完璧にしようとして仕事が終わらないとき|着手・修正・提出を整理する

資料を何度も直しているのに、提出できない。準備を整えようとするほど、取りかかるのが遅くなる。「もう少し力を抜けば」と言われても、どこを緩めてよいか分からないことがあります。仕事を大切にする気持ちを残しながら、何が終わりを難しくしているのかを整理します。

完璧主義とは|高い基準を持つこととの違い

完璧主義には、よい仕事を目指す面と、ミスや不十分さが気になり続ける面があります。高い目標を持つことだけで、問題があるとは決まりません。自分に求める基準を、目的や時間、体調に合わせて動かせるか。達成しても「もっとできたはず」と終えられず、休息や生活が削られていないかが、相談するときの手がかりになります。

臨床心理学の一つの理論では、つらさを伴う完璧主義を、厳しい基準を追い求めることに自分の価値の判断が偏り、悪影響があっても追求が続く状態として捉えています。[1] 「今回の資料に修正点がある」が「自分には価値がない」に広がるなら、仕事の質の話に加え、自分をどう評価しているかも扱えます。この記事だけで病気や性格を判定することはできません。

43研究、計9,838人をまとめた分析では、失敗への心配や自己批判に関わる側面は、燃え尽きの強さと関連していました。高い基準を目指す側面は同じ結果ではなく、仕事・学業・スポーツという場面によっても違いがありました。[2] 関連を調べた研究から、「あなたが完璧主義だから疲れた」と原因を断定することはできません。

同じ資料作成でも、止まる場所によって考えることが違う

ここからは、説明用の例として「金曜の会議で使う、社内向けの短い資料」を考えます。白紙のまま動けないときと、ほぼ完成しているのに出せないときでは、必要な助けも違います。

資料作成のどこで止まるかを整理する例。自分を採点する表ではありません。
止まりやすい場面 自分に起きていること 仕事上、確かめたいこと
着手する前 全体が見えないと書き始められない 誰が何を決めるための資料か。途中の構成を確認してもらえるか
修正している間 表現や配置を直すたび、別の箇所が気になる 判断に必要な修正と、見栄えの修正の優先順位はどうか
提出する直前 必要な確認後も、出す決断ができない 承認の手順と期限は何か。提出後の質問や修正にはどう対応するか

着手できないなら、完成形より先に目的を確かめる

この資料が「三つの案から一つを選ぶため」なら、まず案の違いを伝えることが中心です。全部を調べ終えるまで待つ前に、目的や必要な項目、途中で確認できる時点を、業務の指示・承認を担う人と確かめる方法があります。「構成の段階で一度確認できますか」と聞ければ、完成品だけで判断される怖さを少し分けて扱えます。

ただし、何を求められているか不明なまま作業を任されているなら、着手の遅さを自分の性格だけで説明しなくてよいのです。情報や指示が足りない問題と、分かっていても失敗が怖い問題は、別に相談できます。

修正が終わらないなら、直す目的が変わっていないかを見る

数字の転記ミスを直すことと、「もっとよい言い方があるはず」と同じ一文を直し続けることは、仕事への役割が違います。先ほどの資料なら、今の修正で会議の判断が変わるのか、それとも一度安心してもすぐ別の不安が出てくるのかを考えます。

必要な確認を省くことが目標ではありません。安全、法令、金銭などに関わる確認は、決められた手順を優先します。「どれも同じくらい大事で選べない」と感じるなら、それ自体を相談へ持ち込めます。自分だけで確認回数を決めたり、重要な手順を減らしたりする必要はありません。

提出が怖いなら、出した後の見通しも確かめる

構成と必要な数値を確認できても、「質問されたら、無能だと思われる」と送信できないことがあります。この場合、さらに体裁を整えても、怖さの中心は残るかもしれません。質問を受けること、分からない点を持ち帰ること、提出後に修正することが、その職場でどう扱われるのかを確かめます。

