「自分は駄目」と言う子どもには、自信を持つよう説得するより、何がつらかったかを聞き、結果だけで人の価値を決めない関わりを続けられます。自己肯定感を、ほめ言葉の量だけで育てようとしなくてもよいのです。
一つの失敗が、「自分全部」の話になるとき
説明用に作った例です。発表で言葉が出なかった子どもが「自分だけ何もできない」と言います。ここには、発表がうまくいかなかったという出来事と、自分は価値のない人だという広い結論が混ざっています。「発表への自信」と「自分をどう大切に感じるか」は、関係していても同じものではありません。
親が「そんなことない、上手だった」と評価を返すと、本人には「嫌だったことを分かってもらえない」と感じられる場合があります。まずは「言いたかったのに出なくて、悔しかったんだね」と経験を聞きます。感情を受け止めることは、「何もできない人だ」という結論へ同意することではありません。
落ち着いてから「最初の一文は言えたね」「途中で止まった所は、一緒に考えよう」と、出来事を狭く見直せます。からかいや不適切な扱いがあったなら、本人の考え方だけを変えるのではなく、その出来事へ対応することが先です。
ほめる内容だけでなく、どう届くかも大切です
「天才」「何でもできる子」は温かい言葉でも、子どもによっては、次も高い結果を出す期待と受け取るかもしれません。「分からない所を先生に聞いたね」「別のやり方を試していたね」と、実際に見た行動や工夫を伝えると、次にも使える手がかりを話しやすくなります。
幼少期の家庭でのやり取りを追った研究では、努力や行動に触れるほめ方と、後の「能力は伸ばせる」という考え方との関連が報告されました[1]。これは主に学習への捉え方を調べた観察研究です。「自己肯定感が上がる」「親のほめ方が将来を決める」と証明した研究ではありません。
ほめることと内側からの意欲を扱ったレビューも、効果が一律ではなく、言葉が誠実に感じられるか、自分で選べる感覚があるか、他人との比較や達成しにくい期待になっていないかを重視しています[2]。そこで「努力をほめれば必ずよい」という別の決まりにもせず、本人がどう感じたかを聞く余地を残せます。
努力しても難しいときは、方法や助けを変えます
困っている子どもへ毎回「頑張ったね」だけを返すと、本人が知りたい「なぜできないのか」「どうすればよいか」が残ることもあります。読むこと、聞き取ること、作業の速さなどに負担がある場合は、根性の問題にせず、課題の量や伝え方、道具を学校と考える必要があります。
「聞いてもらいたい? 一緒に方法を考えたい?」と尋ね、まだ考えられなければ休めます。小さくやり直す、一緒に始める、今日は助けてもらうなど、本人が選べる部分を残します。失敗を避けてすべて成功させることも、強くするため一人で耐えさせることも、一律の目標にはなりません。
成果と関係のない時間も、親子にはあります
何もできなかった日にも、食事を取る、好きな話を聞く、ただ隣で過ごすことができます。良い結果を出したときだけ関係が近づくのでなければ、失敗の話も持ち込みやすくなるかもしれません。いつも明るい家庭や、完璧な返し方を作るという話ではありません。
自己評価には学校や友人との出来事、体調、その子自身の受け取り方も関わります。親の言葉だけへ原因を集めることはできません。言い過ぎた日は「あの言い方は強かった。あなた全部を否定したかったわけではない」と話し直す道もあります。ALVARAでは18歳以上の保護者ご自身が、子どもの落ち込みを見たときの苦しさや、比べてしまう焦りを相談できます。
強い自己否定が続くなら、助けを増やします
自分を責める言葉が繰り返され、眠り、食事、登校などに影響している場合は、学校の相談室や医療機関へ相談してください。一つの声かけで解決しようとせず、いつから何が変わったかを伝えられます。
「消えたい」「生きていたくない」などの言葉や自傷の心配がある場合は、ほめ方を工夫して様子を見るだけにせず、安全を確かめ、医療や適切な支援へ早くつなぎます。危険が差し迫る場合は、通常の予約を待たないでください。
参考・引用文献
[1] Gunderson, E. A., Gripshover, S. J., Romero, C., Dweck, C. S., Goldin-Meadow, S., & Levine, S. C.(2013)Parent praise to 1- to 3-year-olds predicts children’s motivational frameworks 5 years later. Child Development, 84(5), 1526–1541. doi:10.1111/cdev.12064 / 厚生労働省「家族で子どもと向きあうポイント」 / [2] Henderlong, J., & Lepper, M. R.(2002)The effects of praise on children’s intrinsic motivation: A review and synthesis. Psychological Bulletin, 128(5), 774–795. DOI: 10.1037/0033-2909.128.5.774.
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このコラムについて
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