音や触感など感覚の敏感さが気になるとき

音や服の触り心地などが強くつらい子どもには、まずその負担を減らす工夫を考えます。周囲が平気でも本人には耐えにくいことがあり、「慣れれば大丈夫」と我慢させ続ける必要はありません。

刺激の強さだけでなく、予測や選べることも関わります

説明用の例です。朝、靴下を何度も履き直し、最後には脱いでしまう子どもがいます。大人には小さな縫い目でも、本人は痛いほど気になるのかもしれません。音、光、におい、食感なども、人によって負担が違います。

同じ音でも、自分で鳴らす音と突然鳴る音、元気な朝と疲れた夕方では、受け止めやすさが違う場合があります。「家では平気だった」は大切な情報ですが、別の場所の苦痛を否定する証拠にはなりません。刺激の種類だけでなく、突然か、逃げられるか、疲れているかも相談できます。

感覚へのつらさは、自閉スペクトラム症だけでなく、ほかの発達上の特徴や不安などでも検討されます。米国小児科学会の声明も、感覚面の困難だけから独立した病名や一つの背景へ決めないことを説明しています[1]。耳の痛みや皮膚の炎症など、医療で確かめる問題も別にあります。

道具や静かな場所は、活動へ関わる助けになります

服を別の素材にする、タグを処理する、座る場所を変える、静かな場所で休むなど、刺激を減らす方法があります。何が合うかは子どもによって違うため、便利そうな道具を次々買うより、本人が嫌だった所を一つ聞いてみます。

例えば、校外学習のバスの音がつらい子どもが、音源から離れた席なら友だちと話せる場面を考えます。席を変えることは、単に嫌なことを避けるだけでなく、参加したい活動に関わるための助けになります。一度静かな場所で休み、その後どうするかを本人と先生で考える方法もあります。同じ席に座れたか、休まず過ごせたかだけを、工夫の成否にしなくてよいのです。

音を減らす道具などを使う場合は、本人が快適かに加え、呼びかけや必要な音をどう知らせるかも、園・学校の担当者と確かめます。使い方や身体への影響に心配があれば、発達相談の担当者や、必要に応じて医師・作業療法士等へ相談できます。道具を使うことを、自分だけずるいと思わせる必要はありません。

園や学校には、配慮の後も残る困りごとを伝える

「音に敏感です」だけでなく、「椅子を一斉に動かす音で耳をふさぎ、その後教室へ入りにくくなります」と担任へ話せます。事前に知らせる、音源から離れた席を考える、つらくなったときの合図と休む場所を決めるなど、実際の一日について相談します。

バスの例で、音を減らしても「次はまた大きな音がするかも」と心配が残るなら、それも学校の担当者や発達相談の専門職へ伝えられます。刺激そのものへの負担と、予測できないことへの怖さは、両方が関わる場合があります。家庭でどちらか一つに決めず、身体のつらさ、本人の心配、活動しやすくなった点を分けて相談します。

家では平気でも、人数や音の響き、疲れている時刻が違えば、同じ工夫では足りないこともあります。だからといって道具を急に外して慣れさせるのではなく、何が残っているかを先生と確かめ直せます。保護者が教室を完全に静かにする責任を背負うわけではありません。

暮らしの配慮と、専門的な療法は別に考えます

苦手な刺激を減らす配慮、本人が参加したい活動を楽にする工夫、専門家が行う感覚統合療法等は、同じものではありません。道具の名前や「感覚に効く」という説明だけで、その子の何が改善するかまでは分かりません。

英国で自閉スペクトラム症と感覚面の困難がある子ども138人を割り付けた試験では、感覚統合療法は通常の支援に比べ、主要な評価項目である6か月後のいら立ち・興奮に有意な差を示しませんでした[2]。特定の対象・療法・指標の結果であり、生活上の配慮が全て無意味だということでも、一人ひとりに役立つ工夫がないということでもありません。

医師や作業療法士等から専門的な取り組みを提案されたら、「どの生活場面を助けるためか」「何を見て続けるか」を尋ねられます。家庭で急に苦手な音を聞かせる、触感へ無理に触れさせるなど、苦痛に耐えさせる課題へ置き換えないでください。今は参加しない方法も含め、本人の希望と安全を大切に、その取り組みを担当する専門職へ相談できます。

痛みや身体の心配は、医療へ相談を

耳の痛み、急な聴こえの変化、皮膚の炎症、食べられなさなどがある場合は、感覚の敏感さだけで説明せず小児科や該当する診療科へ相談してください。急な強い症状があれば通常の発達相談の予定を待たないでください。

地域の発達相談では、生活の工夫や専門機関へのつながりを話せます。本人が楽になる方法を知る相談と、保護者が外出や毎朝の支度で疲れていることを話す相談は、両方あってよいものです。ALVARAは18歳以上の保護者ご自身の相談で、子どもの感覚の検査や治療を行う場ではありません。

参考・引用文献

発達障害情報・支援センター「支援方法の学習」 / 発達障害情報・支援センター「支援につなげる(保育・学童保育)」 / 発達障害ナビポータル「医療機関への受診について」 / [1] Section on Complementary and Integrative Medicine, Council on Children With Disabilities, American Academy of Pediatrics, Zimmer, M., & Desch, L.(2012)Sensory Integration Therapies for Children With Developmental and Behavioral Disorders. Pediatrics, 129(6), 1186–1189. DOI: 10.1542/peds.2012-0876. / [2] Randell, E., Wright, M., Milosevic, S., et al.(2022)Sensory integration therapy for children with autism and sensory processing difficulties: the SenITA RCT. Health Technology Assessment, 26(29), 1–140. DOI: 10.3310/TQGE0020.

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。