在宅勤務での孤立は、交流する回数を増やすだけでは解決しないことがあります。仕事で必要な助けと、誰かとつながりたい気持ちを分けると、職場に頼みたいことが具体的になります。
「誰とも話さなかった日」の中に、違う困りごとがある
説明用に、在宅勤務で資料を作っている場面を考えます。分からない点をチャットで送りましたが、返事がありません。相手が忙しいのか、質問が悪かったのか分からず、何度も画面を開きます。夕方になっても作業が止まったままで、「一日中家にいたのに何もできなかった」と疲れ切ってしまいます。
この例では、寂しさだけでなく、待っている間に何を進めてよいか、誰が代わりに答えるかが見えないことも負担です。対面なら隣で聞けた小さな確認が、正式な依頼のように重くなる場合があります。「人付き合いが苦手だから」と自分の性格だけにまとめる前に、相談経路が在宅勤務に合っているかを考えられます。
厚生労働省のテレワークのガイドラインも、離れた場所では上司等とのやり取りや心身の変化への気づきが難しくなることを挙げ、事業者側の健康相談やコミュニケーションの仕組みを扱っています。[1] 本人がもっと積極的になれば済む、という問題の置き方ではありません。
雑談を増やす前に、止まる仕事を一つ伝える
先ほどの例なら、「質問してから返事を待つ間、作業が止まります。急ぎの確認先と、返答がないときに進めてよい範囲を決めたいです」と、上司へ相談する方法があります。質問の頻度が多いか少ないかだけでなく、何が未決で、どの判断を自分で行えるのかを具体的にします。
短い相談時間を決める、質問をまとめる場所を一つにする、担当不在時の確認先を設けるなど、方法は職務に応じて違います。毎日の長いオンライン面談が全員に必要なわけではありません。新しく会議を増やして疲れているなら、連絡の数を増やすより、重複を減らしたり、誰が答えるかを明らかにしたりする方が役立つ場合もあります。
依頼を送る側も受ける側も、いつでも応答できることを前提にしない工夫ができます。緊急の連絡と翌日まででよい相談を区別すること、勤務時間や不在が分かることは、相手の沈黙を毎回自分への評価として解釈する負担を減らすための提案です。ただし、社内の連絡ルールや権限を本人一人で変更する話ではありません。
交流が欲しいことと、交流を強制されることは違う
仕事は回っていても、人と話さない日が続いて寂しい場合もあります。その場合は、仕事の進捗確認だけでは足りないかもしれません。「週に一度、近況を話せる短い時間があればうれしい」と希望を伝える、参加自由の小さな交流を使うなど、本人が望む接点から考えます。
一方、画面を常につなぐ、私生活を話す、勤務外の集まりへ出ることを、孤立対策の義務にする必要はありません。人に会うと回復する人も、一人で休む時間が必要な人もいます。カメラや音声が負担になる理由には、住環境、障害、育児・介護等の事情もあるため、参加方法を選べることも相談の一部です。
会社の人と親しくなることだけが、つながりの作り方でもありません。以前からの友人、近所での用事、オンラインの趣味の集まりなど、仕事の評価から離れた接点を持ちたい人もいます。すべてを増やすのではなく、「今は仕事の相談相手が欲しいのか、仕事以外の話がしたいのか」を一つ選べます。
つながって見える時間と、休める時間を分ける
姿が見えない分、働いていると証明したくなり、通知にすぐ返す、休憩中も画面を見るなどの行動が増えることがあります。先ほどの例なら、返事を待つうちに休憩を取れず、食事も後回しになっているかもしれません。孤立と過剰な接続は、同時に起こりえます。
労働時間の扱いや休憩、時間外の連絡は、職場の正式なルールと合わせて確認する話です。[1] 自宅にいるから私生活の時間で仕事を埋めればよい、とはなりません。業務を終える時刻に何を報告すればよいか、その後の通知はどう扱うかを上司や人事に確かめられます。
家の事情で仕事と生活を物理的に分けにくい場合、専用の部屋を作るといった大きな工夫はできないかもしれません。「今日はここまで」とメモを閉じる、機器を片づけるなど、費用や環境に無理のない区切りを選べます。区切れなかった日をさらに失敗として数えるための提案ではありません。
職場の仕組みと、体調・怖さに別々の助けを使う
WHOは、支えの乏しさや不明確な役割なども職場の心理社会的リスクとして挙げています。[2] 「在宅だから必ず孤独になる」と決まるわけでも、出社へ戻せば必ず解決するわけでもありません。仕事内容、望む働き方、必要な配慮を踏まえて、どの助けが足りないかを相談します。
業務の連絡や担当は上司・人事へ、心身の変化は産業医・保健師等へ相談できます。眠りや食事が崩れ、外出や日常の用事が難しい状態が続くなら医療機関にも伝えてください。健康情報を会社に伝える場合は、誰が何を知るかを窓口で確かめてから話せます。
説明用の相談の一言:「人と話す機会も欲しいのですが、いちばん困るのは、返事を待つ間に仕事が止まることです。確認先と、待っている間に進めてよい範囲を相談したいです。」
ALVARAの18歳以上の個人相談では、質問する怖さ、孤立感、自宅でも仕事から離れられないつらさを話せます。勤務の仕組みを決める職場の相談と組み合わせ、本人だけの努力にしない理解を考えられます。
関連する心理コラム
参考・引用文献
記事のつくり方
記事ごとの関連資料は本文末尾に掲載しています。情報源の選定、更新、訂正、心理療法・心理検査の掲載範囲については、記事のつくり方を確認できます。
このコラムについて
本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。