介護で疲れたと感じても、家族を大切にしていないという意味ではありません。作業だけでなく、見守り、夜の対応、連絡、先の判断まで続いていれば、介護する側にも休みと支援が必要です。
手を動かしていない時間も、休めていないことがある
何かあればすぐ動けるよう家を空けない、夜も呼びかけを待つ、仕事中に連絡を気にする。こうした負担は、介助した回数だけでは見えません。「まだ自分でできている」と思っていても、眠れない、怒りやすい、仕事が続けにくいといった変化があれば、自分の疲れも相談できます。
説明用の場面として、通院の付き添いを毎回一人で行い、前夜の準備から翌日の仕事への影響まで抱えている場合を考えます。必要な助けは、病院で車椅子を押す人だけではないかもしれません。予約の連絡、送迎、薬の受け取りなど、代われる部分を一つ探せます。
介護の大変さは、介助の量だけでは決まらない
Pearlinらの介護ストレスのモデルは、介護そのものの負担に加え、それが仕事や家計などへ及ぼす負担、自分がどんな人でいられるかという気持ちの痛み、使える支えを合わせて考えます[1]。夜の介助が増えること、遅刻が増えて仕事を失いそうなこと、「親に優しくできない自分は駄目だ」と感じることは、つながっていますが同じ困りごとではありません。
これは負担を説明するための概念モデルで、介護者のつらさを点数で決めたり、考え方を変えれば解決すると示したりするものではありません。同じ介護内容でも、代わる人の有無、勤務の自由さ、費用などで負担は違います。ほかの家庭ができているから自分もできるはず、と比べない理由にもなります。
サービスの名前を知らなくても頼める
ケアマネジャーや地域包括支援センターには、「夜に何度も起きて、昼に眠く仕事が難しいです」「自分が一日休める方法を考えたいです」と、困り方から伝えられます。使えるサービスを自分で調べてから、お願いする必要はありません。
デイサービスや短期の宿泊など、本人の状態や地域に応じて検討する方法があります。すぐ使えるとは限らないため、今後の予定に加え、明日対応できなくなったときの連絡先や代わる人についても相談します。介護を続ける計画の中に、介護する人が休む計画を入れてよいのです。
家族に頼むなら、見えない用事も渡す
遠方のきょうだいに直接の介助を頼めなくても、病院やサービスへの連絡、支払い、必要な物の注文などを頼める場合があります。「もっと協力して」だけでは伝わりにくければ、「来月の通院予約と送迎の手配を、最初からお願いしたい」と一つの用事として渡す方法があります。
誰がどれだけ大変かを比べるだけになる場合は、担当者を交えて話すこともできます。家族がいない、頼めない事情があるときは、そのことを支援先へ伝えてください。家族の人数がいるから支えがあるはず、と決まるものではありません。
必要な支えも、それぞれに考えられます。夜の対応がつらいなら、まず実際に休める時間を作る相談が必要です。仕事を失う心配には職場で使える制度や働き方の相談が、罪悪感には責められずに話せる時間が役立つ場合があります。気持ちを話す支援だけに任せず、用事を減らす支援だけで終えず、介護する人の暮らし全体がどうなっているかを知らせてよいのです。
怒りが抑えられないほど疲れたら
強い言葉をぶつけそう、手が出そう、自分も相手も安全でいられないと感じたら、頑張って介護を続ける場面ではありません。安全に距離を取り、代わる人や緊急の支援へ連絡してください。介護を受ける人を危険な状態で一人にせず、二人の安全を一緒に考える必要があります。
その前の段階でも、睡眠や食事が崩れた、体の不調が続く場合は、自分の受診を後回しにしなくてかまいません。心理相談では、罪悪感、怒り、今後の暮らしへの迷いを話せます。気持ちの持ち方だけで介護量が減るわけではないため、実際の介護の支援と、介護者自身への支えを両方持つことが大切です。
参考資料・引用文献:厚生労働省:厚生労働省の取組について(仕事と介護の両立・家族介護者支援、2023年) / 厚生労働省:地域包括ケアシステム・地域包括支援センターの案内 / [1] Pearlin LI, Mullan JT, Semple SJ, Skaff MM. (1990). Caregiving and the stress process: An overview of concepts and their measures. The Gerontologist, 30(5), 583–594. DOI:10.1093/geront/30.5.583.
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このコラムについて
本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。
