子どもの暴言・暴力が心配なとき

子どもの暴言や暴力が心配なとき、まず守るのは、本人と家族の安全です。理由を理解することと、暴力を我慢することは別に考えます。

今、危険があるときは話し合いをしない

物を投げている、けがをしそう、家族が逃げられないなどの場合は、その場で反省させたり、力で押さえ込もうとしたりせず、安全に離れられるなら距離を取って助けを呼んでください。きょうだいなどを可能な範囲で危険から離し、差し迫った危害には警察、けがや救急が必要な場合は救急の支援を使います。

危険な物を取り返すために近づくなど、大人がさらに危険に入る必要はありません。保護者だけで止めきることを目指さず、「今、家の中で暴力があり、安全を保てない」と伝えてください。通常のカウンセリングの予約を待つ状況とは分ける必要があります。

反省の約束と、次に安全に動けることを分けます

説明用の場面です。ゲームを終えるよう言われ、子どもが家族をたたきました。翌日「二度としない」と約束しても、同じ場面で何をすればよいかが決まっていなければ、安全の備えは十分でないことがあります。

話せる状態なら「たたかれて怖かった。怒った理由は聞きたいが、たたくことは我慢できない」と、気持ちを聞くことと安全の線を伝えます。怒りが強まったら話を中断する、家族が離れられる動線を確かめる、誰へ助けを求めるかなど、実際の動きを専門家とも考えます。再び興奮が強まれば、その場で話を完成させる必要はありません。

強いやり取りが繰り返される流れも、外で見てもらえます

身体の不調、睡眠、学校での被害、言葉で伝える難しさなど、暴力の背景はさまざまです。同時に、「親の要求が強まる→子どもが強く抵抗する→どちらかが引いてその場が終わる」という流れが固定している場合もあります。誰かが意図的に家族を操っている、と決める話ではありません。

嫌なやり取りが終わることが、次にも強い反応を使いやすくする、という見方を「強制的な相互作用」と呼ぶ研究があります。幼児期からの追跡研究も、この相互作用と行動上の困難を検討しています[1]。ただし、幼児の集団研究から、目の前の子どもや思春期の暴力の原因を特定することはできません。

この説明は、暴力に負けないよう要求を通せ、という意味ではありません。危険なときに離れて助けを呼ぶことが先です。安全が落ち着いてから、要求の出し方、負担の大きい時間、やり取りを終える合図、別の伝え方を、医療や自治体の専門家と考えます。家族だけで「相手が諦めるまで続ける」練習をしないでください。

相談のために危険を冒して動画を撮る必要はありません。「いつ何が起き、誰が怖がり、けがや破損があるか」を分かる範囲で伝えられます。本人が来談を望まなくても、家族だけで安全の相談を始められます。

被害を受けた家族にも、別の助けが必要です

暴力の後に本人が謝っても、保護者やきょうだいの怖さがすぐ消えるとは限りません。いつ怒られるか分からず家で休めない、帰宅が怖いと感じることもあります。「本人の方がつらいから」と、家族の相談を止めなくてよいのです。

子ども本人への支援と、家族が安全に過ごすための支援は両方必要です。こども家庭センターや児童相談所等へ、本人をどうするかだけでなく、きょうだいがどこで休めるか、保護者が一人で対応しない方法も相談できます。年齢や地域で対応する窓口は異なるため、最初の窓口から案内を受けられます。

親も手を上げそうなときは、同じように助けを

怖さや怒りから、保護者もたたきそうになることがあります。そこで一人で耐えることだけを続けず、安全な大人へ交代を頼み、自治体や児童相談所へ今の状態を伝えてください。「自分も傷つけてしまいそう」と話すことは、安全を守るために必要な相談です。

ALVARAでは18歳以上の保護者ご自身が、危険が落ち着いた後の怖さや関わり方を話せます。その場の緊急対応、子ども本人の診断・治療を行う場ではありません。暴力をなくす責任を、被害を受ける家族だけで引き受ける必要はありません。

参考・引用文献

こども家庭庁「こども家庭センター」 / こども家庭庁「児童虐待防止対策」 / 厚生労働省「家族で子どもと向きあうポイント」 / [1] Smith, J. D., Dishion, T. J., Shaw, D. S., Wilson, M. N., Winter, C. C., & Patterson, G. R.(2014)Coercive family process and early-onset conduct problems from age 2 to school entry. Development and Psychopathology, 26(4 Pt 1), 917–932. DOI: 10.1017/S0954579414000169.

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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このコラムについて

本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。