置づけ:研究手続・方法概念
期待される出来事と、それに反する出来事への注視時間等を比較する乳児研究の手続です。長く見た理由には新奇さや刺激特性もあり得るため、一つの注視差から成人と同じ明示的知識を持つと断定しません。 [5] - 心の理論位置づけ:基礎的な研究概念
他者が自分とは異なる信念、意図、知識、感情を持つと理解し、行動を予測する能力です。 検討する点:一つの能力だけでなく、信念や感情の理解など複数の過程と測定課題を含みます。 [5] - 誤信念課題位置づけ:研究手続・方法概念
他者が現実とは異なる信念を持つ状況で、その人の行動を予測できるか調べる課題です。 検討する点:回答には言語、記憶、抑制等も必要で、一回の失敗から他者理解全体の欠如を判断しません。 [5] - アタッチメント位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
危険や苦痛のとき、特定の他者への接近によって安全を得る機能を持つ関係の結びつきです。単なる好意や、常時近くにいることとは区別し、関係・文脈と行動の機能を評価します。 [5] - 安全基地位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
養育者との安定した関係が、子どもが環境を探索し、困ったときに戻る基盤として働くことです。 検討する点:探索と再接近の機能を指し、子どもを常に安心した状態に保つことと同義ではありません。 [5] - ストレンジ・シチュエーション法位置づけ:研究手続・方法概念
養育者との分離・再会等の標準化された短い場面で、乳児の接近や探索等を観察する評価手続です。分類はその関係での行動パターンであり、子どもの生涯不変の人格型や保護者の善悪を決めるものではありません。 [5] - 内的作業モデル位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
自己と他者、関係のあり方について形成される心的表象で、後の対人関係の理解に影響すると考えられます。 検討する点:関係についての表象の仮説であり、初期の経験がその後の全関係を決定するという主張ではありません。 [5] - 気質位置づけ:基礎的な研究概念
情動反応や自己調整などにみられる、比較的早期からの個人差です。 検討する点:早期から見られることは、環境や発達の影響を受けず固定していることを意味しません。 [5] - 適合性の良さ位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
子どもの気質と養育環境・期待との適合が、発達や適応に影響するという考え方です。 検討する点:問題を子どもの特性だけへ帰さず、環境の要求や資源との組合せを評価します。 [5] - 相互規定的作用モデル位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
子どもと環境が一方向ではなく、相互に影響しながら時間とともに発達するというモデルです。 検討する点:時間とともにどの側が何へ影響するかを、縦断資料等で検討するモデルです。 [5] - 差次感受性位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
環境の悪影響を受けやすい人が、良い環境からもより大きな利益を得る場合があるという考え方です。 検討する点:悪影響への脆弱性だけでなく好環境の利益も大きい、という予測を統計的に区別する必要があります。 [5] - 自己効力感位置づけ:基礎的な研究概念
特定の課題を実行できるという見込みの感覚で、選択、努力、持続性に影響します。 検討する点:実際の技能、結果が得られる期待、自己の価値についての評価とは区別します。 [5,24] - メタ認知位置づけ:基礎的な研究概念
自分の認知過程を把握し、計画・監視・修正する働きです。学習方略の選択にも関わります。 検討する点:自己報告による「できそう」と、実際の正誤に対する校正・調整の精度を分けます。 [5] - 自己調整学習位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
学習者が目標を設定し、方略、動機づけ、行動、環境を調整しながら学ぶ過程です。 検討する点:目標設定、監視、方略変更という循環を重視し、意志の強さだけへ還元しません。 [5] - 認知負荷位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
ワーキングメモリへかかる処理負担。教材設計では課題固有の負荷と不要な負荷を区別します。 検討する点:課題自体の複雑さは既有知識との関係で変わり、負荷を常にゼロにすることが目的ではありません。 [5] - ワークド・エグザンプル効果位置づけ:観察される現象・傾向
初心者は解答例を検討することで、手探りの問題解決より効率的に学べる場合がある現象です。 検討する点:例の理解を促す自己説明や、習熟に合わせて支援を減らす条件が関わります。 [5] - 専門性逆転効果位置づけ:観察される現象・傾向
初心者に役立つ詳しい説明や例が、熟達者には冗長となり学習を妨げることがある現象です。 検討する点:一つの教材が常に最善とはせず、知識の変化に合わせて情報の量を調整する根拠になります。 [5] - マタイ効果位置づけ:観察される現象・傾向
初期の小さな差が、読書や学習機会などの累積を通して拡大する現象を指します。 検討する点:機会・練習・資源の累積をいう説明で、初期成績が個人の将来を決定する法則ではありません。 [5] - 成長マインドセット位置づけ:基礎的な研究概念
能力等は変わり得るという信念と、それに働きかける介入です。信念と学業の相関は介入の因果効果とは別で、メタ分析の結論も研究の質・選択・実施条件で異なります。一般的に大きな学業改善を保証する方法とは説明しません。 [5,16,17] - アイデンティティ達成・モラトリアム位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
