失敗のあとに自分を責め続けると、直したいことより「自分は駄目だ」という思いが大きくなることがあります。反省をやめるのではなく、次に必要な対応と、自分へのきつい言葉を別にしてみます。
失敗を振り返ることと、自分を否定すること
「連絡を忘れた」は、起きたことです。「だから自分には価値がない」は、その出来事を超えて自分全体を決める言葉です。後者を何度繰り返しても、必要な連絡や、次に忘れないための工夫は具体的になりません。
説明のために、友人との約束を予定に入れ忘れた場面を考えます。まず必要なのは、連絡をして謝ること、予定をどうするか話すことかもしれません。相手が残念に感じる可能性はあっても、「もう誰からも信用されない」と将来すべてを決めることまではできません。一つの出来事に、どこまでの意味を背負わせているかを見てみます。
結果を知った今と、決めた当時を分ける
「あのとき気づくべきだった」という言葉には、結果を知っている今の知識が入り込みます。心理学でいう「後知恵バイアス」は、出来事の結果を知ると、起きる前から予測できたはずだと感じやすくなる傾向です。研究のレビューでも、記憶や理解の組み立て方に関わる現象として整理されています[1]。
振り返るときは、「今なら分かること」と「当時、本当に知り得たこと」を別にします。予定が重なっていたと今気づいても、その知らせが判断の前に届いていたかどうかで、次の対策は変わります。これは責任がないと決める方法ではなく、必要な連絡や確認をどこへ置けばよいかを見つけるための区別です。
自分に言う言葉を、出来事の大きさに戻す
「気にしなくていい」と無理に打ち消すより、「忘れたことは直したい。でも、これ一つで自分の全部は決まらない」と言うほうが、実感に近い場合があります。自分に優しい言葉がかえって落ち着かないなら、まず事実だけにしてもかまいません。「連絡を一件忘れた。これから相手に連絡する」という短さでも十分です。
もし同じことを友人が相談してきたら、どんな事情を尋ねるか考えてみる方法もあります。疲れていたのか、仕事が重なっていたのか、知らせ方が分かりにくかったのか。事情を考えるのは、責任をなくすためではなく、同じ失敗を減らす工夫を見つけるためです。
改善できる点を一つ挙げることと、「次から絶対に間違えない」と誓うことも違います。後者は、疲れや情報不足まで完全に管理する約束になりがちです。「予定を受けたらその場で入れる。難しかったら相手に確認する」のように、人が間違える余地を含む工夫のほうが、日常で使いやすくなります。自分を責める強さではなく、対策が具体的になったかを反省の区切りにできます。
謝ったあとにも責める声が続くとき
必要な対応を終えても、頭の中の反省会は続くことがあります。そのたびに新しい答えを探すより、「連絡はした。次の確認は明日」と区切って、別の用事へ移る方法があります。うまく切り替わらなくても、考え続けていることに気づくだけでよく、すぐ止めるよう自分を追い込む必要はありません。
書くことで整理できる人もいれば、責める材料が増えてしまう人もいます。メモがつらさを増やすならやめて、誰かと短く話す、体を休めるなど違う方法を選べます。どのやり方も、一人で続けなければならない課題ではありません。
いつも自分だけが悪い気がするなら
関係の中で繰り返し責められていると、相手の言い分をそのまま自分の評価として受け取ることもあります。暴力や威圧、嫌がらせがある場合は、自分の考え方を変えることだけに取り組まず、安全に相談できる相手を探してください。
心理相談では、責める言葉が出てくる場面や、間違えることがどれほど怖いかを、急がずに話せます。過去をすべて掘り返して説明しなくても、最近の一場面から始められます。自分を傷つけたくなるほど苦しい、眠りや食事が崩れる場合は、医療や緊急の支援にもつながってください。
参考資料・引用文献:国立精神・神経医療研究センター「認知行動療法マップ・セルフヘルプ」 / [1] Roese NJ, Vohs KD. (2012). Hindsight Bias. Perspectives on Psychological Science, 7(5), 411–426. DOI:10.1177/1745691612454303.
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このコラムについて
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