妊娠・出産を望んでいた人生を見直すとき、希望を捨てるか持ち続けるかを、すぐ二つに分ける必要はありません。医療の見通しと、自分が大切にしてきた未来、そのために今負っている負担を分けて話せます。決めきれないまま相談を始めてもかまいません。
考え直しているのは、治療だけとは限らない
治療を続けている人も、治療をしていない人も、さまざまな事情で妊娠・出産を望んだ将来を考え直すことがあります。「子どもと過ごす家」「家族に報告する日」「いつか使うと思っていた時間」など、まだ起きていないけれど大切にしていた未来が、そこにはあるかもしれません。
だから、周囲から「別の楽しみを見つければ」と言われても、すぐ代わりを選べないことがあります。一方、以前ほど望まなくなった自分に戸惑う人もいるでしょう。強く望む人ほど大切にしている、見直す人は努力が足りないという順序はありません。
海外の治療経験者の研究では、親になったかどうかだけでなく、その後も子どもを望む気持ちと心理的な健康の関連が検討されています。[1] ただし、これは関連の調査で、「望みを手放せば健康になる」という因果ではありません。本人の希望を変えるよう説得する根拠として使わないことが大切です。
医療の情報と、人生の選択を分けて確かめる
治療の選択肢、身体への負担、医学的な見通しは、担当医へ確認する内容です。心理相談が、妊娠の可能性や治療の継続・終了を医学的に判定することはできません。「年齢だから」「何回したから」と、この記事から一律の結論を出すこともありません。
医療での説明を聞く際は、「今分かっていることと、分からないことを分けて聞きたい」「次の判断が必要になる時期を知りたい」と伝えられます。結論を急ぐように感じるときは、どの判断に医学的な期限があり、どの部分は後で考えられるかを尋ねることもできます。回答は個別の状態により異なります。
欧州生殖医学会の心理社会的ケア指針は、治療を受けるかの意思決定支援や、治療を終えることの影響を話し合う機会を重視しています。[2] これは、相談すれば続けるべきかが決まるという保証ではありません。質問や希望を、医療と気持ちの両方で扱うための考え方です。
一つの大きな決断を、今の問いへほどく
ここからは説明用の例です。次の治療の説明を受け、「もう疲れた」と「ここでやめたら後悔する」が行き来している場面を考えます。「自分は本当に親になりたいのか」だけで答えを出そうとすると、身体やお金、関係の負担が一つに混ざる場合があります。
| 分けて話せること | この例での問い |
|---|---|
| 医療上の確認 | 見通しや選択肢、身体への影響は何か |
| 続ける条件 | 時間・費用・休息のどこが今つらいか |
| 失いたくないもの | 何を望み、何を残念に感じているか |
| 今決める範囲 | 今日必要な返事と、保留できる部分は何か |
「疲れているから望みは偽物」とも、「望みがあるなら負担を全部引き受けるべき」とも決まりません。休むことや条件を見直すことの医学的な意味は医師へ確認し、気持ちは変化してよいものとして相談できます。すべての不確実さがなくなるまで決められないという負担も、話せる内容です。
パートナーや周囲と、同じ時点にいなくてもよい
パートナーがいる場合、一人は続けたい、一人は休みたいことがあります。医療的な処置を受ける身体、仕事への影響、費用の負担も同じではありません。「二人の問題」として一つにまとめるだけでは、本人に集中している負担を見落とす場合があります。
威圧のない関係なら、「結論を一致させる前に、何がつらいかを聞いてほしい」「今日は次の説明を一緒に聞くところまでにしたい」と、会話の目的を小さく分ける方法があります。共同の相談が使えるかは利用先に確認し、一人で話す場も持てます。相手へ自分の希望を説得しきることが相談の条件ではありません。
親族や知人への説明も、決断を理解してもらえるまで続ける義務はありません。「今は自分たちで考えています。治療や妊娠のことを質問するのは控えてください」のように、話題の範囲を示せます。パートナーのいない人や多様な関係、治療を受けられない事情も含め、決まった家族像へ合わせる必要はありません。
新しい生活と、失った未来への思いを両方持つ
別の目標を持つことは選べますが、仕事や趣味、家族のあり方について、すぐ新しい答えを出す必要はありません。新しい予定を楽しめても、望んでいた未来への寂しさが残ることはあります。寂しさがあるだけで、新しい生活の価値が下がるわけでもありません。
研究[1]は、オランダの治療経験女性を対象とする横断的な調査で、回答しなかった人の影響などの限界もあります。個人に望みを手放す時期や、別の目標の効果を指示できる研究ではありません。自分の希望や人生を、研究の平均に合わせて変える必要はありません。
今できることが浮かばなければ、「その未来が大切だった」と話す時間だけでもかまいません。何かに前向きにならないと相談を終えられないわけではなく、望みと距離を取ることも、望みが戻ることも含めて、その時点の自分を扱えます。
心理相談には、結論の前に持ち込める
「続けるかどうかを決めてほしいのではなく、考えるための余裕がほしい」「医療の説明を聞くと自分の気持ちが分からなくなる」と伝えられます。担当者には、生殖に関する相談への経験や、医療とどのように役割を分けるかを確かめられます。
眠れない、食事や仕事を保てない、強い絶望などがある場合は、その影響を医療にも相談します。今日の持ち帰りは、人生全体の答えではなく、「今必要な情報」「今減らしたい負担」「まだ決められない思い」を一つずつ分けることです。自分に必要な条件を確かめるための相談を、結論がない段階から使えます。
関連する内容は、キャリアの迷いをカウンセリングで相談できるか、大切な人との別れや喪失に向き合うとき、自分らしさや将来が分からないときでも読めます。
参考・引用文献
- Gameiro, S., et al. (2014). Do children make you happier? Sustained child-wish and mental health in women 11–17 years after fertility treatment. Human Reproduction, 29, 2238–2246. doi:10.1093/humrep/deu178.
- Gameiro, S., et al. / ESHRE. (2015). ESHRE guideline: routine psychosocial care in infertility and medically assisted reproduction—a guide for fertility staff.
記事のつくり方
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このコラムについて
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