心理学の歴史|主要人物・学派・日本の心理職まで年表で解説

心理学の歴史|主要人物・学派・日本の心理職まで年表で解説

心理学の歴史は、有名な人物が新しい学派を作り、古い学派を順番に置き換えた物語だけではありません。何を心理学の対象とし、誰を調べ、どの手続きを証拠と認めてきたかという歴史でもあります。現在の研究や支援を理解するには、理論の系譜と、研究・教育・職業の制度化の両方を見る必要があります。[1,2]

「心理学の誕生」を一つの日付に押し込めない

心に関する問いは近代以前からありましたが、19世紀には感覚や反応を測る実験が発展し、研究室での実験、大学教育、専門誌などの形で心理学が組織されていきます。1879年のヴントのライプツィヒでの活動は、近代実験心理学の節目としてよく挙げられます。ただし、一人の研究者がそれ以前の知識をゼロから作ったという意味ではありません。[1,2]

歴史研究では、実験室で観察する人と観察される人の役割、個人の詳しい記述と集団の平均の扱い、どの方法が学術的に評価されるかも対象になります。現在は当然に見える研究手続きにも、成立した社会的・制度的な背景があります。[2]

年表で見る、問いと方法の広がり

次の表は重なり合う流れを概観するためのものです。時代区分は厳密な開始・終了年を示していません。人物名は例であり、全世界の心理学者や研究活動を列挙した一覧ではありません。

重なり合う心理学史の流れ
時期 問い・方法 人物・動向 学ぶときの論点
19世紀半ば〜後半 感覚・知覚・反応の測定が、哲学的な問いと生理学的な実験を結ぶ。 フェヒナー、ヴント、エビングハウスなど。 物理的刺激と主観的経験を、どの手順で比較できるか。[1]
1879年を一つの節目として ライプツィヒでのヴントの実験心理学の活動が、研究・教育の制度化を象徴する。 ヴント。 1879年は慣用的な起点であり、それ以前の研究を消す創立神話ではない。[1,2]
19世紀末〜20世紀初頭 意識の働き、機能、個人差、臨床での理解など、異なる課題が展開する。 ジェームズ、ビネ、フロイトなど。 個人差の測定、一般的機構の説明、臨床事例の解釈は同じ作業ではない。[1]
20世紀前半 行動を客観的に研究する立場と、知覚の全体的な組織化を重視する立場が発展する。 パブロフ、ワトソン、スキナー/ウェルトハイマー、ケーラーなど。 行動主義にも複数の立場があり、ゲシュタルトを含む他の研究が一斉に消えたわけではない。[1,3]
20世紀前半〜中頃 発達、言語、社会、対人関係を、実験・観察・臨床などから研究する。 ピアジェ、ヴィゴツキー、レヴィン、ボウルビィなど。 発達や対人経験を説明する理論の歴史的影響と、個々の予測の支持を区別する。[1]
20世紀中頃 主観的経験、成長、自己理解、相談関係を重視する実践が広がる。 ロジャーズ、マズローなど。 人を尊重する価値と、介入の有効性を検証する問いは両立し得るが、同義ではない。[1]
1950〜1970年代以降 注意、記憶、言語、推論を情報処理としてモデル化し、実験で比較する研究が広がる。 認知心理学の研究者、臨床ではベックなど。 認知研究は行動の測定を捨てたのではなく、観察から検討する理論の範囲を広げた。[1]
20世紀後半〜現在 神経科学、文化研究、健康・教育・産業などと往復し、複数の水準を結ぶ。 多分野の研究者と実践者。 一つの水準を、他のすべての説明に置き換えない。[1,2]
21世紀 追試、公開された手順・データ、分析の事前計画、標本の代表性が改めて問われる。 共同追試・オープンサイエンスの研究群。 新しい方法を使ったというだけで正しさは保証されず、透明性と推論の質を点検する。[7]