マーシャの枠組みで、探索とコミットメントから自己の進路や価値観への関わりを整理します。達成は探索を経た関与、モラトリアムは探索中の状態を指します。全員が同じ順に進む階段や、固定した人格分類ではありません。 [5] - コホート効果位置づけ:観察される現象・傾向
生まれた時代や共通する歴史経験の違いが、年齢差に見える結果へ影響する現象です。 検討する点:横断的な年齢群の差を、そのまま加齢の効果とみなせない理由の一つです。 [5] - 世代継承性・ジェネラティビティ位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
次世代の育成や社会への貢献へ関心を向ける成人期の発達課題です。 検討する点:エリクソンの理論に由来する概念で、子育てだけを指したり特定年齢の必達課題にしたりしません。 [5] - 社会情動的選択性理論位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
残された時間を有限と感じるほど、情動的に意味のある目標や関係を優先するとする理論です。 検討する点:暦年齢そのものだけでなく、将来の時間についての認識を重視する理論です。 [5] - 加齢のポジティビティ効果位置づけ:観察される現象・傾向
高齢期に否定的情報より肯定的情報へ注意・記憶が向きやすくなる傾向です。 検討する点:全高齢者が否定的情報を処理できないという意味ではなく、認知資源や目標、課題条件に依存します。 [5] - 補償を伴う選択的最適化位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
高齢期などに、重要な目標を選び、資源を最適化し、低下を補う方略で適応する考え方です。 検討する点:低下を補う説明だけでなく、生涯を通じた目標と資源の配分というモデルです。 [5] - フリン効果位置づけ:観察される現象・傾向
知能検査得点の平均が世代を追って上昇してきた現象。地域や時期により変化や反転も報告されています。 検討する点:同じ検査の得点変化と、知能のすべての側面の変化を同一視しません。標準化した時代も確認します。 [5]
08感情・動機づけ・人格・個人差40用語
この群の基本概念を学ぶための学術教科書・総説:[8]。個別の論点の文献は該当項目に示しています。
- ジェームズ=ランゲ説位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
出来事に対する身体変化の知覚が感情経験に関わるとする歴史的な理論群です。ジェームズとランゲの説明は完全に同一ではなく、「身体だけが原因」という一つの確立済み機構へ還元しません。 [8] - キャノン=バード説位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
情動経験と身体反応が中枢の処理によって並行して生じるとする理論です。 検討する点:感情の歴史的な説明であり、脳の単一中枢がすべての感情を生むという現在の確定知見ではありません。 [8] - シャクター=シンガーの二要因理論位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
生理的覚醒と、その状況への認知的解釈の組み合わせで感情が生じるとする理論です。 検討する点:覚醒と状況解釈を組み合わせるモデルで、全感情の成立に必ずこの順序の意識的判断が要ると示すものではありません。 [8] - 認知的評価理論位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
出来事を目標や対処可能性との関係でどう評価するかが、感情の種類や強さを左右するとする理論です。 検討する点:評価は必ずしも熟考や言語化を必要とせず、理論ごとの評価次元と予測を比べます。 [8] - 基本感情理論位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
いくつかの感情に生物学的・進化的に特徴的な基盤があるとする理論群です。何を基本とするかや表情・身体との対応は論者で異なり、表情一つから他者の感情を一意に読めるという結論にはなりません。 [8] - 感情の次元論位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
感情を快―不快、覚醒の高低など連続する次元上に位置づける考え方です。 検討する点:次元は経験や評定の構造を整理するもので、同じ位置にある感情の全性質が同じとはいえません。 [8] - 表情フィードバック仮説位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
表情に関わる動きが感情経験へ影響するという仮説です。研究統合では平均効果は小さく、課題・刺激・測定によって変わります。笑顔の指示だけで必ず幸福になる、抑うつを治せるという推論はできません。 [8,18] - 覚醒の誤帰属位置づけ:基礎的な研究概念
ある原因で生じた生理的覚醒を、別の対象や状況による感情だと解釈する現象です。 検討する点:生理的反応は原因を一意に示さないため、状況情報と主観的な帰属の測定が必要です。 [8] - ヤーキーズ=ドッドソンの法則位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
元は動物の刺激強度と弁別課題の学習速度の関係を扱った研究に由来します。その後、覚醒やストレスと成績の逆U字として広く使われましたが、概念の拡張には批判があります。あらゆる仕事に同じ「最適ストレス量」があるという法則ではありません。 [8,43] - 接近―回避葛藤位置づけ:基礎的な研究概念
