自分や周囲の現実感が薄いと感じるとき|体験を医療・心理相談で伝える

自分や周囲の現実感が薄いと感じるときは、うまく説明できなくても医療で相談できます。「ストレスのせい」「解離に違いない」と先に決めず、身体の状態や使用薬も含めて確かめます。急な意識の異常や強い身体症状がある場合は、通常の心理相談を待たず緊急の医療を優先してください。

いま急に起きた変化は、まず安全と医療を

意識がない、呼びかけへの反応がおかしい、急に片側の手足に力が入らないなどの場合は、救急の対応が必要です。消防庁は、こうした急な症状を、ためらわず救急車を呼んでほしい症状として案内しています。119番へ連絡してください。[1] 現実感の問題かどうかを自分で見分けようとして待つ必要はありません。

初めての変化や、以前と違う出方、頭部のけがなどの後に起きた場合も、医療へ相談します。神経の症状を含む身体の変化、薬の使用や変更の時期、飲酒やほかの物質の使用などは、言いにくくても診察で伝える情報です。必要な検査や診療科は、医師が経過と状態を見て判断します。

すでに不安や解離に関する診断を受けた人でも、新しい急変まで同じ原因と決めないことが大切です。何度か経験があることと、今回の安全が確かめられていることは同じではありません。症状の変化や迷いがある場合、通院先や緊急の医療に確認します。

「現実感が薄い」は、どんな体験を指すのか

自分を外から眺めているように感じる、周囲の人や物が遠く夢のように見える、といった言葉で体験を伝える人がいます。英国NHSも、自己から距離があるような感覚と、周囲が非現実的に感じられる感覚を分けて説明しています。[2] この記事は、それらの病気かどうかを判定するためのものではありません。

「変なことを言っていると思われそう」と、説明をためらうかもしれません。しかし、説明が難しい体験であることも診察や心理相談に伝えられます。「見えている物は分かるのに、遠く感じる」「自分の声なのに、自分のことではないように感じる」のように、自分の言葉を使ってかまいません。

同じ表現でも、背景や必要な対応は人によって異なります。NHSも、症状に別の病気が関わっていないか診察や検査で確かめることを説明しています。[2] ネットの記事に似た表現があるだけで、特定の診断や過去のトラウマの存在を確定しないことが重要です。

診察には、原因の結論より経過を持っていく

ここからは説明用の例です。仕事から帰った夜に、部屋が遠く感じられ、「このまま戻らないのでは」と怖くなった場面を考えます。医師には「解離だと思います」と結論だけを伝えるより、いつ始まり、どのくらい続き、ほかに何が起き、生活にどう影響したかを話せます。

「先週から何度かあります」「帰りの運転が怖くなりました」「薬を変えた時期と近いですが、関係があるか分かりません」と、分かる事実と分からない部分を分けます。すべてを正確に記録できなくても、受診を待つ必要はありません。服用中の薬や市販薬が分かるものを用意する方法もあります。

成人の離人症の臨床研究では、強いストレスや不安などのほか、物質の使用を含む多様なきっかけが報告されています。[3] ただし、特定の診断を受けた研究参加者の結果で、今読んでいる方の原因が決まるわけではありません。「思い当たるストレスがないから受診できない」と考えず、身体を含めた評価から相談できます。

その間の暮らしは、症状の検証より安全を優先する

現実感を確かめるため、危険な刺激を加えたり、怖さを再現したりする必要はありません。運転や高所での作業などで安全を保てないと感じる場合は、無理に続けず、医療者へ活動の可否や対応を確かめます。職場での勤務上の調整が必要なら、主治医、産業医・産業保健、人事などの正式な窓口へ相談します。

説明例の夜なら、重要な判断や危険のある作業を急がず、必要に応じて受診の連絡や移動の助けを頼むことが考えられます。家族や友人には、病名の判断ではなく、「今は一人で移動するのが怖いので、受診の連絡を手伝ってほしい」と具体的に頼めます。

身体に集中する、目を閉じる、強い冷たさや音を使うなどの方法が、すべての人に合うわけではありません。この記事では感覚を戻す練習の手順を課しません。自己流の工夫で苦しさが増えた場合は中断し、その反応を専門家へ伝えます。薬や飲酒で調整しようとせず、処方の変更は医師へ確認してください。

心理相談では、体験への怖さと生活の負担を話せる

医療での確認と並べて、「また起きるのが怖くて外出できない」「誰にも説明できず孤独」「症状を調べ続けて眠れない」といった負担を心理相談で話せます。心理相談だけで身体の原因を除外したり、診断を確定したりすることはできません。通院中なら、連携が必要な場合の共有範囲や同意を担当者と確かめます。

過去のつらい体験を話すかどうかは、その時点の負担と相談の目的を踏まえて進めます。原因を見つけるために、一人で記憶を探したり、思い出せない部分を埋めたりする必要はありません。「詳しく話すと遠くなる感じがあるので、今日は生活の話からしたい」と伝えることもできます。

最初の受診で十分に伝わらなかったなら、説明できなかった場面を次回に追加できます。「外見上は普通に会話できても、帰宅後は怖くて動けない」といった違いも情報になります。周囲から平気に見えることだけで、自分の困り方を取り下げる必要はありません。

診察や相談に持っていく一文は、「自分や周囲が遠く感じられます。始まったのはこの頃で、いま困るのはこの場面です」です。体験を説明する言葉と、必要な助けを伝える言葉があれば、病名を自分で決めなくても次の確認へ進めます。

関連する内容は、トラウマとPTSDの違い、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)とは、突然の動悸や息苦しさが怖いとき|受診と心理相談の入口でも読めます。

参考・引用文献

  1. 消防庁「救急車を上手に使いましょう」(2025年12月).
  2. NHS. Dissociative disorders.
  3. Simeon, D., et al. (2003). Feeling unreal: a depersonalization disorder update of 117 cases. Journal of Clinical Psychiatry, 64, 990–997. doi:10.4088/jcp.v64n0903.

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。