心理検査一覧|種類・目的・選び方を公認心理師が解説

心理検査一覧|種類・目的・選び方を公認心理師が解説

心理検査は、心理学的な構成概念や行動を、定められた課題・質問・観察・評定によって測定する方法です。心理アセスメントは、それらの得点に面接、生活歴、行動観察、本人の目標、環境の情報を統合し、具体的な問いに答える過程を指します。検査を多く実施すること自体が、アセスメントの質を保証するわけではありません。[1][2][3]

本稿では、検査選択と結果の解釈に必要な心理測定の考え方を説明し、109項目の検査・尺度・面接法を目的別に整理します。個別の検査名は、同じ根拠水準で推奨された方法の一覧を意味しません。原版と日本語版、改訂版ごとの違いを含め、実際に用いる版の標準化資料を確認する必要があります。

検査を選ぶ前に、答えたい問いを定める

「発達障害か」「性格を知りたい」といった依頼は、そのままでは測定の目的が広すぎます。たとえば、授業中の指示を保持しにくいのか、読み書きの習得に困っているのか、対人場面で疲れやすいのかを区別します。困難さの背景の見立て、支援計画、支援経過の評価、本人への説明では、必要な情報も検査選択の基準も変わります。[2][3]

選択では、対象年齢・言語・文化的背景に合う標準化、依頼目的に対応した妥当性の根拠、実施者の訓練、所要時間や負担を検討します。既に分かっている情報に対し、追加した検査が判断をどれだけ改善するかという増分妥当性も重要です。結果を得ても支援上の判断が変わらないなら、追加実施の意義を再検討します。[1][2]

信頼性、妥当性、測定不変性を分けて考える

信頼性は、どの誤差を問題にするかで異なる

再検査による時間的安定性、評定者間の一致、項目間の関係は、それぞれ異なる情報です。症状が実際に変化する尺度では、低い再検査相関をすべて測定誤差と解釈できません。一方、採点や評定者による違いが大きければ、同じ人への判断が実施者に左右されます。信頼性係数は「検査に永久に備わる数値」ではなく、対象集団や実施条件にも依存します。[1]

Cronbachのαが高いことだけでは、一次元性や妥当性を示せません。項目数や項目間の共分散の影響を受けるため、因子構造を別に検討し、得点の利用目的に応じた誤差の評価が必要です。αを機械的な合格基準にする読み方には方法論上の批判があります。[5]

妥当性は、得点からどの解釈をしてよいかという問い

妥当性の議論では、検査の名称と測りたい構成概念を同一視せず、得点の解釈を支える理論とデータを検討します。内容、回答過程、内部構造、他の変数との関係など、複数の証拠が必要です。ある集団の抑うつ症状の把握に根拠があっても、それだけで採用判断や人格全体の評価に転用できるわけではありません。[1][4]

異なる言語集団や年齢群、介入前後を比べるときには、同じ構成概念が同じように測定されているかという測定不変性も問題になります。配置・因子負荷・切片などを段階的に検討する枠組みがあり、集団平均の差を心理特性の差と解釈する前に、項目の意味や測定構造の違いを考慮します。[6]

スクリーニングの陽性は、診断の確定を意味しない

スクリーニングは、詳しい評価が必要な可能性を捉えるための入口です。感度は状態に該当する人を陽性とする割合、特異度は該当しない人を陰性とする割合です。陽性者のうち実際に該当する割合である陽性的中率は、検査性能に加え、その場面のベースレートに左右されます。[7]

以下は実在する検査の成績ではなく、説明用に仮定した算数例です。1,000人のうち対象の状態に該当する人が50人、感度・特異度がともに90%なら、真陽性は45人、偽陽性は95人となります。陽性140人中、実際に該当する人は45人なので、陽性的中率は約32%です。「感度90%だから、陽性なら病気である確率90%」とは計算できません。

AUCは、ある閾値一つの的中率や個人の診断確率ではありません。閾値を変えたときの識別性能を要約する指標であり、実際の判断には、見逃しと過剰な拾い上げの影響、追加面接の利用可能性、その集団における性能を併せて考えます。[7][9]

