進学・就職で環境が変わるとき

進学や就職が楽しみだったとしても、新生活で疲れることはあります。授業や仕事だけでなく、移動、家事、新しい人との会話まで一度に変わると、慣れるためにも時間と力が必要です。

予定の少なさと、疲れの少なさは同じではない

説明用の場面として、授業は午後に二つだけなのに、帰宅すると夕食を用意する力が残っていない日を考えます。教室を探す、空き時間を過ごす場所を決める、知り合いに声をかけるなど、時間割に書かれていない用事もあったのかもしれません。

就職でも、誰に何を聞けばよいか探すだけで疲れることがあります。「これくらいで疲れる自分は駄目だ」と考える前に、一日の中で初めてだったことを一つ思い出してみてください。仕事や勉強の量だけでは、いまの負担は分かりません。

慣れた生活では、道順や昼食を買う店を毎回一から考えずに済みます。新生活では、その小さな選択まで未定のままです。加えて、分からないことを尋ねる相手も初対面なら、質問一つにも気を使います。授業や仕事の時間が短くても、休み時間にまで考える用事が続けば、休めた感じが少ないのは不思議ではありません。

この見方では、「もっと速く慣れる」ことだけが対策ではなくなります。昼食の候補を決めておく、困ったときの連絡先を一つ知っておくなど、一日の中で考え直す必要のない部分を増やすことにも意味があります。ただし、疲れが強いから必ずこうした負担が原因だと決めることはできません。睡眠や食事、体調も合わせて見ます。

全部を新しくせず、慣れたものを残す

食事や買い物の仕方、家族や友人との短い連絡、寝る前の過ごし方など、以前からの習慣を一つ残す方法があります。新しい友人や趣味を早く増やそうとしなくても、変わらないものがあると日々の用事を減らせます。

帰宅が遅い日は食事を作らないことにする、翌日の持ち物を同じ場所に置くなど、考える回数を減らす工夫もできます。生活の仕方がまだ定まらない時期に、毎日理想どおりに過ごすことを目標にしなくてかまいません。

分からないことは、短く一つずつ聞く

質問がたまると、何から聞けばよいか分からなくなります。まず「今日の課題はどこに提出しますか」「欠席の連絡は誰にすればよいですか」のように、次の行動に必要な一つから尋ねられます。質問する相手が分からないなら、それ自体を先生や担当者へ聞けます。

体調を崩したあとの戻り方も、元気なときに確かめてよいことです。休んだ授業の資料、職場への連絡方法などが分かっていれば、休む日に一から探す負担が減ります。これは休むことを前提にするというより、無理をして出続ける以外の道を持つための準備です。

質問をするときも、知識を教わることと、周囲に手伝いを頼むことは別に考えられます。「提出先はどこですか」に加えて、「説明が速いと覚えきれないので、最後に一つ確認したいです」と伝えてよいのです。初めての人が手順を理解できるようにすることは、学校や職場の側の課題でもあります。本人だけが家に帰って不足を埋め続ける形になっていないかを見直します。

慣れる努力だけでは難しいとき

嫌がらせがある、質問すると怒鳴られる、長時間の拘束で休めない場合は、「まだ慣れていないだけ」と片づけないでください。学校の相談室、学生支援、職場の人事や外部の労働相談など、別の相手に状況を話せます。

眠れなさや食欲の変化が続く、通学・通勤の支度ができないときは、医療にも相談してください。心理相談では、周囲についていけない怖さや、前の生活が恋しい気持ちも話せます。新しい環境を好きにならなければ相談できない、ということはありません。今週を少し過ごしやすくするために、何を一つ減らせるかから考えられます。

参考資料・引用文献:厚生労働省「こころのセルフメンテ」 / 厚生労働省「困ったときの相談先」

WRITTEN BY

このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

プロフィールを見る

公開日
最終更新日

記事のつくり方

記事ごとの関連資料は本文末尾に掲載しています。情報源の選定、更新、訂正、心理療法・心理検査の掲載範囲については、記事のつくり方を確認できます。

心理コラムの記事のつくり方を見る

このコラムについて

本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。