家では話すのに、学校では話せない子が心配なとき

家では話せるのに学校では話せない場合、話す意欲や礼儀だけでは説明できないことがあります。声を出すよう励ます前に、学校で必要なことを伝えられているか、安心して参加できているかを相談できます。場面の違いだけから診断を決めず、学校と専門家で状況を理解します。

「話さない」と「話せない」を、外から決めつけない

家で楽しそうに話す姿を知っていると、「同じように学校でも言えばよいのに」と思うかもしれません。しかし、相手や場所が変わると声が出なくなる子どももいます。ASHAは、選択性緘黙では本人が話す場所を自由に選んでいるのではなく、不安と関わる難しさがあると説明しています。[1]

この説明は、家と学校の差がある子をすべてその診断に当てはめるためのものではありません。言葉の理解、聴こえ、使う言語への慣れ、現在の学校での怖い出来事等も含め、必要な評価を考えます。話すよう強く促してもできない場合、意志が弱い、家庭で甘やかしたと結論づける必要はありません。

説明用の例です。家ではきょうだいと話す子が、先生から名前を呼ばれると動きも止まります。昼休みには親しい友人へ小声で話せることが分かりました。「学校では一切できない」とまとめるより、相手、人数、場所、何を求められた場面かを分けると、支援の手がかりが増えます。

最初に困るのは、発表より助けを呼べないことかもしれない

音読や挨拶は周囲に見えやすい困りごとです。一方、トイレへ行きたい、気分が悪い、分からない、と言えないことは見落とされがちです。まず日常で必要な助けを受け取れるかを、本人の話せる方法や学校での様子から確かめます。

先ほどの例なら、先生に近づくことも難しいのか、近くで指差しなら伝えられるのかを確認できます。カード、筆談、端末、うなずき等は候補ですが、どれも本人にとって必ず楽とは限りません。「書けばできるはず」と別の課題を増やさず、使える方法を学校と一緒に探します。ASHAも、発語に限らないコミュニケーションや学習参加を評価する視点を示しています。[1]

今使える伝え方を用意しつつ、発話を含めた今後の支援の目標は、本人と学校、専門家で相談できます。家庭だけで発話の段階表を作り、怖い場面へ順番に入れる練習を始める必要はありません。

話す圧力を、関わる大人の間で減らす

「一言だけ言えたら」「言うまで帰れない」などの働きかけは、注目される負担を増やす場合があります。NHSの保護者向け案内は、話すよう強く促したり、ご褒美と引き換えに発話を求めたりしないこと、非言語の伝え方も認め、話せたことを人前で大きく取り上げないことを勧めています。[2]

家庭では「今日何回話せた?」と毎日確かめる代わりに、「困ったとき先生へ知らせられた?」など、生活上の助けを聞く方法があります。ただし、帰宅後に質問を重ねること自体が疲れるなら、遊ぶ時間や休む時間を優先してかまいません。学校の様子を本人だけから聞き出す役割にしないことも考えます。

先生や親族に伝えるなら、「家で話す動画を皆に見せて証明することは避けたいです。学校で声が出ないときに使える連絡方法を考えたいです」と希望を話せます。記録が評価に必要な場合は、本人の負担、誰が見るか、保管等を専門家と確認します。本人に隠して撮影・共有する方法を一律に勧めることはしません。

相談では、学校での困り方と言葉の力を両方見る

学校の相談担当、小児科や子どもの精神医療、言語聴覚士等が関わる窓口へ、どの相手・場面で何が難しいかを伝えられます。ASHAは、言語聴覚の専門家と学校、心理・医療等の連携を重視しています。[1] 海外の専門職制度が日本で同じとは限りませんが、一つの窓口だけで全部を決めず、必要な評価へつなぐ観点は参考になります。

受診先には、「初対面では声が出ない可能性があります。親だけが先に説明する時間や、文字で伝える方法はありますか」と予約時に尋ねられます。診察で話せなければ相談にならない、と諦めなくてよいのです。実施できる方法は相談先へ確認します。

急にどの場所でも話せなくなった、聴こえや体調の変化があるなど、以前と違う様子は医療へ伝えてください。長く様子を見れば自然に解決すると決めず、生活への影響が続く場合には専門家へ相談できます。[2] 相談のために家庭で診断名や原因を確定する必要はありません。

進級や担任の変更があるときは、本人がまた一から説明する役にならないよう、引継ぎの内容を相談できます。役立った伝え方と避けたい働きかけを、誰へどこまで渡すかを確かめます。前の学年で話せたことを、新しい環境でもすぐできる約束にしなくてよいのです。

目標は、声の数だけで振り返らない

支援が始まった後は、発表できたかに加え、助けを頼めるか、教室で過ごす負担、学習や友人との接点を振り返ります。小声で話せた後、次回は皆の前で話すことを期待されてつらくなったなら、その負担も知らせます。できたことを、自動的に次の要求へつなげないことが大切です。

先ほどの例の子がカードで体調を伝えられたなら、何が助けになったかを先生と確かめます。同時に、本人はカードを見られることが気になるかもしれません。大人には便利な方法でも本人の実感を聞き、使う場所や渡し方を調整できます。支援も一度決めたら終わりではありません。

保護者自身も、外で誤解されるつらさや、「家ならできるのに」という焦りを話してよいのです。ALVARAは18歳以上の保護者ご自身の相談であり、子どもの緘黙の診断や専門治療を提供するとの意味ではありません。「話させたい気持ちが強くなってしまう。今学校で必要な助けを整理したい」という言葉から相談できます。

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参考・引用文献

  1. ASHA. Practice Portal: Selective Mutism
  2. NHS. Selective mutism

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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このコラムについて

本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。