目的別の心理検査・尺度・面接法109項目

以下は測定目的を確認する索引です。心理検査、症状の自己評定、他者評定、構造化・半構造化面接を含みます。検査名の末尾の数字や略称は版を表す場合があり、原版の研究結果を、別の版や日本語版へそのまま移せません。ここでは問題項目や採点基準を転載せず、使う際に必要な論点を整理します。

知能・認知・発達をみる検査11種類

能力課題と日常の機能を結びつける。知能検査は標準化された課題の遂行を評価し、日常生活の適応行動を直接測る検査とは役割が異なります。指標間の差を扱う場合も、差の有意性、一般集団での出現頻度、測定誤差、観察された課題遂行を併せて読みます。特定の得点パターンだけで神経発達症を診断する使い方は避けます。[1][3][25]

  • WAIS-IV成人の全般的な知的能力と、言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度などの認知特性を把握します。
  • WISC-V児童の知的能力を複数の指標から捉え、学習や支援方法を検討する資料にします。
  • WPPSI-III幼児期の知的発達を把握するための個別式知能検査です。
  • 田中ビネー知能検査V幼児から成人まで幅広い年齢を対象に、発達段階に応じた課題で知的能力を捉えます。
  • KABC-II認知処理の特徴と基礎学力を分けて捉え、教育的な支援につなげます。
  • DN-CASプランニング・注意・同時処理・継次処理という認知過程から特徴を把握します。
  • レーヴン色彩/標準マトリックス検査図形の規則性を見いだす非言語的な推理能力を測ります。
  • 新版K式発達検査2020姿勢・運動、認知・適応、言語・社会の三領域から発達の状態を評価します。[34]
  • Bayley-III乳幼児発達検査乳幼児期の認知、言語、運動などの発達を多面的に評価します。
  • WMS-R言語性記憶、視覚性記憶、注意・集中など記憶機能の特徴を捉えます。
  • RBANS即時記憶、視空間、言語、注意、遅延記憶などを比較的短時間で評価します。
適応行動・発達特性をみる検査13種類

スクリーニング、観察、発達歴の役割。M-CHAT-R/Fはフォローアップを含む幼児の二段階スクリーニングです。ADI-Rは養育者から発達歴等を聴取する面接法で、観察法や生活情報と異なる情報を提供します。ADHD等の行動評定も、本人・養育者・教師で見ている場面が違います。不一致を直ちに「誰かの回答が間違い」と処理せず、場面差を検討します。[10][11][12]

  • Vineland-II適応行動尺度コミュニケーション、日常生活、社会性など、実生活での適応行動を聞き取りで評価します。
  • S-M社会生活能力検査 第3版身辺自立、移動、作業、意思交換、集団参加など社会生活能力の発達を捉えます。
  • KIDS乳幼児発達スケール養育者からの回答をもとに、乳幼児の日常的な発達の様子を整理します。
  • 遠城寺式乳幼児分析的発達検査運動、社会性、言語など複数領域から乳幼児の発達を確認します。
  • 感覚プロファイル(SP・ITSP・AASP)音、光、触覚、動きなど感覚刺激への反応傾向と生活への影響を整理します。
  • DTVP-3視知覚発達検査子どもの視知覚と視覚運動の発達を捉えます。
  • PARS-TR養育者等への半構造化面接を通して、自閉スペクトラム症に関連する行動特徴と支援の手がかりを整理する評定尺度です。単独で診断を確定するものではありません。[35]
  • M-CHAT-R/F幼児期の自閉スペクトラム症に関する可能性を早期に確認するためのスクリーニングです。
  • ADOS-2課題や会話場面での社会的コミュニケーションと行動を標準化された手順で観察します。
  • ADI-R養育者への標準化された半構造化面接により、発達歴と自閉スペクトラム症に関連する特徴を確認します。
  • ADHD-RS-5不注意や多動性・衝動性に関する行動を評定し、生活場面での特徴を整理します。
  • Conners 3子どもの注意、行動、実行機能などを本人・保護者・教師の視点から捉えます。
  • BRIEF2日常生活における抑制、切り替え、計画、ワーキングメモリーなど実行機能を評定します。
性格・パーソナリティ・対人関係をみる検査14種類