一つの目標が魅力的側面と不快な側面を同時に持ち、近づくほど葛藤が強まる状態です。 検討する点:同じ目標の接近要因と回避要因をいうもので、すべての迷いを一つの機構で説明しません。 [8] - 内発的動機づけ位置づけ:基礎的な研究概念
活動そのものの興味、楽しさ、満足を理由に行動する動機づけです。 検討する点:その場の興味・関心と、本人が内在化した長期的価値も区別します。 [8,22] - 外発的動機づけ位置づけ:基礎的な研究概念
活動以外の結果を理由に行動する動機づけです。報酬や罰だけでなく、自分で価値を認めて内在化した理由も含み得るため、外発的であることが常に他律的・低品質だとは限りません。 [8,22] - 自己決定理論位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
動機づけを自律性や内在化等から捉え、自律性・有能感・関係性の基本的欲求を重視する理論です。自律性は「一人で行うこと」や、支援・構造化を不要とする放任とは同義ではありません。 [8,22] - 目標勾配効果位置づけ:観察される現象・傾向
目標へ近づくほど、行動の速度や努力が高まりやすくなる現象です。 検討する点:目標までの距離の認識と実際の報酬条件を分け、誰でも終盤に必ず努力が増すと断定しません。 [8] - 達成目標理論位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
学習・熟達を目指す目標と、能力の優劣を示す遂行目標など、目標の質が行動へ与える影響を扱います。 検討する点:熟達/遂行と接近/回避等の次元を区別し、目標の数や強さだけで評価しません。 [8] - 代理経験位置づけ:基礎的な研究概念
他者が取り組み、達成する様子などを通して、自分にもできるかもしれないという見通しを得る経験。自己効力感に関わる情報源の一つで、ただ成功例を見れば必ず自信が高まるわけではありません。 検討する点:観察学習による技能の獲得と、他者を見てできると感じることも別に評価します。 [8,24] - 統制の所在位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
出来事の結果を自分の行動に求める内的統制と、運や他者など外部に求める外的統制の傾向です。 検討する点:結果一般への期待の個人差で、特定課題の自己効力感や、現実に制御できる範囲とは別です。 [8] - 快楽順応位置づけ:研究概念・記述的な総称
生活上の変化後に主観的な幸福感が時間とともに変化し、以前の水準へ近づくことを指す概念です。出来事・人・期間で程度は異なり、深刻な逆境でも全員が完全に元へ戻るという法則ではありません。 [8] - 感情予測位置づけ:研究概念・記述的な総称
将来の出来事による感情を予測すること。強さや持続時間を過大評価するインパクト・バイアスが生じます。 検討する点:予測と経験した感情を比較する研究で、すべての予測が過大になるとは限りません。 [8] - 拡張―形成理論位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
ポジティブ感情が一時的に思考・行動の幅を広げ、長期的な資源形成に寄与するとする理論です。 検討する点:理論の一般的主張と、特定の課題で思考の幅や資源形成が変わることの実証を区別します。 [8] - 感情調整位置づけ:研究概念・記述的な総称
どの感情がいつ生じ、どう経験・表出されるかに働きかける過程です。再評価、注意配分、状況への働きかけ等を区別します。感情を弱くすることだけが目的ではなく、方略の適切さは目標と文脈で変わります。 [8,21] - 認知的再評価位置づけ:基礎的な研究概念
状況の意味づけを変えることで、感情反応を調整する方略です。 検討する点:再評価は意味の解釈を変える方略で、危険や不当な状況を無視して肯定的に考えることではありません。 [8,21] - 表出抑制位置づけ:基礎的な研究概念
生じた感情の外的表現を抑える方略。感情経験自体や対人影響とは区別して評価します。 検討する点:外に出す表現と内的な感情経験は別で、文化・目的・状況によって適応性を評価します。 [8,21] - ネガティビティ・バイアス位置づけ:研究概念・記述的な総称
同程度の肯定的情報より、否定的情報が注意や判断へ強く影響しやすい傾向です。 検討する点:否定と肯定の強度や重要性が比較可能かを確認して検討する、広い現象群の名称です。 [8] - 気分依存記憶位置づけ:基礎的な研究概念
覚えたときと、思い出すときの気分が一致すると、想起しやすくなる現象。現在の気分と同じ感情価を持つ内容が思い出されやすい「気分一致効果」とは区別します。 検討する点:同じ気分であれば何でも思い出せるとは限らず、他の検索手がかりの強さも関わります。 [8] - プラセボ効果位置づけ:観察される現象・傾向
介入に伴う期待、学習、対人・物理的文脈等の影響による変化です。プラセボ群の前後差そのものには自然経過や平均への回帰も含まれ、すべてをプラセボの因果効果と呼ぶことはできません。 [8,20] - ノセボ効果位置づけ:観察される現象・傾向
否定的な期待や文脈によって、副作用や症状が生じたり悪化したりする現象です。 検討する点:苦痛が生じたという報告を「思い込みだから嘘」と取り違えず、期待・学習・測定と身体の関係を考えます。 [8,20] - ストレスの認知的評価位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
出来事を脅威・損失・挑戦と評価し、対処資源をどう見積もるかがストレス反応へ影響するという考え方です。 検討する点:心理的評価が関わることは、現実の負担が存在しないという意味ではありません。 [8] - レジリエンス位置づけ:研究概念・記述的な総称
逆境のもとで機能を維持・回復する過程や転帰を指す概念です。何を逆境・適応とするか、どの期間と領域で測るかにより定義は変わります。強い個人だけの特性でも、社会的支援を不要にする根拠でもありません。 [8] - 特性と状態位置づけ:研究概念・記述的な総称
