動機づけ面接(motivational interviewing:MI)は、特定の変化についての本人自身の理由や意思を、協働的な対話から明確にする面接法です。「変えたい」と「変えたくない」が同時に存在する両価性を、説得で押し切るのでなく理解し、本人の自己決定を支えます。[1]
セラピストの望む答えを言わせる話術ではありません。共感的に聞くことに加えて、何について話し合い、どの方向を目指すかを合意する、方向性のある対話として理解する必要があります。
両価性と抵抗を、固定した性格にしない
行動を変えることには、利益だけでなく損失や不安が伴います。飲酒を減らしたい一方で交流の場を失いたくない、心理的支援を受けたい一方で評価されるのが怖い、といった両価性は自然に生じます。MIでは、続ける理由も含めて本人の経験を理解します。[1]
変化しない発言を、その人が「抵抗的な性格」である証拠とはしません。対話の進め方や焦点が合っていない可能性もあります。本人が現状を維持する理由を述べることと、支援者との関係に不協和が生じていることを区別します。
また、意欲があれば実行できるとは限りません。体調、認知上の負担、費用、家族や職場の条件、支援へのアクセスなどが行動を制約します。環境上の障壁を動機の弱さとして解釈しないことが、本人を理解するうえで重要です。
四つの課題と、基本的な応答の意味
MIでは、関わる、焦点化する、引き出す、計画するという課題を扱います。[1] 一方向に進む固定した段階ではなく、関係や目標が揺れれば戻って確認します。関係が成立していないまま計画を作っても、本人にとっての意味が共有されない場合があります。
開かれた質問、是認、聞き返し、要約などは、本人の意味づけを把握し、対話を整理するために用います。質問の数を増やすより、返ってきた内容を理解して応答することが大切です。是認も、支援者が「よい答え」を褒めることより、その人の努力や価値、選択を具体的に認める働きかけとして捉えます。
情報提供が必要な場合は、本人の理解や知りたいことを確認し、許可と選択の余地を保って伝えます。助言を一切しないことがMIの条件ではありません。安全や医療上の必要がある際には、専門家の判断とその理由を透明に説明します。
物質使用への有効性は、比較条件で異なる
2023年のCochraneレビューは、物質使用の減少について93研究、22,776人を集約しました。無介入との比較では短期の減少を、評価とフィードバックとの比較では中長期の小さな減少を支持する可能性がありました。一方、通常ケアや他の能動的介入と比べると差が乏しい可能性があり、動機づけや支援の継続への影響は不確実でした。[3]
この結果を、MIが無効又は常に最適という二択にすることはできません。対象の物質、使用の程度、年齢、実施形式、追跡時点で問いが異なります。物質使用の転帰が改善したことと、本人が述べる準備性や継続率が改善したことも別です。
MIは健康行動、医療、教育などにも用いられますが、広く使われていること自体は、各場面の有効性が同じ確実性で証明されたことを意味しません。実施する対象に対応した比較研究と、面接が実際にMIとして行われているかの忠実度を確認します。[1][3]
チェンジトークは、数えればよいわけではない
MillerとRoseは、共感などの関係的な要素と、変化に関する本人の言葉を引き出す技術的な要素を含む理論モデルを提示しました。[2] 本人が変化について述べる「チェンジトーク」は、この過程を理解する概念の一つです。
Magillらの過程研究のメタ解析では、セラピストの応答、本人の発話、その後の行動の関連が検討されました。発話の単純な頻度と、変化・維持に関する発話の比率では結果が同じではありませんでした。[4] 「変わりたいという言葉を多く言わせれば、その分行動が変わる」という因果法則としては扱えません。
過程変数は無作為に割り付けられているわけではなく、本人の準備、関係、対象行動の違いも影響しえます。研究は面接の質を吟味する助けになりますが、対話を得点の高い発言へ誘導することが目的ではありません。本人が迷いや否定を述べられる条件を保ちます。
倫理、訓練、臨床での位置づけ
支援者と本人の目標が異なるときは、その違いを隠さず共有します。心理的支援の利用、服薬、家族や組織の要望に関わる場面では、本人が何を自由に選べるか、どの制約があるかを明確にします。自己決定を尊重する言葉を用いながら、実際には一つの結論へ誘導することを避けます。
切迫した危機や重い物質依存がある場合は、MIだけで対応を完結させず、医療や安全支援へ接続します。行動変容を話し合う準備が整うのを待つことと、必要な保護を遅らせることは別です。
訓練では、説明を理解したかだけでなく、録音等への適切な同意を得たうえでの面接評価、具体的なフィードバック、継続的な指導が重要です。本人の言葉を聞けているか、焦点を共有できたか、選択を支えたかという過程と、実際の行動や生活の変化を両方追います。
参考文献
- Miller WR, Rollnick S. (2023). Motivational Interviewing: Helping People Change and Grow (4th ed.). Guilford Press. ISBN 9781462552795.
- Miller WR, Rose GS. (2009). Toward a theory of motivational interviewing. American Psychologist, 64(6), 527–537. doi:10.1037/a0016830.
- Schwenker R, Dietrich CE, Hirpa S, et al. (2023). Motivational interviewing for substance use reduction. Cochrane Database of Systematic Reviews, 12, CD008063. doi:10.1002/14651858.CD008063.pub3.
- Magill M, Apodaca TR, Borsari B, et al. (2018). A meta-analysis of motivational interviewing process: Technical, relational, and conditional process models of change. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 86(2), 140–157. doi:10.1037/ccp0000250.
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