特性、症状、解釈仮説を混同しない。特性次元を測る質問紙、臨床症状を含む質問紙、類型を用いる指標、反応や描画を用いる方法を同じ目的の検査として扱えません。投映法は、採点体系と解釈する指標ごとに根拠を確認します。MBTIでは、尺度得点との相関が示されることと、人間が質的に異なる固定タイプへ分かれることは別の主張です。[13][14][15][32]

  • 新版TEG3(東大式エゴグラム)交流分析の自我状態モデルに基づく自己評定です。得点プロフィールを人格全体や精神疾患の診断に置き換えません。[36]
  • MMPI-3日本版妥当性尺度を含む多数の尺度から、パーソナリティと心理的な問題を多面的に評価します。
  • YG性格検査複数の性格特性から全体的なプロフィールを捉える質問紙です。
  • NEO-PI-3性格を5つの主要因とより細かな側面から捉えます。
  • 16PF複数の性格特性を質問紙で測定し、対人・行動傾向を整理します。
  • EPPS達成、親和、自律など複数の心理的欲求の相対的な傾向を捉えます。
  • Big Five関連尺度外向性、協調性、勤勉性、情緒安定性、開放性などから性格傾向を整理します。
  • MBTI心理的選好を4つの指標で捉える指標。連続した個人差と類型の区別が論点であり、精神疾患の診断や他者との相性の確定に用いません。
  • ロールシャッハ法インクブロットへの反応を記録・記号化する方法。包括システム、R-PAS等の体系を区別し、指標ごとの妥当性を確認します。
  • TAT絵から構成する物語を資料とする方法。採点体系を明示し、物語の印象のみから葛藤や人格を断定しません。
  • SCT(文章完成法)未完成の文章への反応を用いる方法の総称。用いる形式・採点体系により目的や根拠が異なり、一つの反応だけで診断しません。
  • バウムテスト樹木画を用いる描画法。面接や表現の資料としての利用と、特定の描画徴候から性格・疾患を推定する妥当性を区別します。
  • HTP/統合型HTP家・木・人物の描画を用いる方法。描画の一特徴から、虐待歴、診断、人格特性を一対一に決める解釈はできません。
  • P-Fスタディ欲求不満場面への言語反応を所定の分類で整理する方法。場面への反応様式と、日常の攻撃行動の予測は区別します。
気分・不安・ストレス・精神健康をみる尺度18種類

症状の期間と情報源をそろえる。PHQ-9、GAD-7、K6/K10では、測定する構成概念や回答対象期間が異なります。自己評定と診断面接、重症度の他者評定も区別します。同じ「うつ得点」のように呼んでいても、尺度間の数値をそのまま比較できません。身体疾患や睡眠、薬物等の影響も臨床面接で確認します。[2][9][16][17]

  • POMS2複数の気分尺度から気分状態を評価する質問紙。回答期間や版を確認し、精神疾患の診断尺度とは区別します。
  • GHQ精神健康上の問題やストレス反応の可能性を把握するスクリーニング質問紙です。
  • K6/K10気分・不安に関連する心理的苦痛の程度を簡便に確認します。
  • PHQ-9抑うつ症状の有無や程度を確認するために用いられる質問票です。
  • GAD-7全般的な不安症状の程度を確認する質問票です。
  • BDI-II抑うつ症状の程度を、認知・感情・身体面を含めて評価します。
  • SDS抑うつに関連する症状を自己評価する尺度です。
  • CES-D一般人口や研究等でも用いられる抑うつ症状のスクリーニング尺度です。
  • STAIその時点の不安と、比較的持続しやすい不安傾向を分けて捉えます。
  • CMI健康調査票身体的・精神的な自覚症状を幅広く確認します。
  • SCL-90-R幅広い心理症状を複数の領域から把握する質問紙です。
  • SRQ-D身体症状を伴う抑うつ状態のスクリーニングに用いられる質問票です。
  • MINIMini-International Neuropsychiatric Interview。主要な精神疾患を系統的に確認する構造化面接で、MMPI系の短縮質問紙の略称MINIと区別します。
  • SCID-5DSM-5に基づく診断評価のための半構造化面接。目的に応じた版と面接者の訓練が必要です。
  • Y-BOCS強迫症状の種類と重症度を専門家との面接等で評価します。
  • LSAS社会的状況における不安や回避の程度を評価します。
  • PDSSパニック発作や関連する不安・回避による影響を評価します。
  • HAM-D/HAM-A抑うつまたは不安の症状を、専門家が面接を通して評価する尺度です。
トラウマ・PTSD・解離をみる尺度7種類