比較的持続する個人差を特性、一時的で状況により変化する反応を状態として区別します。 検討する点:時間的安定性は程度の問題で、特性も発達や環境で変化し得ます。 [8] - 類型論と特性論位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
人を少数の型に分類する見方と、複数の連続的な特性次元で捉える見方です。 検討する点:類型は情報を圧縮しやすい一方、連続的な個人差を切断することによる損失を検討します。 [8] - ビッグ・ファイブ位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
外向性、協調性、誠実性、神経症傾向、経験への開放性という五つの広い人格特性次元です。 検討する点:五つは広い得点次元で、人を五種類へ分ける分類ではありません。下位特性や測定言語も重要です。 [8] - HEXACOモデル位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
正直さ・謙虚さ、情動性、外向性、協調性、誠実性、経験への開放性の六因子による人格モデルです。Big Fiveへ一因子を足すだけではなく、情動性や協調性の範囲も組み替えられています。得点を人の道徳的価値の順位にしません。 [8,23] - 人間―状況論争位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
行動の一貫性を人格特性と状況のどちらが説明するかをめぐる論争で、現在は相互作用が重視されます。 検討する点:人物要因と状況要因の相互作用と、どの時間・場面で一貫性を評価するかを考えます。 [8] - 相互決定論位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
個人要因、行動、環境が相互に影響し合うという社会的認知理論の考え方です。 検討する点:人、行動、環境の影響が同時に同じ強さであるという意味ではありません。 [8] - 人間―環境適合位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
個人の能力・価値観・欲求と、環境の要求・資源との適合が、満足や適応に影響するという考え方です。 検討する点:適合の主観的評価と客観的条件、どの要求と資源の適合かを区別します。 [8] - 自尊感情位置づけ:研究概念・記述的な総称
自分自身への全体的な肯定的・否定的評価。特定課題への自己効力感とは区別されます。 検討する点:自己の全体的評価と、具体的な技能、他者による評価の正確さは別です。 [8] - 努力性コントロール位置づけ:基礎的な研究概念
気質の自己調整面で、優勢な反応を抑える、弱い反応を起こす、注意を向け直す等の個人差です。実行機能と重なりますが、たとえば作動記憶全体を定義に含むわけではなく、単なる我慢強さとも異なります。 [8,39] - 遺伝率位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
特定の集団・環境で観察された表現型の分散のうち、遺伝的差異に関係する分散の比です。個人の性質の何割が遺伝で出来ているかを表さず、高い遺伝率でも環境による変化が不可能とはいえません。 [8] - 遺伝―環境相互作用位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
環境による表現型の差が遺伝的条件で異なる等、遺伝と環境の組合せに依存する関係です。統計的な交互作用は尺度やモデルにも依存し、観察された関連だけで特定遺伝子・環境の因果機序が確定するわけではありません。 [8]
09生物心理・脳神経・睡眠30用語
この群の基本概念を学ぶための学術教科書・総説:[6]。個別の論点の文献は該当項目に示しています。
- ニューロン位置づけ:基礎的な研究概念
情報を受け取り、統合し、電気化学的信号として伝える神経細胞です。 検討する点:ニューロンの活動は他の細胞・回路・身体環境との相互作用に支えられます。 [6] - 活動電位と全か無かの法則位置づけ:基礎的な研究概念
膜電位が閾値を超えるとほぼ一定の大きさの活動電位が生じ、刺激の強さは主に発火頻度などで表現されます。 検討する点:単一の活動電位の振幅と、発火頻度・タイミング・集団活動による符号化を分けます。 [6] - シナプス伝達位置づけ:基礎的な研究概念
神経細胞間で神経伝達物質などを介して情報が伝えられる過程です。 検討する点:化学シナプスと電気シナプス、受容体と回路による興奮・抑制・調節を区別します。 [6] - シナプス可塑性位置づけ:研究概念・記述的な総称
活動や経験に伴い、シナプスの伝達効率や構造が変わる性質です。強化だけでなく弱化も含み、どの刺激条件・時間尺度・回路で生じるかを特定します。記憶や行動の変化を、そのまま一種類のシナプス変化と同一視しません。 [6] - 長期増強(LTP)位置づけ:基礎的な研究概念
高頻度刺激などの後にシナプス伝達効率が長く高まる現象で、学習・記憶の細胞基盤の一つと考えられます。 検討する点:実験で誘発するLTPと、複雑な行動での学習・記憶の対応は別に確かめます。 [6] - ヘッブ則位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
一緒に活動するニューロン間の結合が強まるという学習原理として要約されます。 検討する点:同時に活動すれば常に強くなるという単純則ではなく、タイミングや他の調節条件を含む発展があります。 [6] - 神経可塑性位置づけ:研究概念・記述的な総称
経験、学習、発達、損傷等に伴い神経系の構造や機能が変わる性質です。変化には複数の水準があり、適応的な変化ばかりではありません。「脳は変わる」ことから、どの課題でも無制限に回復・向上できるとは結論しません。 [6] - シナプス刈り込み位置づけ:基礎的な研究概念
