確認を何度も繰り返してしまうとき

確かめたはずなのに、すぐ「本当に大丈夫だった?」と戻りたくなることがあります。確認を繰り返して時間や気力が削られているなら、必要な安全確認を守りながら、その困り方を相談できます。

「何回なら問題か」だけでは分かりません

宛先や添付ファイル、火の元、機械の状態など、確認は安全や仕事の正確さを支える大切な行動です。二重確認が必要な仕事もあります。回数が多いから無意味、一度見れば十分、と一律には決められません。何を扱い、どんな手順が必要で、実際に不備や新しい情報があったのかによって意味が変わります。

一方、手順に沿って確かめても終われず、同じ所へ戻る、外出や送信が大きく遅れる、確認した場面を頭の中で長く再生するなど、生活に負担が出ることがあります。繰り返す確認は強迫症でみられる行動の一つですが、それだけで病名は決まりません。苦痛、やめにくさ、暮らしへの影響も含めて医療者が確かめます。[1]

職場の手順自体が分かりにくいなら、まず上司や業務の安全管理を担当する人へ、必要な工程を確かめられます。自分や家族だけで「これは不合理な確認だ」と決めて、安全のための工程を省く話ではありません。

送信を確かめると安心するのに、また疑いたくなる

説明用に、仕事のメールを送った場面を考えます。決められた宛先・添付の確認をして送信した後、「違う資料だったかも」と思い、送信済みの画面を開きます。内容を見ると一度ほっとしますが、席へ戻ると「さっき本当に添付まで見た?」と、確認そのものを疑い始めます。

この場面では、資料の新しい不備が見つかったから見直すことと、「確かに見た」という感覚を得るために戻ることが混ざっています。確認で不安が一時的に下がっても、その安心が長く続かないことがあります。[1] 外から「もう見たでしょう」と言われても、本人の中の確かさが戻るとは限りません。

画面を閉じた後にも、送信した瞬間を思い返す、同僚へ何度も「合っていましたよね」と聞くなど、確かめ方が変わる場合があります。目に見える回数だけでは、どれほど疲れているかは分かりません。先の出来事への心配が広く続くときの考え方は、不安が頭から離れないときでも説明しています。

記憶の正確さと、「覚えている自信」は別です

van den HoutとKindtの実験では、健康な参加者が画面上のコンロを繰り返し確認すると、その確認についての記憶の自信や鮮明さが低下しました。この実験では、実際に何を確認したかという記憶の正確さは低下しませんでした。[2] 「覚えていない感じがする」ことと、情報が実際に記憶されていないことを分けて考える手がかりです。

ただし、これで「確認する人の記憶は必ず正しい」と言えるわけではありません。後の28実験をまとめた解析では、自信などの低下に加え、正確さにも小さな低下が報告されています。[3] 実験課題で得た平均的な結果であり、あなたの記憶能力や、実務で何回確認すべきかを判定する研究ではありません。

大切なのは、不安が残るたびに確認を足せば、自信も必ず積み上がるとは限らないという点です。先ほどのメールでも、資料の内容を確かめることと、確信を取り戻そうと同じ画面へ戻り続けることを、相談の中で分けて扱えます。今の困り方を、単なる不注意や気持ちの弱さにまとめなくてよいのです。

確認を減らす計画より、困っている流れを伝える

最初の相談では、「何回しました」だけでなく、何が気になって確認し、直後と少し後でどう変わるかを、一場面で話せます。メールの例なら、「送信済みを見ると一度安心しますが、すぐ見落としが気になります。頭の中でも確かめ続け、次の仕事へ移れません」と伝えられます。

仕事上の手順と、自分が追加している確認が分からなくなっている場合は、そのまま話してかまいません。業務の担当者には必要な安全手順を、医療機関の医師や心理職には不安や確認の繰り返しを相談し、必要なら本人への説明と同意のもとで、仕事の事情も踏まえて考えます。

