曝露療法(エクスポージャー)は、恐怖や不安に関わる対象、状況、記憶、身体感覚への過度な回避を、本人と合意した計画の下で扱う行動的介入です。特定の恐怖症、パニック症、強迫症、PTSDなどで、疾患と心理療法モデルに応じた異なる形が用いられます。「嫌なことに慣れるまで我慢する」という説明だけでは、目的、学習、安全の条件を十分に表せません。[1][3]
曝露の対象と形式は何によって違うか
現実場面で行う曝露、記憶や場面をイメージする曝露、身体感覚を扱う曝露などがあります。強迫症では、恐怖を引き起こす手がかりと、苦痛を下げるための儀式的な行動を合わせて理解する必要があります。PTSDのPEのように、固有の介入パッケージに組み込まれたモデルもあります。[1][3]
形式は医学的な分類名だけで機械的に決まりません。何を予測して恐れ、どのように回避し、それが生活をどう狭めているかを評価します。同じ外出の困難でも、パニック発作への恐れ、他者からの評価、体験を思い出させる手がかりでは、検討する内容が異なります。
いずれも、実際の危険を避ける行動を全てやめさせる方法ではありません。現在の暴力、身体疾患に関わる危険、職務上必要な安全対策などを評価し、介入で扱う回避と区別します。本稿は自己実施の手順や、特定の曝露課題を指示するものではありません。
馴化と抑制学習という説明
従来、曝露は反復によって恐怖が低下する「馴化」を用いて説明されてきました。近年の抑制学習の説明では、危険を予測する既存の学習が単純に消えるのでなく、それと競合する新しい学習が形成され、その後に想起されることを重視します。Craskeらの2014年のレビューは、期待と実際の経験のずれ、文脈、記憶の想起などを臨床へ結びつけました。[1]
この考え方からは、面接中に不安が下がったかだけを成功の基準にしないという含意が得られます。何が起こると予測していたか、実際に何が起きたか、その違いから何を学んだかを検討します。不安が残っていても、予測していた結果が起きない経験や、対処可能だという理解が重要になる場合があります。
ただし、抑制学習モデルに基づく各工夫が、あらゆる疾患で標準的な方法より優れると、一つの研究で証明されたわけではありません。動物実験、実験室の恐怖条件づけ、臨床試験の知見を分け、理論からの提案と、比較試験で検証された効果を区別します。[1][2]
なぜ恐怖は戻ることがあるのか
消去学習の研究では、一度恐怖が低下しても、時間の経過、場所の変化、関連する出来事などによって恐怖が再び生じることが知られています。Vervlietらのレビューは、消去した学習の長期的な想起の難しさと、恐怖の復帰を検討しています。これは、以前の介入が全く無意味だったという意味ではありません。[2]
臨床的には、ある場面で得た理解を別の生活場面でも使えるか、再び不安が高まったとき何を思い出し、どう支援を求めるかが課題になります。一つの場所で一度落ち着いたことだけで、全ての場面へ学習が広がったと判断しないことが必要です。
一方、実験室の条件づけを、複雑な生活史を持つ人の恐怖の全てへ当てはめることもできません。人の不安には、言語、信念、対人関係、社会環境などが関わります。基礎研究のモデルは現象を考える道具であり、本人の経験を単純化する理由にはなりません。
安全行動は名称でなく機能を評価する
苦痛や恐れている結果を防ぐための行動が、新しい学習を妨げる可能性は議論されています。ただし、どの行動も一律に排除すべきとは限りません。その行動を使うことで何を学び、使わない場合に何が起こると本人が理解するか、支援への参加を可能にしているかも検討します。[1]
医療的に必要な対処や現実の安全確保まで「不安への逃げ」として取り上げてはいけません。支援者が行動を制限する前に、身体状態や危険、本人の予測を評価し、どの行動をどんな理由で調整するかを説明します。本人が判断に参加できることが重要です。
段階的な取り組みか、より集中的な介入かといった形式も、本人の状態、希望、心理療法モデル、支援体制によって異なります。「難しい課題にすぐ進むほどよい」「不安が消えるまで同じことを必ず続ける」といった一律の規則では扱えません。
効果を評価する際の注意
曝露を含む認知行動療法には研究蓄積がありますが、技法名全体に一つの改善率を与えることはできません。対象となる疾患、介入の構成、比較群、測定尺度、評価時点によって結果の意味が変わります。不安症、強迫症、PTSDは現在の分類体系でも区別され、それぞれの介入研究に基づいて判断する必要があります。[3]
経過中は、課題中の苦痛だけでなく、症状、回避、睡眠、仕事や学業、対人生活、望まない反応を追跡します。短時間の不快感と持続的な悪化を区別し、本人の希望を確認して計画を調整します。不快感があるという理由だけで介入が有害と決めることも、苦痛を訴えても続けさせることも適切ではありません。
曝露を提案されたら、扱う対象と理由、現在の安全の評価、予想される負担、途中での相談方法、セラピストの訓練を確認できます。PTSDに対するPEは、この広い技法群の中に位置づく固有の心理療法モデルです。
参考文献
- Craske MG, Treanor M, Conway CC, Zbozinek T, Vervliet B. (2014). Maximizing exposure therapy: an inhibitory learning approach. Behaviour Research and Therapy, 58, 10–23. 論文・書誌情報(DOI: 10.1016/j.brat.2014.04.006)
- Vervliet B, Craske MG, Hermans D. (2013). Fear extinction and relapse: state of the art. Annual Review of Clinical Psychology, 9, 215–248. 論文・書誌情報(DOI: 10.1146/annurev-clinpsy-050212-185542)
- Craske MG, Stein MB, Eley TC, et al. (2017). Anxiety disorders. Nature Reviews Disease Primers, 3, 17024. 論文・書誌情報(DOI: 10.1038/nrdp.2017.24)
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このコラムについて
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