突然の動悸や息苦しさが怖いとき|受診と心理相談の入口

突然の動悸や息苦しさは、「不安のせい」と決めず、まず身体の状態を確かめることが大切です。症状が落ち着いた後も「また起きたら」と通勤や外出が怖くなるなら、その怖さも医療や心理相談で話せます。

いま急に苦しいときは、通常の相談予約を待たないでください

急な息苦しさ・呼吸困難、突然の強い胸の痛み、意識がない・反応がおかしいときなどは、救急の対応が必要です。消防庁も、こうした症状をためらわず救急車を呼んでほしい症状として案内しています。119番へ連絡してください。[1] 原因を自分でパニック発作と決め、落ち着くまで待とうとしないでください。

はじめての動悸や息苦しさ、症状が続く・繰り返す場合も、内科などで診察を受けます。不整脈や甲状腺の病気、貧血などが関わる場合もあり、感じ方だけでは見分けられません。[2] 症状の強さや急な変化があるときは、通常の受診の予定を待ってよいかも医療へ確認してください。

以前にパニック症と診断されたことがあっても、新しい症状や、いつもと違う強さ・出方まで同じ原因とは限りません。受診先で今後の対応を聞いておくことと、新しい急変に医療の助けを求めることは、両方大切です。

パニック発作と、パニック症は同じ意味ではありません

パニック発作は、急に強い恐怖や不快感が高まり、動悸、発汗、息苦しさ、めまいなどの症状を伴う体験を指します。パニック症だけで起きるものではなく、一度そのような発作を経験しただけで、直ちにパニック症と決まるわけではありません。[3][4]

パニック症の診断では、予期しない発作を繰り返しているかに加え、その後も発作への心配が続くか、また起きることを恐れて行動が変わったかなどを医師が確かめます。[4] 発作が起きた時間だけでなく、その前後の暮らしが診察の手がかりになります。自分で症状の数や経過をそろえてから受診する必要はありません。

発作のない時間にも、「また起きたら」が続くことがあります

ここからは説明用の例です。通勤電車で急に胸がどきどきし、息が吸えないように感じ、「このまま倒れるかもしれない」と怖くなった場面を考えます。まず症状について医療の助けを求め、診察や必要な確認を受けることが先です。

その後、動悸が出ていない朝にも、「次の駅まで降りられなかったら」「誰にも助けてもらえなかったら」と不安になるかもしれません。こうした、再び起きることへの不安は「予期不安」と呼ばれます。電車を避けるため毎朝遠回りし、遅刻を心配して睡眠も削るなら、発作の頻度だけでは負担を捉えられません。[2][4]

医師には、発作があった日のことと、その後にできなくなったことの両方を伝えられます。「今週は発作がありません」だけでなく、「一人で電車に乗れず、送ってもらう必要があります」も大切な情報です。逆に通勤できていても、帰宅後に動けないほど消耗しているなら、その負担も話せます。

身体の感覚と、怖い意味づけが重なるとき

パニックを理解する一つの認知モデルでは、身体の感覚を「重大なことが起きる証拠」と受け止め、その怖さがさらに身体の反応や注意を強める流れを考えます。[5] 先ほどの電車の例でも、胸のどきどきを感じた瞬間に「倒れる」と思うと、鼓動や息の変化がいっそう気になるかもしれません。

これは、症状が気のせいだという説明ではありません。また、このモデルだけで心臓や呼吸の問題を否定することもできません。身体の診察を受けながら、どんな感覚を、どのように怖く受け止め、その後の行動がどう変わるかを理解するための見方です。全ての発作が、本人の考え方だけで生まれるという意味ではありません。

受診では、原因と次の対応を一緒に尋ねられます

診察では、いつ何をしているときに始まり、どんな症状が出て、どのくらい続いたかを、分かる範囲で話します。持病、使っている薬、最近の体調の変化なども伝えてください。受診歴や検査の結果があれば見てもらえますが、記録がそろうまで相談を待つ必要はありません。

医師への伝え方の例:「電車の中で急に動悸と息苦しさが出ました。その後、また起きるのが怖くて通勤が難しくなっています。身体の原因を確かめることと、次に症状が出たときの受診の目安を相談したいです」

説明を聞いても「どの変化ならもう一度受診するのか」が分からなければ、そこを聞き直せます。症状が出たときの対応を医師と確かめることは、原因を自分で決めるためではなく、必要な行動を取りやすくするための相談です。不安の強さだけで、医療が必要かを判断しないでください。決めた対応があっても、新しい急変には救急の助けを求めてください。

パニック症の治療では、取り戻したい行動も考えます

パニック症を扱う医療機関では、今の状態や希望に応じ、認知行動療法(CBT)や薬物療法などを検討します。英国NICEの成人向け指針は、CBTを選択肢として示し、適切な訓練を受けた治療者が進めることを求めています。[6] 成人パニック症に関する指針であり、原因を確かめていない動悸を心理療法だけで扱う根拠ではありません。

CBTでは、身体の感覚への受け止め方や、怖さを避けるための行動が暮らしにどう影響しているかも扱います。専門治療の中で身体感覚や避けている場面を計画的に扱うことがありますが、身体の状態と安全を確かめることが前提です。この記事から、自分で動悸や息苦しさを起こしたり、怖い場所で耐え続けたりする課題を始めないでください。

電車の例なら、発作が何回減ったかとともに、必要な移動ができるか、付き添いの負担やその後の疲れがどうかを振り返れます。合わない、つらすぎる、生活の事情で続けにくい場合も担当者へ伝え、進め方を見直します。認知行動療法の概要や曝露療法の説明は、治療の説明を受けるときの参考になります。

心理相談では、身体の診察と別に、怖さや生活の負担を話せます

心理相談では、怖かった体験、また起きる心配、通勤や一人の外出を避けるようになったことを整理できます。診断がまだ決まっていなくても、不安を話すことはできますが、身体症状の診察を心理相談で代わりに行うことはできません。医療と心理的な支えを並行して使うこともあります。

周囲に助けを求めるときも、病名を詳しく説明することから始めなくてかまいません。「体調が悪いので、駅員さんを呼ぶのを手伝ってください」「受診に付き添ってほしいです」と、今必要な助けを短く伝えられます。職場へどこまで話すかは、必要な配慮や相談窓口、情報の扱いを確かめながら考えられます。

ALVARAの個人向け心理相談は18歳以上が対象です。体験後の怖さや暮らしの負担、受診への迷いを話せます。診断・薬の処方、救急の対応は行いません。パニック症の専門治療が必要な場合は、対応する医療機関や専門家につながることも含めて考えます。広く続く心配は不安が頭から離れないとき、相談先の違いはカウンセリングを受ける目安でも説明しています。

参考・引用文献

  1. 総務省消防庁(2025年12月)救急車を上手に使いましょう―救急車 必要なのはどんなとき? 印刷頁3「おとな」ほか.
  2. 国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」不安症:パニック症/不安症の対処方法と治療「はじめに」.
  3. 厚生労働省「こころの耳」用語解説:パニック発作.
  4. National Institute of Mental Health.(2025)Panic Disorder: What You Need to Know.
  5. Clark, D. M.(1986)A cognitive approach to panic. Behaviour Research and Therapy, 24(4), 461–470. DOI: 10.1016/0005-7967(86)90011-2.
  6. National Institute for Health and Care Excellence.(2011, updated 2020)Generalised anxiety disorder and panic disorder in adults: management. CG113, recommendations 1.3.6, 1.3.12–1.3.14, 1.3.38–1.3.40.

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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このコラムについて

本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。