診断体系と尺度の版を確認する。PCL-5とCAPS-5はDSM-5に対応し、ITQはICD-11のPTSD・複雑性PTSDを扱います。IES-RはDSM-5の全症状を網羅する尺度ではありません。別体系の閾値や症状群を混ぜず、出来事への曝露、症状、期間、生活機能を含めて評価します。解離尺度の高得点も、解離性障害の確定診断とは異なります。[18][19][20][21]

  • PCL-5DSM-5のPTSD症状について、本人がその程度を回答する質問票です。
  • CAPS-5PTSDの症状と生活への影響を、訓練を受けた専門家が評価する構造化面接です。
  • IES-R出来事後の侵入症状、回避、過覚醒などのストレス反応を確認します。
  • ITQICD-11に基づくPTSDと複雑性PTSDの症状を確認する質問票です。
  • DES-II日常生活で経験される解離症状の頻度を自己評価します。
  • TSCC子どものトラウマに関連する症状を本人の回答から把握します。
  • TSCYC幼い子どものトラウマ関連症状を養育者の回答から捉えます。
子どもの情緒・行動・家族関係をみる尺度9種類

複数の情報源を統合する。子どもの評定では、回答者の観察機会、家庭と学校の条件、本人が体験する内的症状を区別します。多情報源のレビューでは、回答の不一致にも臨床的に意味のある場面差が含まれ得ると論じられています。SDQは困難だけでなく向社会性も扱いますが、単独の総得点から支援計画全体が決まるわけではありません。[12][22]

  • CBCL保護者の回答から、子どもの情緒・行動上の特徴を幅広く捉えます。
  • TRF教師の視点から、学校場面での子どもの情緒・行動を評価します。
  • YSR子ども・青少年本人の回答から、情緒・行動上の特徴を捉えます。
  • SDQ情緒、行為、多動・不注意、仲間関係、向社会性を簡便に確認します。
  • CDI 2子ども・青少年の抑うつ症状を評価する質問紙です。
  • STAIC子どもの状態不安と特性不安を分けて捉えます。
  • QTA30身体症状、抑うつ、不安等の心身の状態を子ども本人に尋ねる健康調査票です。早期スクリーニングや経過の把握の資料として用い、一般的な性格検査や知能検査とは区別します。[33]
  • PSI(育児ストレスインデックス)保護者の育児ストレスを、親側・子ども側など複数の側面から整理します。
  • FACES関連尺度家族のまとまりや柔軟性など、家族システムの特徴を捉えます。
神経心理・高齢期の認知機能をみる検査15種類

認知課題の低下から原因を短絡しない。神経心理検査では、全般的認知、注意、記憶、言語、視空間認知、遂行機能などを分けて評価します。ただし、多くの課題は複数の機能を必要とします。視聴覚、運動、教育歴、疲労、気分、検査への慣れを考慮し、低得点から病変部位や認知症の原因を単独で決めません。MoCA-Jのようなスクリーニングにも対象集団に即した解釈が必要です。[23][25]