学派名と、検証できる主張を分ける

行動主義は、単なる「報酬で人を動かす方法」ではない

ワトソンの1913年の論文は、意識の内観に依存せず、行動を実験的に研究する立場を明確にしました。[3] これは歴史的な研究方針の提案です。現代の学習研究の全体や、すべての行動療法の手続きを、この論文一つで代表させることはできません。また、当時の研究が現在の倫理的基準を満たすと仮定してはいけません。

精神分析や人間性心理学の影響と、有効性の証拠は同じではない

個人の体験の意味や相談関係を重視する考え方は、支援の言葉や実践に大きな影響を与えてきました。[1] しかし、歴史上有名であることは、特定の対象に対する介入効果を保証しません。事例から得た理解、一般的な理論の検証、無作為比較試験で測る介入の成果は、異なる種類の問いです。

「認知革命」は、頭の中を直接見られるようになった出来事ではない

認知心理学は、反応や誤りなどから、注意・記憶・推論についてのモデルを比較します。[1] 内部過程を説明に用いる場合も、どの観察によって理論が支持され、どの結果なら修正が必要かを示すことが欠かせません。後の神経科学との接続も、心理学的な問いや行動の測定を不要にしたわけではありません。

日本の心理学:研究の導入と、専門職の成立を分けて読む

日本への近代心理学の導入には、翻訳、留学、大学での教育と研究室の整備が関わりました。元良勇次郎と松本亦太郎による東京帝国大学での1903年の実験室設置は、その制度化の節目の一つです。[4,5] 日本心理学会は1927年に正式に設立されましたが、それ以前にも組織化の準備や刊行活動がありました。[4]

一方、心理支援職の資格制度は、心理学研究の成立とは別の時間軸で考える必要があります。公認心理師法は2015年に成立し、2017年に施行、2018年に第1回国家試験が行われ、初の登録者は2019年に誕生しました。[6,8] 研究分野、雇用上の職名、資格名、特定の心理療法の訓練歴は互いに関係しますが、同一ではありません。

再現性の議論も、心理学史の続きである

2015年のOpen Science Collaborationは、選定した100研究の共同追試を報告しました。[7] この結果を「心理学のすべてが信用できない」あるいは「再現しなければ元研究は必ず不正」と読み替えるのは不適切です。手続き、標本、効果の大きさ、推定の不確実性を比較し、どこまで同じ現象を測っているかを吟味する必要があります。

歴史を学ぶ意義は、過去の研究を現在の常識で単純に裁くことでも、古典を権威として守ることでもありません。理論が答えようとした問いを理解した上で、現在の研究によって支持される部分、修正された部分、まだ決着しない部分を分けることです。原著、学術的な歴史研究、現在の総説を往復すると、人物の名前と研究手続きを結びつけて学べます。

関連資料:心理学の分野一覧、心理療法一覧。

参考・引用文献

  1. Spielman, R. M., Jenkins, W. J., & Lovett, M. D. (2020). Psychology 2e. OpenStax. Section1.2: History of Psychology.
  2. Danziger, K. (1990). Constructing the Subject: Historical Origins of Psychological Research. Cambridge University Press. https://doi.org/10.1017/CBO9780511524059
  3. Watson, J. B. (1913). Psychology as the behaviorist views it. Psychological Review, 20(2), 158–177. https://doi.org/10.1037/h0074428
  4. Nishikawa, Y. (2005). An overview of the history of psychology in Japan and the background to the development of the Japanese Psychological Association. Japanese Psychological Research, 47(2), 63–72. https://doi.org/10.1111/j.1468-5884.2005.00274.x
  5. Sato, T. (2005). The history of psychology in Japan. Japanese Psychological Research, 47(2), 47–51. https://doi.org/10.1111/j.1468-5884.2005.00272.x
  6. 花村温子. (2024). 誕生5年目を迎える公認心理師,誕生までと5年目の現在,そしてこれから. 総合病院精神医学,36(4),293–299. https://doi.org/10.11258/jjghp.36.293
  7. Open Science Collaboration. (2015). Estimating the reproducibility of psychological science. Science,349(6251),aac4716. https://doi.org/10.1126/science.aac4716
  8. 金井篤子. (2018). 産業領域における精神医学と心理学の協働. 精神神経学雑誌, 120(10), 935–941.

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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