採血や予防接種を怖がるときは、必要な処置を受けるためにどんな支えがあるかを医療者へ相談できます。うそで安心させることや、泣かない約束をさせることだけへ頼らず、何が起きるかと本人が選べる部分を分けて伝えます。処置の必要性や痛みへの医学的対応は、担当の医療者と確認します。
怖い理由を、注射の一言でまとめない
針を見るのが怖い、痛みを心配している、押さえられた経験がつらい、いつ始まるか分からない。子どもが「病院に行きたくない」と言う理由は一つとは限りません。全てを詳しく説明できなくても、どの時点で怖さが強まったかを保護者が見た範囲で伝えられます。
説明用の例です。前の採血で、説明のないまま腕を触られたことが怖くなり、今回は待合室へ入る前から泣いています。ここでは針を見せなければ済むとは限りません。「触る前に声をかけてほしい」「何をするかを一つずつ聞きたい」という希望が、本人の予測しやすさに関わるかもしれません。
CDCは予防接種に伴う痛みが、子どもや保護者の不安と関わることを述べ、処置の痛みへの対策を位置づけています。[1] 心理的に落ち着かせることと、実際の痛みに対応することは別に相談できます。痛みを我慢する気持ちが足りないと考える必要はありません。
受診前に、医療者へ伝えることを一つ
予約時や受付で、「前回の処置が怖く、今日は説明を受けるところから相談したいです」と知らせられます。以前気分が悪くなった、失神したことがある、体を触られることが難しい等の情報も、医療者へ渡します。保護者の協力だけで安全にできるかを判断せず、方法を確認します。
本人へ説明する前に、「今日は何のために何をしますか」「痛みに使える方法はありますか」「怖さが強くなったらどう知らせればよいですか」と聞けます。表面の麻酔等の医療上の方法が適するかは、年齢、処置、施設の体制等によって異なります。[1] 麻酔薬などは自己判断で使わず、必要性や使用方法を医療者へ確認します。
処置をその日に行う必要性、延期できるか、別の方法があるかは医療者と相談します。親が怖さをなくすまで待つべきかを、一人で背負わなくてよいのです。「何を優先し、どこを変えられるか」を説明してもらうことで、本人へ伝える内容も具体的になります。
うそをつかず、分かる長さで知らせる
CDCの家族向け予防接種資料は、短い痛み等について正直に伝えること、脅しに注射を使わないことを勧めています。[2] 「絶対痛くない」「何もしない」と約束して連れて行くと、子どもが実際に経験したことと説明が違ってしまいます。分からないことは医療者に確かめると伝えられます。
先ほどの例なら、「血を調べるため、腕から少し取ります。チクッとすることがあります。触る前に声をかけてもらいたいと伝えよう」と、目的と直近に起こることを短く知らせる形が考えられます。詳しい描写を全部する必要はありません。その子が何を知りたがるかを聞き、説明の量を医療者と調整します。
一度伝えたら理解できるはず、という前提も置かなくてかまいません。怖さが強いと話を聞きにくい場合もあります。本人が理解した言葉で、次に何が起きると思っているかを確かめ、違う部分は説明し直せます。知識の正解を答えさせる試験にしないことが大切です。
選べることは、実際に選べる範囲で
見ていたいか目をそらしたいか、医療者の合図を聞きたいか、好きな物を近くに置きたいか。こうしたことが可能かを医療者と相談できます。[2] ただし、どの処置でも同じ方法が使えるとは限りません。実際には選べないことまで二択にして、本人が断ると約束を取り消す形にしないよう考えます。
「終わるまで動かないで」とだけ求めるより、姿勢や付き添い方を医療者に説明してもらえます。体をどう支えるか、誰がどこにいるかは、安全と本人の負担を含めた医療側の検討が必要です。付き添う大人が困ることも含め、医療者と安全な方法を相談します。
本人が泣いた場合も、勇気がなかったと叱る必要はありません。CDCの家族向け資料は、泣く子どもを支え、勇敢でないと非難しないよう示しています。[2] 泣きながら処置を受けたことと、つらさが小さかったことは同じではありません。終わってからも本人の感覚を聞けます。
付き添う大人も針を見るのがつらい場合は、そのことを医療者へ伝えられます。子どもを安心させるために親が平気なふりを続けることだけへ頼らず、誰がどう付き添えるかを相談する材料にできます。
終わった後は、できたかに加えて何が役立ったか
「ほら平気だったでしょ」とまとめる前に、「どのところが怖かった?」「次も同じ説明があるとよい?」と、本人が話せる範囲で聞けます。今は振り返りたくないなら、先に休んでかまいません。処置ができたことを、次回から支援はいらないという判断に直結させないことが大切です。
医療上、受診後の変化について注意が必要な場合は、担当者の説明を受け、どんな症状をどこへ知らせるかを確認します。[2] 心配な体調変化を、怖がったせいと決めて心理的な対応だけで待たないでください。採血と予防接種の注意点も同じではないので、実際の処置に即して聞きます。
受診のたびに強い苦痛があり、必要な医療を受けにくい場合は、小児科等へ継続した支援の相談ができます。家庭で針や血へ慣らす練習を始めるのでなく、本人の怖さと必要な医療の両方を扱える専門家につながる方法を尋ねます。
ALVARAは18歳以上の保護者ご自身の迷いや医療者へ頼む言葉を整理する相談で、医療処置や子どもの専門治療を提供するとの意味ではありません。「受診は必要と説明されていますが、本人の怖さも伝えたい。医療者へ何を確認するか整理したい」という相談から始められます。
関連する心理コラム
参考・引用文献
記事のつくり方
記事ごとの関連資料は本文末尾に掲載しています。情報源の選定、更新、訂正、心理療法・心理検査の掲載範囲については、記事のつくり方を確認できます。
このコラムについて
本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。