  • HDS-R認知機能低下の可能性を簡便に確認するためのスクリーニング検査です。
  • MMSE-J見当識、記憶、注意、言語など全般的な認知機能を短時間で確認します。
  • MoCA-J軽度認知障害を含む認知機能の変化を捉えるためのスクリーニングです。
  • FAB前頭葉に関係する概念化、抑制、行動制御などを簡便に評価します。
  • BADS日常生活に近い課題を通して、計画や問題解決など遂行機能を評価します。
  • WCST概念形成、認知的柔軟性、ルール変更への対応などを評価します。
  • TMT-J視覚探索、注意、処理速度、切り替えなどを評価します。
  • ストループ検査自動的な反応を抑える力や注意制御を評価します。
  • Rey-Osterrieth複雑図形検査視空間構成、計画性、視覚性記憶などを評価します。
  • RAVLT単語リストを用いて言語性学習と記憶を評価します。
  • BVRT図形の記憶と視覚認知を評価します。
  • CPTContinuous Performance Test(持続遂行課題)の総称。持続的注意や反応制御を調べます。心理療法の認知処理療法(CPT)とは別です。
  • SLTA失語症に関連する聞く・話す・読む・書く機能を総合的に評価します。
  • WAB言語機能を複数の側面から評価し、失語症の特徴を把握します。
  • VPTA高次視知覚機能の障害を体系的に評価します。
QOL・睡眠・摂食・依存をみる尺度16種類

症状、生活の質、行動上の問題を別々に捉える。WHOQOL-BREFのような生活の質、PSQIの睡眠の質、ISIの不眠重症度は、関連していても同じ構成概念ではありません。飲酒・物質使用・ゲームのスクリーニングも、使用時間だけでなく害や機能への影響を評価する目的を確認します。各尺度の妥当性研究を、別言語や別年齢層へ無条件に一般化しないことが必要です。[24][26][27][28][29]

  • WHOQOL26WHOQOL-BREFに対応する26項目の生活の質の質問紙。身体、心理、社会的関係、環境等の主観的な評価を扱います。
  • WHO-5最近の精神的ウェルビーイングを5項目で簡便に確認します。
  • SF-36v2健康に関連する生活の質を、身体・精神・社会生活の側面から捉えます。
  • EQ-5D-5L健康状態を複数の側面と総合評価から捉えるQOL尺度です。
  • SWLS自分の生活全体に対する満足度を評価します。
  • Rosenberg自尊感情尺度自分自身に対する全体的な肯定的・否定的評価を捉えます。
  • PSQI睡眠の質、入眠、睡眠時間、日中への影響などを評価します。
  • ISI不眠症状の程度と生活への影響を評価します。
  • ESS日中のさまざまな場面で眠り込む可能性を自己評価します。
  • EAT-26摂食態度や食行動上の問題の可能性を確認するスクリーニングです。
  • EDI-3摂食障害に関連する心理的特徴を多面的に評価します。
  • AUDIT飲酒量、飲酒行動、飲酒による問題を確認するスクリーニングです。
  • CAGE飲酒問題の可能性を4項目で簡便に確認します。
  • DAST-20アルコール以外の物質使用に関連する問題を確認します。
  • IATインターネット使用による生活への影響を自己評価する尺度です。
  • GAMESテストゲーム行動と生活への影響から、ゲーム障害の可能性を確認するために用いられます。
仕事・職業・キャリアをみる検査6種類

能力、興味、職場環境を分ける。職業適性能力、職業興味、職場の心理社会的ストレスは異なる測定対象です。興味の分類を適職の唯一の答えにせず、職務の要件、経験、希望、利用可能な配慮を併せて考えます。新職業性ストレス簡易調査票(New BJSQ)の開発研究は仕事の要求・資源等を扱っており、知能や職業興味を測る検査の研究とは区別します。[30][31]

  • 職業性ストレス簡易調査票仕事のストレス要因、心身のストレス反応、周囲からの支援などを把握します。精神疾患の診断を単独で行う調査票ではありません。[37]
  • 内田クレペリン精神作業検査連続加算作業の遂行量と変化から、作業の特徴を把握します。
  • GATB複数の職業適性能力を測り、職業選択や配置を考える資料にします。
  • VPI職業興味検査職業に対する興味の方向性を複数の領域から捉えます。
  • SDSキャリア自己探索検査Self-Directed Search。職業興味等を職業環境の分類と対応させて探索する方法で、抑うつ尺度のSDSとは別です。
  • 職業レディネス・テスト職業興味や基礎的志向性から、進路・職業選択への準備を支援します。

