結婚するか迷うとき|周囲の期待と二人の暮らしを分けて考える

結婚するか迷うときは、好きかどうか一つの答えだけで決めなくてもかまいません。二人の暮らしについてまだ分からないことと、自分が大切にしたいことを分けて考えられます。

好きなのに迷うことは、矛盾とは限らない

説明用の例です。パートナーから結婚の話が出てうれしい一方、住む場所や仕事、家事の分担を想像すると不安になります。周囲は祝福する雰囲気で、「本当に好きなら迷わないはず」と自分の気持ちを確かめ続け、肝心な暮らしの話ができなくなっています。

相手を大切に思うことと、ある生活の形に同意できることは別です。「この人が好き」と「自分の仕事をどうするかがまだ決まらない」は同時に成り立ちます。迷いを全て愛情の少なさへ換算すると、確認できる用事まで心の中だけで解こうとしてしまいます。

反対に、具体的な心配がはっきりしなくても迷うことはあります。長く一緒に過ごすことへの怖さ、選ばなかった人生への思い、周囲との比較など、すぐ答えが出ない気持ちもあります。完璧な確信を持つことだけを、話し始める条件にしなくてよいのです。

今分からないことと、すでに合わないと感じることを分ける

先ほどの例なら、住む場所が決まらないのか、移住はしたくないと感じているのかで、次の話は違います。前者は候補や働き方の情報を集める話で、後者は本人の希望を相手へ伝える話です。自分の希望を、情報不足だからと後回しにし続ける必要はありません。

家事や家計も、「協力するつもり」という約束だけで、具体的な生活が分かるとは限りません。平日の帰宅が遅い日、収入が変わった時、家族にケアが必要になった時など、一つの暮らしの場面を話すと、何を二人で決める必要があるかが見えます。全ての将来を予測し尽くすための作業ではありません。

大切なのは、同じ答えを持つことだけでなく、違いが出たときにどう扱えるかです。尋ねると話を打ち切られる、片方の仕事を当然に諦める前提になるなどの場合、結婚する前に自分の感じたことを個別の相談へ持ち込めます。相手への疑いを証明する資料ができてからでなくても構いません。

周囲の期限と、本人たちが決めることを分ける

家族の期待や友人の結婚が重なると、自分の返事も急がなければならないと感じるかもしれません。ただ、周囲に説明しやすい結論と、本人が望む生活は必ずしも同じではありません。結婚する、しない、今は決めない選択を、心理相談で優劣なく検討できます。

妊娠・出産の希望が関わる場合も、相手と同じ希望を持つ義務が生まれるわけではありません。医学的に確認したいことは医療へ、自分が望む人生や怖さは心理相談へというように分けられます。年齢だけから、結婚や治療を急ぐべきだとこの記事が判定することはありません。

保留する場合には、「まだ決められない」を無期限の安心の約束にするより、何を先に話したいかを伝える方法があります。たとえば「仕事を続ける場所と家計の話をしたうえで、改めて考えたいです」と、次に確かめる内容を示せます。相手にも待つかどうかを考える自由があるので、一方が望む結論へ従わせるための言葉にはしません。

不安を話せることと、安全に暮らせることを確かめる

NHSの一般向け情報は、関係の中での尊重や意思疎通とともに、関係を続けない選択も扱っています。[1] 意見の違いがあるだけで危険な関係とは決まりませんが、断ると脅される、行動を制限されるなどの状態を、結婚前の普通の不安として済ませないことが大切です。

内閣府は、暴力を身体的なものに限らず、精神的・性的な圧迫等も含めて説明しています。[2] 怖さがある場合は、相手との話し合いや二人での面談を課題にせず、専門の被害相談窓口等へ個別に安全を相談できます。この文章を相手へ見せることも、本人が安全だと思える場合だけでかまいません。

法律や制度上の扱いが心配なら、暮らす地域や自分たちの状況に応じて、自治体や法律の専門窓口へ確かめます。財産、住居、氏、家族に関する手続きなどを、感情の整理だけで決める必要はありません。法テラスは法制度と相談先の情報を案内していますが、案内担当者自身が個別の法律判断を行うわけではありません。[3]

相談で決めるのは、専門家が好む人生ではない

心理相談では、何を失うのが怖いのか、どこまで自分の希望を言えているか、「家族を安心させること」が本人の決断へどんな重さを持つかを扱えます。結婚する方向へ背中を押すことや、不安があれば別れると決めることを最初の目的にはしません。

本人の自己決定と、支援についての説明は心理職の倫理でも重視されています。[4] 相談先で、特定の家族の形だけが正常だと扱われる、まだ話していない事情から結論を急がされる場合は、違和感を伝えたり別の相談先を検討したりできます。相談を受けたから、その担当者の助言に従わなければならないわけではありません。

説明用の一言:「相手への気持ちはありますが、暮らしの何に同意しているのかがまだ分かりません。周囲への返事と、二人で確かめたいことを分けて考えたいです。」

ALVARAの個人相談は18歳以上が対象です。結婚の可否を判定したり、相手の気持ちを決めつけたりする場ではなく、本人がどんな生活を選びたいかを話す場として利用できます。

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参考・引用文献

  1. NHS Every Mind Matters「Maintaining healthy relationships and mental wellbeing」
  2. 内閣府男女共同参画局「暴力の形態」
  3. 日本司法支援センター(法テラス)「お電話でのお問合せ(法テラス・サポートダイヤル)」
  4. 公益社団法人日本公認心理師協会(2020年理事会議決)倫理綱領

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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このコラムについて

本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。