実際に小さなミスで人格を否定されたり、指示が何度も変わったりしているなら、その怖さには現実の理由があります。単に「失敗を気にしない練習」で済ませず、職場の相談窓口などを通した環境への対応も考えます。

工夫を試しても難しいときは、どこで止まったかを相談する

目的を聞く、修正の優先順位を決める、提出の手順を確かめる。全部を一度に行う必要はありません。今いちばん止まっている場面を一つ選べれば十分です。相談では、説明用の言い方として「構成は確認してもらえました。でも提出前になると何度も読み返し、帰宅後も頭から離れません」と伝えられます。

その後は、提出できたかだけでなく、かかった時間、疲れ、残業や眠りへの影響も振り返ります。締切には間に合っていても、毎回眠る時間を削っているなら、その負担は残っています。できなかった結果も、さらに頑張るための採点ではなく、進め方を考え直す情報です。

カウンセリングでは、何を予想して怖くなるのか、確認や先延ばしがその後にどう影響するかを一緒に整理できます。認知行動療法(CBT)では、こうした考えと行動のつながりを扱います。完璧主義を対象にした初期の小規模な無作為化比較試験では、20人をすぐ治療する群と待機群に分け、CBT後に完璧主義の指標の改善が報告されました。[3] 待機群と比べた特定の治療の研究であり、ほかの治療より優れることや、一般的なオンライン相談すべての効果、自分も同じ期間で変われることを示すものではありません。

自分の工夫と、職場・医療への相談を分けてよい

仕事量が多すぎる、基準が曖昧、断る権限がないといった問題は、考え方だけでは変えられません。作業の優先順位や承認方法は業務を担当する管理者へ、業務量・労働時間などの調整は人事労務を含む職場の相談窓口へ、健康面からの就業上の配慮は産業医・保健師等の産業保健スタッフへ、というように相談の目的を分けられます。[4]

直属の上司が怖さの原因であるなど、直接話すことが難しい場合は、無理にその人へ打ち明けなくてかまいません。別の社内窓口や社外の相談先を検討し、相談内容が誰にどこまで共有されるかを先に確かめます。窓口の体制や対応範囲は職場によって異なります。

眠れない、食事が取れない、落ち込みや強い不安が続くなど、体調や生活に支障がある場合は、医療機関へ相談できます。[5] 心理相談を受けていることは、受診を待つ理由にはなりません。

ALVARAの個人向け相談は18歳以上が対象です。仕事で起きていることや、終えられない怖さ、休む罪悪感を整理することから相談できます。診断や薬の処方、職場の勤務条件の決定を行う場ではありません。利用方法や対応できる内容は、オンラインカウンセリングの案内と申込み時の案内で確認してください。

一つ持ち帰るなら
「私は完璧主義だから」とまとめる前に、着手・修正・提出のどこがいちばん難しいかを一つ言葉にしてみます。相談では、その場面で必要な仕事の条件と、自分が感じている怖さを分けて考えられます。

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参考・引用文献

  1. Shafran, R., Cooper, Z., & Fairburn, C. G. (2002). Clinical perfectionism: a cognitive-behavioural analysis. Behaviour Research and Therapy, 40(7), 773–791. DOI: 10.1016/S0005-7967(01)00059-6.
  2. Hill, A. P., & Curran, T. (2016). Multidimensional perfectionism and burnout: a meta-analysis. Personality and Social Psychology Review, 20(3), 269–288. DOI: 10.1177/1088868315596286.
  3. Riley, C., Lee, M., Cooper, Z., Fairburn, C. G., & Shafran, R. (2007). A randomised controlled trial of cognitive-behaviour therapy for clinical perfectionism: a preliminary study. Behaviour Research and Therapy, 45(9), 2221–2231. DOI: 10.1016/j.brat.2006.12.003.
  4. 厚生労働省「こころの耳」:社内相談窓口設置までの流れとポイント。
  5. 国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」:こころの病気について理解を深めよう。

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。