結果の解釈で混同しやすいこと

点数の高低と診断、原因、支援の必要性は別の問い

状態を理解する根拠、原因の推定、将来の予測、支援計画に有用であることは、それぞれ異なる妥当性の主張です。たとえば、検査場面での処理速度が低いという所見から、原因や学校・仕事での困難を一つに決められません。本人が困る場面と、課題を遂行できた条件を照合して、検証可能な仮説を立てます。[1][3]

投映法は、技法全体への賛否より、指標と推論を点検する

Mihuraらはロールシャッハ包括システムの65変数を系統的に検討し、支持の強さが変数ごとに異なること、構成概念に関連した妥当性研究がない変数もあることを報告しました。包括システムの結果を別の採点体系へそのまま移すこともできません。描画や物語を対話の資料として使うことと、そこから特定の診断や体験歴を正確に推定できることを分ける必要があります。[13][14]

性格特性は、人を固定したタイプに閉じ込めるためのものではない

McCraeとCostaの研究では、MBTIの得点と特性次元との関連が認められる一方、質的に異なる二分的なタイプを測定しているという説明は支持されませんでした。これは一つの研究ですが、尺度間の相関と「人間は固定タイプに分かれる」という主張を分ける理由になります。学術的な性格検査と、名称が似ているオンライン上の自己判定を同一視しないことも大切です。[15]

変化の評価と、次の行動につながるフィードバック

前後で点数が下がったときも、測定誤差、自然な変動、平均への回帰、検査への慣れを検討します。JacobsonとTruaxの方法は、測定誤差を考慮した信頼できる変化と、臨床的に意味のある水準への移行を分けます。計算には対象集団に適した信頼性や標準偏差等が必要で、「何点変われば改善」と全尺度へ同じ基準を当てはめられません。[8]

尺度の変化が示されても、それだけで特定の介入が原因と証明されるわけではありません。本人が望む生活機能、学業・仕事への影響、負担や悪化も併せて確認します。報告では、依頼された問い、用いた版と実施条件、主要な所見、推論の根拠と限界、支援上の提案をつなげます。数値と診断名だけを渡す説明では、支援の判断に必要な情報が不足します。[2][3]

受検前には目的・負担・結果を共有する範囲を確認し、結果説明では「何が分かったか」「何がまだ分からないか」「次に何を確かめるか」を共有します。本人の理解や異論も、解釈を検討する情報です。検査の実施・採点には専門的訓練と適切な資料管理が必要で、問題や採点基準の公開は検査の利用可能性を損なう場合があります。[1]

K6・K10の日本語版研究とALVARAでの利用

K6・K10は、過去30日間の非特異的な心理的苦痛を把握する短い尺度です。Furukawaらは、日本の7地域の住民2,436人の調査で、CIDIによるDSM-IVの気分・不安障害の評価と日本語版得点を比較しました。報告されたAUCはK6で0.94(95%信頼区間0.88–0.99)、K10で0.94(0.88–0.995)でした。これはその研究条件における識別性能であり、個人が疾患に該当する確率が94%という意味ではありません。[9]

この研究は、すべての疾患・年齢・診療場面で同じ性能が得られることを保証しません。K6・K10は原因や診断名を単独で確定するための尺度ではなく、得点が低くても生活上の困難や支援の必要性が否定されるわけではありません。

利用中の個人月額会員と法人EAP会員は、追加料金なしで利用できます。K6・K10は共通の利用枠で、どちらかの回答完了から30日ごとに利用できます。詳細はK6・K10の種類と使い方をご覧ください。

一覧にあるその他の検査の掲載は、ALVARAでの提供を意味しません。心理療法との関係は心理療法・支援アプローチ一覧で確認できます。

参考文献

方法論、主な尺度の開発・検証研究、および専門的な学習のための学術書を示します。原版の検証論文は、すべての日本語版・改訂版の性能を示すものではありません。

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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