発達過程で利用頻度などに応じてシナプス結合が選択的に減少・再編される過程です。 検討する点:単に使わなかった能力が消える法則ではなく、回路・細胞・時期の条件を調べる神経発達過程です。 [6] - 機能局在位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
脳の領域ごとに特定の処理への寄与が異なることです。多くの機能は相互作用するネットワークに支えられ、一領域の活動が見つかれば一つの心理状態が確定するわけではありません。 [6] - 大脳半球の側性化位置づけ:基礎的な研究概念
言語や空間処理等の寄与が左右半球で異なることです。機能・課題・人によって程度は異なり、個人を「右脳型」「左脳型」に二分する人格分類の根拠にはなりません。 [6] - 分離脳研究位置づけ:研究手続・方法概念
脳梁切断後の研究から、左右半球の情報処理と連絡の仕組みを調べる研究です。 検討する点:少数の特殊な臨床条件から得た資料を、健常者の人格二分論へ一般化しません。 [6] - 対側支配位置づけ:基礎的な研究概念
多くの運動・感覚経路で、脳の一側が身体の反対側と主に対応する仕組みです。 検討する点:すべての経路が完全に対側というわけではなく、経路ごとの交叉と両側性を区別します。 [6] - 交感神経系位置づけ:基礎的な研究概念
覚醒や活動に備え、心拍や血圧などを調整する自律神経系の一部です。 検討する点:臓器ごとに作用が異なり、「悪いストレス神経」という分類は不適切です。 [6] - 副交感神経系位置づけ:基礎的な研究概念
休息、消化、回復に関わる自律神経系の一部。単純に交感神経の逆だけではなく、臓器ごとに働きます。 検討する点:交感と副交感を単純な一つのシーソーにせず、共活動や臓器別の制御も考えます。 [6] - HPA軸位置づけ:基礎的な研究概念
ストレス時に視床下部、下垂体、副腎皮質が連携してコルチゾール分泌などを調整する系です。 検討する点:急性反応と慢性の調節、日内変動、測定条件を区別し、コルチゾール一値で心理状態を断定しません。 [6] - 概日リズム位置づけ:基礎的な研究概念
約24時間周期で睡眠・覚醒、体温、ホルモン分泌などが変化する生体リズムです。 検討する点:内因的な周期と光等による同調を区別します。時計の時刻と生物学的時刻は同じとは限りません。 [6] - 視交叉上核位置づけ:基礎的な研究概念
光情報を受けて概日リズムを同期させる、視床下部の中枢的な体内時計です。 検討する点:中枢時計と全身の末梢時計、外部の明暗情報との関係を考えます。 [6] - メラトニン位置づけ:基礎的な研究概念
暗さに応じて分泌が増え、睡眠時刻の調整に関与するホルモンです。単純な睡眠薬とは異なります。 検討する点:分泌の時刻と量は光等に影響され、ホルモンの概念説明から自己判断の投与を推奨するものではありません。 [6] - ノンレム睡眠位置づけ:基礎的な研究概念
レム睡眠以外の段階を含む睡眠で、現在の代表的な区分ではN1・N2・N3に分けます。徐波睡眠を含みますが、「身体だけが休む時間」という区分ではなく、認知・記憶等との関係も研究されます。 [6] - レム睡眠位置づけ:基礎的な研究概念
急速眼球運動、筋緊張の低下、特有の脳活動を伴う睡眠です。鮮明な夢の報告が多いものの夢はレム睡眠だけに限られず、記憶や感情処理への寄与も課題・条件ごとに検討します。 [6] - レム・リバウンド位置づけ:観察される現象・傾向
レム睡眠を抑制した後、回復睡眠でレム睡眠の割合や出現が増える現象です。 検討する点:操作や薬物等の影響を含む特定条件での反応であり、夢の内容の意味を決める概念ではありません。 [6] - 睡眠慣性位置づけ:基礎的な研究概念
覚醒直後に眠気、反応の遅さ、判断力低下などが残る状態です。 検討する点:覚醒の段階、時刻、睡眠不足等で変わり、目を開けた瞬間に機能が完全回復するとは限りません。 [6] - クロノタイプ位置づけ:基礎的な研究概念
朝型・夜型など、活動しやすい時刻に関する個人差です。年齢や光環境などの影響も受けます。 検討する点:朝夜の好み、実際の活動時刻、社会的制約を分け、固定した人格型にはしません。 [6] - 報酬予測誤差位置づけ:理論・モデル/理論上の概念
得られた結果と予測との差を学習に用いる計算上の信号です。一部のドーパミンニューロンの活動等と対応が研究されますが、すべてのドーパミン活動が一種類の報酬誤差を表すわけではありません。 [6] - 幻肢位置づけ:基礎的な研究概念
失った手足などが存在するように感じたり、痛みを感じたりする現象です。身体表象と神経可塑性が関わります。 検討する点:失った身体部位の感覚と痛みは区別され、神経機構も複数水準で研究されます。 [6] - 盲視位置づけ:観察される現象・傾向
一次視覚野の損傷などで意識的には見えないと報告しながら、刺激位置などへ正答できることがある現象です。 検討する点:主観的な「見えない」という報告と強制選択の成績の乖離を、厳密な刺激条件で測ります。 [6] - 半側空間無視位置づけ:基礎的な研究概念
脳損傷の反対側空間への注意や反応が著しく低下する状態で、単なる視野欠損とは異なります。 検討する点:空間的な注意・表象の障害で、視覚以外や身体の空間にも及ぶことがあります。 [6] - 相貌失認位置づけ:基礎的な研究概念
視力が保たれていても、よく知る顔の認識が困難になる高次視覚認知の障害です。 検討する点:後天的な脳損傷によるものだけでなく発達的な例もあり、対象認知の他の能力との関係を評価します。 [6] - 失認・失行・失語位置づけ:基礎的な研究概念
感覚自体では説明できない認知障害、運動機能だけでは説明できない行為障害、言語機能の障害をそれぞれ指します。 検討する点:診断には基本的な感覚・運動、理解、注意等で説明できないかという評価が必要です。 [6] - 可塑性と機能代償位置づけ:研究概念・記述的な総称
