産後の落ち込みや不安を一人で抱えているとき|安全と受診の入口

産後の落ち込みや不安は、子どもを大切に思う気持ちと両立します。病名を自分で確定せず、出産した医療機関や地域の保健師へ、自分の状態も含めて相談できます。急な混乱や安全への心配がある場合は、通常の心理相談の予約を待たず、医療の助けが必要です。

子どもの世話ができていても、自分のつらさを話せる

授乳や着替えをこなし、健診では子どものことを説明できていても、一人になると涙が止まらない、何も楽しめないことがあります。「世話をしているから大丈夫」と自分の状態を後回しにしなくてかまいません。反対に、子どもをかわいいと思えない瞬間があることだけで、親としての愛情や診断が決まるものでもありません。

NHSの産後うつの案内では、落ち込みに加え、強い不安、罪悪感、休める機会があっても眠れないこと、集中や判断の難しさなどが挙げられています。出産直後の一時的な気分の揺れと、生活を保ちにくい状態を区別し、長引く・強まる・対処が難しい場合には助けを求めるよう勧めています。[1] 何日経ったかだけで、相談してよいかを決める必要はありません。

「眠れない」の中に、違う困り方がある

説明用の例です。夜の世話で何度も起き、昼も食事や洗濯が続いている人がいます。この場合、まず必要なのは、実際に世話を代わる人や休む時間の相談かもしれません。一方、家族が代わってくれているのに強い不安で横になれず、ほとんど眠れない人もいます。二つは重なることもありますが、伝えたい情報は違います。

「寝不足です」だけで話しにくければ、「休める時間はありますが、怖い考えが続いて眠れません」「食事を用意しても食べられません」と、機会と実際を分けて伝えられます。以前からの通院や服薬があれば、そのことも知らせます。授乳中だからと薬を自己判断でやめたり、増減したりせず、治療と授乳の希望を医師に相談してください。

産後の不調には、身体の回復、睡眠、生活の負担など複数の側面が関わりえます。[1] ホルモンだけ、家族の協力だけ、本人の性格だけに原因を決めると、必要な確認が抜けてしまいます。身体の症状も含め、医療者と状況を捉えます。

急に様子が変わったときは、早い医療評価へ

産後、急にひどく混乱する、実際にはない声が聞こえる、現実と確かめにくい強い確信が生じる、ほとんど眠らず著しく活動的になるといった変化があれば、出産した医療機関や精神科等へ直ちに連絡し、早急な評価を求めてください。NHSは産後精神病を緊急の医療対応が必要な状態として説明しています。[2] ここに挙げた様子から家族が診断するためではなく、急な変化を様子見だけにしないための案内です。

自分や子どもを傷つけそう、今の安全を保てない場合には、本人だけに対処を任せず、そばの大人が子どもの安全な世話を引き受け、救急医療へつないでください。本人も一人で抱えず、「今、一人で世話を続けるのは危ない」と短く伝えられます。考えが浮かぶことと実行する意図は同じではありませんが、意図の有無や切迫感を医療者に知らせ、必要な安全の確認を受けることが大切です。

相談先では、気持ちと暮らしの両方を伝える

産科・助産師・保健師には、身体の経過だけでなく、気分や不安、睡眠のことも話せます。精神科等での診察が必要か、どの機関へつなぐかも相談できます。地域の母子保健では妊娠期から子育て期の支援や産後ケアが位置づけられていますが、利用条件、空き、費用や受けられるケアは自治体等へ確認します。[3]

予約する手間自体が重いなら、「産後、自分の調子が悪く、どこへ連絡すればよいか分かりません」と一つの窓口へ伝える始め方があります。家族には電話の付き添いや予約の連絡を頼めることもあります。支援を頼むために、病名や制度名を自分で調べ尽くす必要はありません。

説明用の例の人が「家事を手伝って」と頼んでも、授乳以外の世話や連絡役がすべて残れば、休息は増えないかもしれません。「明日の午前は子どもの世話と必要な連絡を引き受けてほしい。自分は受診の相談をしたい」のように、何から離れたいかを伝える方法があります。頼める人がいない事情も、そのまま保健師へ話せる内容です。

受診を勧められても、その間の子どもの世話や移動が決まらず動けないことがあります。「相談先は分かりましたが、受診するための付き添いと子どもの世話が必要です」と、つながるまでの用事も相談できます。家族が連絡を手伝う場合は、本人に代わってすべて決めるのでなく、何を伝えてほしいかを確かめます。本人が説明できないほど急に具合が悪いときは、周囲が変化を医療者へ知らせることが必要です。

気持ちを話す支えを、受診や生活の助けと組み合わせる

心理相談では、喜べない自分を責める気持ち、期待と違った出産後の生活、家族へ助けを頼む怖さを話せます。ただし、対話だけで身体の状態を診察したり、産後の急な精神症状へ救急対応したりするものではありません。医療が必要な不調を、カウンセリングだけで待つ理由にはしないでください。

相談の言い方なら、「子どものことは説明できますが、自分の話になると言葉が出ません。休める状況と眠れているかを、一緒に整理してほしいです」と伝えられます。家族が同席すると話しにくいなら、一人で話す時間を希望することもできます。情報を誰と共有する必要があるかは、窓口の説明を受けて確かめます。

ALVARAの個人相談は18歳以上の方が対象で、保護者ご自身の気持ちや暮らしの相談として利用できます。診断・処方・救急対応は行いません。親として頑張れるようになることを急ぐ前に、本人と子どもが安全に過ごせる支えを増やしてよいのです。

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参考・引用文献

  1. NHS. Postnatal depression(2026年3月見直し)
  2. NHS. Postpartum psychosis
  3. こども家庭庁「母子保健・不妊症・不育症など」

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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このコラムについて

本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。