検査で大きな異常がないと言われても、体のつらさが続くとき

検査で大きな異常がないと言われた後も、症状が続くことや生活に支障があることを医師へ相談できます。その結果だけで、気のせい、性格の問題、心理的な原因だと決まるものではありません。体の評価を受けながら、不安や日常の負担への支えも使えます。

「異常がない」と、つらさがないことは別

検査結果を聞いて安心する一方、「では、このつらさを何と説明すればよいのか」と困ることがあります。周囲から「悪い病気ではなくてよかった」と言われ、もう訴えてはいけない気がするかもしれません。見つかった異常の大きさと、本人が感じる症状や生活の難しさは同じ情報ではありません。

NHSは、医療上の説明が十分に見つからない身体症状についても、症状は実際にあり、日常に影響しうると説明しています。[1] ただし、これは検査結果を見ただけで自分の状態を分類するための名前ではありません。「原因がまだはっきりしない」ことと、「心理的な原因だと確認された」ことを分けて考えます。

痛みについては、国際疼痛学会の定義に添えた説明も、身体・心理・社会の側面が関わる個人の経験であり、本人の訴えを尊重するとしています。[2] 気持ちを含めて考えることは、身体の問題を否定することではありません。逆に、痛みの枠組みを、あらゆる症状の仕組みの説明にそのまま広げることもできません。

検査で何が分かり、今後何を見ていくかを聞く

説明用の例です。疲労とめまいで受診し、血液検査に大きな異常はないと言われた人がいます。病気を探し直すべきか、何もしないでよいのかの二択になり、帰宅してから心配が増えました。この場合、「今回の検査では何が確認でき、今の症状をどう考えますか」と聞くことができます。

検査ごとに調べる目的や分かる範囲があり、今後の診察の必要性は症状や経過と合わせて判断します。本人が結果のすべてを自力で解釈する必要はありません。「原因の候補はどこまで考えられていますか」「薬や別の体調の影響はありますか」「次はいつ、何を確認しますか」と、説明を生活の見通しへつなげる質問ができます。[1]

納得できないまま受診を重ねても、前の検査との関係が分からず不安が残る場合があります。受けた検査や使っている薬、他院で受けた説明を分かる範囲で共有し、一つの見通しとして説明してもらう方法を考えます。別の医師の意見を聞きたいときも、何を確認したいのかを伝えられます。

新しい変化を、以前の結果だけで片づけない

前回より症状が強くなった、新しい症状が加わった、食事や仕事が難しくなったといった変化は、改めて医師へ伝える情報です。「前に異常がなかったから」と再相談を控える必要はありません。次の受診まで待てるか迷うときも、医療機関へ今の状態を連絡して確認できます。

言葉が出せないほどの強い息苦しさ、胸の強い圧迫感、急な混乱などがある場合は、通常の心理相談を待たず救急医療へつないでください。[3] ここで個別の緊急性を判定することはできません。「続いている症状」と「今日新しく起きた変化」を区別して知らせます。

受診時には、症状の有無だけでなく、起きた時刻、続き方、増減する条件、日常でできなくなったこと、薬等を伝えられます。[1] 詳細な記録の完成を待たなくてもかまいません。診察で何を見ればよいか決まれば、必要な範囲のメモにできます。症状を一日中監視する新しい負担にしなくてよいのです。

原因の説明と、今日を過ごすための助けを両方持つ

先ほどの例の人が「めまいをなくす」だけを目標にすると、何もできない気がするかもしれません。しかし、通勤で立ち続けるのが難しい、買い物の後は夕食を作れない、症状が起きたとき一人なのが怖いなど、支援を考えられる部分は複数あります。症状の原因が全部分かるまで、暮らしの相談を止める必要はありません。

何をどこまで動いてよいかは、身体の状態に合う助言を医師等へ確認します。自分を試すために無理な運動や我慢を増やすのでも、今後すべての活動を諦めるのでもなく、現状で難しい条件を具体的にします。家事なら一つの用事を人に頼む、仕事なら勤務条件を正式な窓口と相談するなど、対応する人を分けられます。

「今は座って食事を取れますが、立って準備を続けるのは難しいです」のように、できることと難しいことを並べると、全部できるか何もできないかの説明から離れられます。日によって違うことも、情報として話せます。波があることを、つらさが本当かを判定する材料にしないことが大切です。

心理相談を使うことは、身体症状を否定することではない

症状が続くと、「また起きたら」と予定を立てにくくなったり、理解されない怒りや心配で疲れたりすることがあります。心理相談では、その負担や症状への応じ方を扱えます。NHSも、症状、心配、気持ち、対処の関係を理解する対話の支援を紹介しています。[1] ただし、心理相談を受ければ症状が必ず消えるという説明ではありません。

「気持ちの問題だと言われそうで相談が怖いです。医療の確認は続けつつ、予定を立てられないつらさを話したい」と、相談の目的を最初に伝えられます。担当者の説明が自分の経験と違えば、その点を確かめてかまいません。心理職が検査結果から身体の診断を変更したり、薬を調整したりする役割はありません。

次の診察で一つ聞くなら、「どんな変化があれば早く戻るかと、今の暮らしで何を調整できるかを教えてください」という言葉が使えます。原因を確かめる医療と、今の生活を支える助けを同時に持つことで、分からない時間を一人で抱え続ける形を変えられます。

関連する心理コラム

参考・引用文献

  1. NHS. Medically unexplained symptoms
  2. International Association for the Study of Pain. Terminology: Pain(2020年改定定義と注記)
  3. NHS. Shortness of breath

WRITTEN BY

このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

プロフィールを見る

公開日
最終更新日

記事のつくり方

記事ごとの関連資料は本文末尾に掲載しています。情報源の選定、更新、訂正、心理療法・心理検査の掲載範囲については、記事のつくり方を確認できます。

心理コラムの記事のつくり方を見る

このコラムについて

本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。