相談のために、回数や証拠を正確に集め切る必要はありません。詳しく記録しようとすることが新たな確認になって苦しいなら、それも伝える情報です。遅刻が増えた、食事や眠りに響く、避ける仕事が増えたといった生活の変化も、助けを考える手がかりになります。

そばにいる人の支えと、専門治療は役割が違います

家族や同僚は、疲れを聞く、受診の予約や付き添いを手伝う、業務の決まった手順を説明するなどの支えになれます。一方、毎回「絶対に間違っていない」と保証し続ける役目を一人で背負うと、支える側の生活も苦しくなることがあります。

NICEの指針では、家族等が繰り返す確認や安心を求める行動に関わっている場合、その関わりは治療計画の中で、本人への配慮と支えを伴って見直すとしています。[4] これは、家族が突然返事をしなくなったり、本人を責めて我慢させたりすることとは違います。「確認に付き合ううちに、二人とも眠れなくなっています」と、家族側の負担も治療を担当する専門家へ伝えられます。

強迫症が疑われる場合には、対応する専門家へ

英国NICEの成人向け指針は、生活への影響や本人の希望等に応じて、曝露反応妨害法(ERP)を含む認知行動療法や薬物療法などを検討します。[4] 国内の成人の診療ガイドラインも、ERPを基礎とする行動療法、認知療法、認知行動療法を選択肢として提案しています。[5] 治療名だけで決めず、強迫症の診療・支援経験がある精神科等で、今の状態と選択肢の説明を受けられます。

ERPでは、不安が起きる場面との向き合い方と、安心を得るための強迫的な確認を繰り返さずにすむことを、専門家と計画して扱います。実際の安全手順を保ち、扱う場面と負担を相談しながら進めます。この記事から、自分で確認を禁止する課題や、仕事の安全手順を抜いて不安に耐える課題を始める必要はありません。認知行動療法の概要や曝露療法の説明の記事は、専門家から説明を受けるときの参考にできます。

記憶や体調に新しい変化がある、急に確認が増えた、薬を変えた時期と重なるなどの場合も、医師へ伝えてください。他の病気や状態が関わっていないかを含めて診察することと、不安への心理的な支援は分けて考えます。[1]

病名が分からなくても、相談を始められます

ALVARAでは18歳以上の方が、確認を繰り返して疲れること、周りへの申し訳なさ、相談や受診への迷いを心理相談で話せます。診断や薬の処方は行いません。強迫症の専門治療が必要な場合は、その治療に対応する医療機関や専門家につながることも含めて考えます。

「確認を全てやめたい」と言えなくても、「仕事を終えた後まで確かめ続けてしまい、休める時間が欲しい」と話せます。カウンセリングを受ける目安も参考に、今の暮らしで困っていることから伝えられます。

参考・引用文献

  1. National Institute of Mental Health.(2023)Obsessive-Compulsive Disorder: When Unwanted Thoughts or Repetitive Behaviors Take Over. NIH Publication No. 23-MH-4676.
  2. van den Hout, M., & Kindt, M.(2003)Repeated checking causes memory distrust. Behaviour Research and Therapy, 41(3), 301–316. DOI: 10.1016/S0005-7967(02)00012-8.
  3. van den Hout, M. A., van Dis, E. A. M., van Woudenberg, C., & van de Groep, I. H.(2019)OCD-like checking in the lab: A meta-analysis and improvement of an experimental paradigm. Journal of Obsessive-Compulsive and Related Disorders, 20, 39–49. DOI: 10.1016/j.jocrd.2017.11.006.
  4. National Institute for Health and Care Excellence.(2005)Obsessive-compulsive disorder and body dysmorphic disorder: treatment. Clinical guideline CG31. Recommendations 1.5.1.1–1.5.1.4, 1.5.2.1, 1.5.2.9.
  5. 日本不安症学会・日本神経精神薬理学会(2025)強迫症の診療ガイドライン 第1版. 不安症研究, 17(1), 112–187. DOI: 10.14389/jsad.17.1_112.

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。