損傷後に残存ネットワークの再編や方略変更が機能回復を支えることがありますが、回復の程度は個別に異なります。 検討する点:神経系の再編、代替方略、環境調整による遂行の改善を分けて検討します。 [6]
10研究法・統計・科学的に考えるための用語55用語
この群の基本概念を学ぶための学術教科書・総説:[7,9]。個別の論点の文献は該当項目に示しています。
- 操作的定義位置づけ:研究手続・方法概念
観察しにくい概念を、測定・操作できる具体的手続として定義することです。 検討する点:操作が構成概念の全体を尽くすわけではなく、複数の測定と理論的予測で妥当性を吟味します。 [7,9] - 仮説位置づけ:研究手続・方法概念
理論や先行研究に基づき、変数間の関係について検証可能な形で示した予測です。 検討する点:反証可能な予測を具体化し、結果を見て作った説明とは区別して報告します。 [7,9] - 独立変数と従属変数位置づけ:研究手続・方法概念
研究者が操作・分類する要因が独立変数、その影響を測定する結果側の変数が従属変数です。 検討する点:観察研究で「独立変数」と呼んでも、研究者が実際に介入したことや因果が確定したことは意味しません。 [7,9] - 交絡変数位置づけ:研究手続・方法概念
独立変数とともに変化し、結果の原因解釈を曖昧にする第三の変数です。 検討する点:調整変数を何でも追加すればよいわけではなく、時間・因果構造に基づき選ぶ必要があります。 [7,9] - 実験群と統制群位置づけ:研究手続・方法概念
介入や操作を受ける群と、比較の基準となる群です。統制条件の設計が因果推論を左右します。 検討する点:待機、通常ケア、別の能動的介入など、比較群によって答えられる問いは変わります。 [7,9] - 無作為割付位置づけ:研究手続・方法概念
研究協力者を条件へ偶然に割り付け、群間の系統的な差を減らす方法です。無作為抽出とは目的が異なります。 検討する点:確率的に偏りを減らす仕組みで、個々の試験の群が完全に等しいと保証するわけではありません。 [7,9] - 無作為抽出位置づけ:研究手続・方法概念
母集団から、要素の選ばれる確率が定められた手続で標本を選ぶことです。単純無作為抽出はその一種です。非応答や対象リストの漏れがあれば代表性は損なわれ、無作為割付とは目的が異なります。 [7,9] - 研究協力者間計画(between-subjects design)位置づけ:研究手続・方法概念
異なる研究協力者を各条件に割り当てる計画。順序効果は避けやすい一方、個人差の影響を受けます。 検討する点:割付方法、群の大きさ、基準時点の差や欠測を考慮します。 [7,9] - 研究協力者内計画(within-subjects design)位置づけ:研究手続・方法概念
同じ研究協力者が複数条件を経験する計画。個人差を統制しやすい一方、順序効果に注意が必要です。 検討する点:反復測定の相関を考慮する必要があり、独立した群のデータとして扱いません。 [7,9] - 順序効果位置づけ:研究手続・方法概念
条件を経験する順番によって、練習、疲労、慣れなどが結果へ影響することです。 検討する点:練習や疲労の経時変化が、操作の効果と重なる可能性を検討します。 [7,9] - カウンターバランス位置づけ:研究手続・方法概念
条件の提示順序を研究協力者間で変え、順序効果が特定条件へ偏らないようにする方法です。 検討する点:一部の持ち越しが不可逆な場合など、順序の入替だけでは除けない影響もあります。 [7,9] - 持ち越し効果位置づけ:研究手続・方法概念
前の条件の影響が次の条件にも残る現象です。十分な間隔や計画上の工夫が必要です。 検討する点:前の条件の影響が次で同じとは限らず、条件と順序の交互作用もあり得ます。 [7,9] - 要求特性位置づけ:研究手続・方法概念
研究協力者が研究の意図や期待を推測する手がかりと、それに応じた行動変化の問題です。期待へ合わせるだけでなく、反発や別の動機もあり、研究場面の影響を一方向に仮定しません。 [7,9] - 実験者期待効果位置づけ:研究手続・方法概念
実験者の期待が、無意識の手がかりや評価を介して研究協力者や結果へ影響する現象です。 検討する点:指示や支援の違いと、評価・解析の偏りをそれぞれ検討します。 [7,9] - 盲検法・二重盲検法位置づけ:研究手続・方法概念
研究協力者・介入者・転帰評価者・解析者等へ割付情報を知らせない工夫です。「二重」の意味は研究で異なるため、誰が何を知らなかったかを明記します。心理療法では介入者の盲検が難しくても評価者盲検等を検討できます。 [7,9] - ホーソン効果位置づけ:広く使われる呼称・説明枠組み
観察や研究参加を意識することが行動を変える影響を指す呼称です。定義や操作が研究間で異なり、系統的レビューでも一つの一定した効果とすることは困難です。観察されれば必ず成績が上がるという法則ではありません。 [7,9,19] - 信頼性位置づけ:研究手続・方法概念
同じものを繰り返し、または複数項目・評価者で測ったときに、結果が一貫する程度です。 検討する点:一つの指標の高低だけでなく、再検査、内的一貫性、評定者間等の異なる誤差の側面を分けます。 [7,9] - 再検査信頼性位置づけ:研究手続・方法概念
同じ測定を時間を空けて実施したときの得点の安定性です。変化する概念には単純適用できません。 検討する点:変化し得る属性の真の変化と測定誤差のための不安定さを区別します。 [7,9] - 内的一貫性位置づけ:研究手続・方法概念
尺度の項目間の関連についての指標です。α係数等が高くても一次元性や妥当性は証明されず、項目の重複や個数にも影響されます。どの得点解釈に、どの誤差が問題になるかを別に検討します。 [7,9,41] - 評定者間信頼性位置づけ:研究手続・方法概念
複数の評価者が同じ対象を評価したときの一致度です。 検討する点:単純な一致率と、偶然の一致や得点差を考慮する係数では意味が異なります。 [7,9] - 妥当性位置づけ:研究手続・方法概念
