子どものトラウマ体験後の反応と支援

子どものトラウマ体験後の反応は、年齢、発達、体験との関係、養育環境、時間の経過によって異なります。眠りや行動の変化だけからPTSDと判断することも、幼いから覚えていないと考えることも適切ではありません。日常生活を支える初期の援助、症状と発達の評価、必要に応じた専門的な介入を区別して考えます。[1]

年齢と発達によって見え方が違う

幼い子どもでは、分離への不安、遊びや睡眠、退行的な変化、かんしゃくなどが目立つ場合があります。学童期や青年期では、望まない記憶、回避、自責、警戒、集中や学業、対人関係の困難として現れる場合もあります。ただし、これらはトラウマに特有の反応だけではなく、他の原因でも生じます。[1]

言葉で説明できる量だけから苦痛を判断しません。子ども自身の表現、養育者の観察、園や学校での様子を合わせて把握します。報告が違う場合も、どちらかを直ちに誤りとせず、観察できる場面と、本人だけが分かる内面の違いを検討します。

一方、表情や遊びの内容だけから、特定の出来事や加害を推測して確定することもできません。観察した事実、子どもが自ら述べたこと、大人の解釈を区別し、必要な専門評価や安全確保へつなげます。

体験した子ども全員がPTSDになるわけではない

Alisicらの2014年のメタ解析は、分類基準への該当を確認する面接を用いた43の独立標本、3563人を検討し、トラウマに曝露された子ども・青年の一部がPTSDを発症する一方、その率には体験や集団による大きな違いがあることを示しました。介入を受けている人や、介入を求める人だけの標本は除外されています。[2]

この種の推定を、現在の日本の全ての子どもに共通する一つの確率とすることはできません。分類体系、評価時点、体験、標本の取り方が異なります。また、PTSDでない子どもにも、悲嘆、抑うつ、不安、身体症状、生活上の困難への支援が必要な場合があります。

自然に軽くなる反応を病理化し過ぎないことと、持続する困難を見逃さないことの両方が必要です。最初の印象で結論を固定せず、経過と生活機能を確認します。症状の持続が分類基準の期間に達するまで、援助を待たせるという意味ではありません。

まず安全と生活の予測可能性を支える

Hobfollらの2007年の専門家合意論文は、災害・集団暴力後の早期〜中期支援について、安全感、落ち着き、自己と共同体の効力感、つながり、希望という原則を提案しました。関連研究から導いた原則であり、一つの援助パッケージのPTSD予防を示した無作為化試験ではありません。[3]

子どもへの支援では、現在どこが安全か、困ったとき誰に伝えられるか、次に何があるかを年齢に合う形で伝えます。「二度と何も起こらない」という守れない保証より、現時点で確かめられることと、支えを求める方法を具体的に共有します。

食事、睡眠、通園・通学、遊びなどを無理のない形で整えることも課題です。養育者も動揺している場合には、大人自身への支えや役割分担を考えます。子どもを落ち着かせる責任を、一人の養育者だけへ負わせないことが重要です。

詳細を語らせることを回復の条件にしない

16歳以上を対象としたRoseらの系統的レビューでは、出来事の直後に、体験を詳しく思い出させ、感情を表現させる単回の個別デブリーフィングについて、PTSD予防を支持する根拠がなく、害の可能性も報告されています。レビューが検討したのは、このような特定の介入であり、全ての相談や、適応を評価したトラウマに焦点を当てる複数回の心理療法ではありません。[4]この結果は、幼い子どもへの有害性を直接証明するものではありません。子どもの支援では、発達や症状に応じた評価が必要です。[1]

心理的応急処置(PFA)も、体験の詳細を一律に語らせるデブリーフィングとは異なります。一方、Hermosillaらの2023年の系統的レビューは、PFAの研究について、介入成分、評価方法、バイアスの問題から効果の確実な判断が難しいことを指摘しました。「PFAなら必ずPTSDを予防する」と保証することはできません。[5]