得点や研究結果について、特定の用途の解釈をどの程度支持できるかという問題です。検査に一度「妥当」と札を貼って終えるものではなく、対象、目的、理論、他の資料との関係を蓄積して吟味します。 [7,9] - 構成概念妥当性位置づけ:研究手続・方法概念
測定結果が、想定する理論的概念をどの程度適切に表しているかを示します。 検討する点:因子構造だけでなく、予測する関連・区別・介入への反応などの証拠を統合します。 [7,9] - 内的妥当性位置づけ:研究手続・方法概念
観察された差を、交絡ではなく操作した要因の効果として説明できる程度です。 検討する点:無作為化の有無だけでなく、脱落、測定、実施状況、汚染なども関わります。 [7,9] - 外的妥当性位置づけ:研究手続・方法概念
研究結果を、別の人、場面、時期などへ一般化できる程度です。 検討する点:標本だけでなく、場面、介入の版、転帰、時期が変わる場合の一般化も考えます。 [7,9] - 生態学的妥当性位置づけ:研究手続・方法概念
実験課題や結果が日常場面の行動や環境をどの程度反映するかという観点です。 検討する点:見た目が日常に似ていることと、日常行動を予測できることは同じではありません。 [7,9] - 相関と因果位置づけ:研究手続・方法概念
二変数が関連しても、一方が他方の原因とは限りません。逆因果や第三変数を検討する必要があります。 検討する点:因果はランダム化以外でも仮定と設計によって検討できますが、相関係数だけでは確定しません。 [7,9] - 第三変数問題位置づけ:研究手続・方法概念
二変数の相関が、両方へ影響する別の変数によって生じている可能性です。 検討する点:第三変数を測れたことと、測定誤差なく適切に調整できたことも区別します。 [7,9] - 平均への回帰位置づけ:研究手続・方法概念
完全には相関しない二回の測定で、初回の極端な値で選んだ集団の次の値が平均へ近づきやすい現象です。個人が必ず平均へ戻る法則ではありません。前後差だけを介入効果と解釈できない理由の一つです。 [7,9] - 天井効果・床効果位置づけ:研究手続・方法概念
課題が易しすぎて高得点へ、または難しすぎて低得点へ集中し、差を検出しにくくなる現象です。 検討する点:得点範囲の制限により、平均だけでなく分散や相関の解釈にも影響します。 [7,9] - 代表値と散布度位置づけ:研究手続・方法概念
平均・中央値・最頻値は中心を、分散・標準偏差・範囲などはばらつきを表します。 検討する点:分布の歪みや外れ値を確認し、平均だけで代表的な人の姿を決めません。 [7,9] - 相関係数位置づけ:研究手続・方法概念
二変数の関連の方向と強さを表す指標。ゼロ相関でも非線形関係がないとは限りません。 検討する点:Pearson相関なら直線的な関連の指標であり、他の相関係数と定義を区別します。 [7,9] - p値位置づけ:研究手続・方法概念
帰無仮説とその他の統計モデルの仮定の下で、観測した検定統計量と同等以上に極端な値を得る確率です。帰無仮説が正しい確率でも、結果が偶然である確率でもなく、効果の大きさや実質的重要性も表しません。 [7,9,30] - 第一種の誤り位置づけ:研究手続・方法概念
本当は正しい帰無仮説を、統計的な検定で棄却すること。たとえば実際には差がないのに、差があると判断してしまう誤りです。 検討する点:有意水準は指定された検定手続の反復的な誤り率で、得られた一つの結論が誤る確率とは別です。 [7,9,30] - 第二種の誤り位置づけ:研究手続・方法概念
本当は誤っている帰無仮説を、統計的な検定で棄却できないこと。有意な差が出なかったことは、それだけで「差がない」と証明したことにはなりません。 検討する点:小さな効果や不精確な測定でも起き、有意差なしを同等性の証明へ読み替えません。 [7,9,30] - 検定力位置づけ:研究手続・方法概念
指定した効果・モデル・検定手続の下で帰無仮説を棄却できる確率です。効果量、標本数、誤差、基準等を仮定して設計時に検討します。有意な結果から逆算した「観測検定力」は新しい証拠をほとんど加えません。 [7,9,29] - 効果量位置づけ:研究手続・方法概念
平均差や関連の大きさを、元の単位または標準化した尺度で表す指標です。標準化に使う分母や研究計画が違えば数値の意味も異なり、「小・中・大」という慣用的目安だけで臨床・教育上の意義を決めません。 [7,9,29] - 信頼区間位置づけ:研究手続・方法概念
仮定した反復抽出と同じ構成法の下で、たとえば95%の区間が真の母数を含むように作る推定区間です。計算済みの一つの区間について、母数が95%の確率で中にあるとする頻度論的な意味ではありません。モデルの誤りや全バイアスを含む区間でもありません。 [7,9,30] - 多重比較問題位置づけ:研究手続・方法概念
多数の検定を行うほど、偶然の有意差が少なくとも一つ生じる確率が高まる問題です。 検討する点:どの仮説群の誤りを制御するかを定め、探索と検証の目的に合った手続を用います。 [7,9] - 分散分析位置づけ:研究手続・方法概念
複数条件の平均差を、要因と誤差の分散に分けて検討する統計手法です。 検討する点:要因の主効果と交互作用、誤差構造、計画と仮定を明示して検討します。 [7,9] - 因子分析位置づけ:研究手続・方法概念
複数の観測変数の共変動を、共通因子と固有の成分等により表すモデルです。探索と確認を区別し、適合した因子を実在する脳内器官や原因とそのまま同一視しません。 [7,9,41] - 構造方程式モデリング位置づけ:研究手続・方法概念
観測変数・潜在変数間の関係を、測定モデルと構造モデル等によって検討する方法群です。よい適合だけでは因果方向は確定せず、識別、測定、交絡、モデルの仮定と代替モデルを吟味します。 [7,9,41] - メタ分析位置づけ:研究手続・方法概念
複数研究の効果量を統計的に統合する方法です。系統的レビューの一部として用いられますが、検索・選択・バイアス・研究間差を適切に扱わなければ、統合しただけで確かな結論になるわけではありません。 [7,9,29] - 出版バイアス位置づけ:研究手続・方法概念
有意で肯定的な結果が、非有意な結果より公表されやすいことによる偏りです。 検討する点:研究全体の不公表だけでなく、有意な転帰や解析だけが選ばれる選択的報告も区別します。 [7,9,33] - ファイルドロワー問題位置づけ:研究手続・方法概念
公表されない研究が『引き出し』に残ることで、公開研究だけの統合結果が偏る問題です。 検討する点:公表文献だけで結論を作る危険を表す比喩で、未公表の全結果がゼロだと仮定してはいけません。 [7,9,33] - pハッキング位置づけ:研究手続・方法概念
分析やデータ処理を多数試し、有意になった結果だけを報告するなど、p値を不適切に利用する行為です。 検討する点:多数の解析を行うこと自体ではなく、選択過程や試した解析を隠して検証的結果のように報告する問題です。 [7,9,33] - HARKing位置づけ:研究手続・方法概念
結果を見た後に仮説を作り、それを事前仮説だったかのように報告することです。 検討する点:結果から仮説を作る探索は有用ですが、結果を見る前の予測として装うことが問題です。 [7,9,34] - 事前登録位置づけ:研究手続・方法概念
仮説、方法、主要分析をデータ確認前に記録し、探索的分析と検証的分析を区別しやすくする仕組みです。 検討する点:既存データを使う場合も閲覧範囲等を明記し、登録からの変更は理由とともに報告します。 [7,9,34] - 追試・再現可能性位置づけ:研究手続・方法概念
元データと解析手順から結果を再計算することと、新しいデータで同じ主張を検討する追試を区別します。reproducibility/replicabilityの用語は分野で揺れるため手続を明記し、一回の不一致から不正や効果不存在を即断しません。 [7,9,32] - WEIRD標本位置づけ:研究手続・方法概念
西洋・教育水準が高い・工業化・富裕・民主的社会に偏った標本を指し、一般化可能性への注意を促す概念です。 検討する点:標本の偏りは代表性と一般化の問題で、その標本の研究がすべて無価値という意味ではありません。 [7,9,31] - 横断研究と縦断研究位置づけ:研究手続・方法概念
横断研究は、ある時点で集めたデータから群や変数の関係を調べる研究。縦断研究は、時間を追ってデータを集め、変化などを調べる研究です。年齢群の比較や同じ人の追跡はその例であり、縦断研究でも因果関係が自動的に決まるわけではありません。 検討する点:年齢・時代・コホートの絡み合い、反復測定、欠測などを設計に応じて検討します。 [7,9] - 脱落バイアス位置づけ:研究手続・方法概念
追跡研究などで途中離脱者に共通特徴があると、残った標本の結果が偏る問題です。 検討する点:脱落率だけでなく群間差と欠測が生じる仕組みが重要で、残った人だけの分析には注意が必要です。 [7,9] - 社会的望ましさバイアス位置づけ:研究手続・方法概念
実際の考えや行動より、社会的に好ましく見える回答を選びやすい傾向です。 検討する点:意図的な嘘だけでなく、規範への同一化や質問の意味の取り方も関わり得ます。 [7,9] - 想起バイアス位置づけ:研究手続・方法概念
過去の出来事を思い出す正確さが、現在の状態や出来事の重要性などにより偏ることです。 検討する点:時間の長さだけでなく、現在の状態や群によって報告誤差が異なる可能性を考えます。 [7,9] - 生存者バイアス位置づけ:研究手続・方法概念
観察できる成功例や残存例だけに注目し、失敗・脱落した事例を見落とすことで生じる偏りです。 検討する点:成功者だけの共通特徴を、成功を生んだ原因と取り違えないために、観察されない例を考慮します。 [7,9] - シンプソンのパラドックス位置づけ:研究手続・方法概念
集団ごとの関連と、集約した全体での関連が逆転する等の現象です。単に層別すれば正解になるのではなく、何を因果的に推定したいか、層別変数がどのように関わるかによって適切な解釈を検討します。 [7,9]
用語を、検証できる問いへ戻す
「この人は確証バイアスがある」と述べるだけでは、どんな情報を選び、どの程度判断が変わったかは分かりません。「肯定的・否定的な情報を同程度に与えたら、どちらを記憶・評価したか」のように、比較可能な問いへ戻します。相手の経験や現実の制約を、用語で片づけることは避けます。
臨床や教育への応用でも、実験室の平均的な差から、個人の状態や将来を即断できません。説明がもっともらしいこと、構成概念を適切に測れること、介入で意味のある変化が起きることを分けて検討します。心理検査については心理検査の一覧、介入については心理療法の一覧も参照できます。
追試で変わるのは、名前ではなく主張の範囲
2015年の共同追試は選定された100研究を再検討しましたが、心理学全体やこの371項目の正誤率を測った研究ではありません。[32] 追試の不一致では、対象・材料・実施、測定誤差、効果の大きさ、分析、選択的報告を検討します。元研究の不正や、効果がどの条件でも存在しないことを、一度の不一致から結論しません。
また、探索から新しい仮説が生まれることは科学に必要です。問題は、結果を見て生まれた仮説を、事前の予測を検証したかのように示すことです。事前登録や方法・データの透明化は、その区別を読み手が確認する助けになりますが、それだけで測定や推論の質が保証されるわけではありません。[33,34]
学ぶ際は、教科書で概念の体系をつかみ、原著で操作と測定を確認し、総説・メタ分析・追試で結論の更新を読みます。人を分類するラベルを増やすよりも、何が分かり、何が未確定かを説明できることが、専門的な理解につながります。
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