子どもが話し始めたら、必要以上に質問を重ねたり、大人の推測を付け加えたりせず、その言葉と現在の必要を受け止めます。話したくない場合は、生活を支えながら、必要な評価の機会を確保します。専門的な介入で体験を扱う場合には、別に目的と計画を説明します。

園・学校と共有する情報を整理する

共有する目的は、体験を全員へ説明することより、子どもが安全に過ごし必要な活動へ参加できる条件を作ることです。難しい場面、休める場所、頼れる大人、予定を知らせる方法などを、本人の希望と理解に応じて検討します。

子どもが述べたこと、実際に観察された変化、大人が推測した理由を分けて伝えると、判断の混同を避けられます。誰へ何を共有するかを、年齢に応じて子どもにも説明します。ただし、本人や他者の安全に関わる情報まで、絶対に秘密にすると約束することはできません。

養育者と学校で見える様子が異なることもあります。家庭では落ち着いていても登校が難しい、学校では頑張っていて帰宅後に反応が強いなど、場面の違いを経過として把握します。一つの場面での適応だけで、支援が不要と判断しません。

専門評価と介入を検討する

眠り、食事、遊び、登校、対人関係に大きな支障がある、反応が続く・強まる、本人や家族の安全を保ちにくい場合には、子どもを対象とする医療・心理の専門家へ相談します。身体症状があるなら身体的な評価も必要です。症状の頻度だけでなく、生活への影響と変化の方向を伝えます。[1]

介入には、子ども・青年と養育者へのTF-CBT、幼い子どもと養育者の関係を扱うCPPなど、対象と構造の異なるモデルがあります。成人の介入をそのまま当てはめず、発達、症状、安全、養育者が参加できる条件を評価して選びます。

ALVARAの18歳以上の保護者本人への相談と、子ども本人の評価・介入は異なります。保護者が支えを受けることも大切にしながら、子どもに必要な専門支援へつながる方法を検討してください。

参考文献

  1. Smith P, Dalgleish T, Meiser-Stedman R. (2019). Practitioner Review: Posttraumatic stress disorder and its treatment in children and adolescents. Journal of Child Psychology and Psychiatry, 60(5), 500–515. 論文・書誌情報(DOI: 10.1111/jcpp.12983)
  2. Alisic E, Zalta AK, van Wesel F, et al. (2014). Rates of post-traumatic stress disorder in trauma-exposed children and adolescents: meta-analysis. The British Journal of Psychiatry, 204, 335–340. 論文・書誌情報(DOI: 10.1192/bjp.bp.113.131227)
  3. Hobfoll SE, Watson P, Bell CC, et al. (2007). Five essential elements of immediate and mid-term mass trauma intervention: empirical evidence. Psychiatry, 70(4), 283–315; discussion 316–369. 論文・書誌情報(DOI: 10.1521/psyc.2007.70.4.283)
  4. Rose S, Bisson J, Churchill R, Wessely S. (2002). Psychological debriefing for preventing post traumatic stress disorder (PTSD). Cochrane Database of Systematic Reviews, (2), CD000560. 論文・書誌情報(DOI: 10.1002/14651858.CD000560)
  5. Hermosilla S, Forthal S, Sadowska K, Magill EB, Watson P, Pike KM. (2023). We need to build the evidence: A systematic review of psychological first aid on mental health and well-being. Journal of Traumatic Stress, 36(1), 5–16. 論文・書誌情報(DOI: 10.1002/jts.22888)

WRITTEN BY

このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

プロフィールを見る

公開日
最終更新日

記事のつくり方

記事に関連する資料や更新日を確認できます。情報源の選び方や訂正の扱いは、記事のつくり方にまとめています。

心理コラムの記事のつくり方を見る

このコラムについて

ここで紹介する内容は、暮らしの中で気になっていることを考えるための一般的な情報です。今の状況に合わないと感じる部分は、使わなくてもかまいません。ご本人や周囲の安全に差し迫った心配があるときは、緊急の連絡先や地域の相談窓口を利用できます。