災害や事件のニュースを見るのがつらいとき|情報との距離を考える

災害や事件のニュースがつらくても、情報を見続けることが関心や思いやりの証明になるわけではありません。自分に必要な安全情報と、同じ映像を繰り返し見ることを分けると、情報との距離を選びやすくなります。休むことと、出来事を大切に思うことは両立します。

知っておきたいのに、見たあと休めないとき

新しい情報がないか確認しているうち、つらい映像が次々流れる。画面を閉じても場面が浮かび、眠る前にも検索したくなる。被害に遭った人を思うと、自分だけ普段通りに過ごすのが悪い気がすることもあるかもしれません。

米国の事件後の調査では、報道への繰り返しの接触と、急性のストレス反応に関連が見られました。[1] ただし、視聴が単独で原因だったと断定できる調査ではありません。海外の一事件の結果から、自分の病気や安全な視聴時間を判定することもできません。

米国CDCも、情報を知ることは大切としつつ、ニュースやSNSから休憩を取ることを案内しています。[2] 「見ないと無責任」と自分へ課すより、何を知る必要があり、どの接し方が今の自分に負担かを分けて考えられます。

まず、今の安全に関わる情報を残す

自分の地域で災害が起きている、避難や交通の情報が必要、家族の安否を確認している状況なら、情報を一律に断つことは勧めません。自治体や気象・交通などの正式な発信元から、自分の行動に必要な更新を確かめることを優先します。

一方、遠方の事件の同じ映像を繰り返し見ることと、自分の避難先を確かめることは目的が違います。「今、どんな行動を決めるために開いたのか」を言葉にできると、目的を終えたあとも見続けていることに気づける場合があります。気づけなかった日を責めるためのルールではありません。

被災した家族のことが心配なら、確認する窓口や連絡の方法を、可能な範囲で整理します。返事がない不安を、無関係な映像を追うことで埋めようとしていないかを分ける視点です。安全確認が済んでいないときの不安は、単なる考えすぎと扱わず、現実に必要な支援を考えます。

見る時間だけでなく、形式や流れを変えられる

ここからは説明用の例です。就寝前に事件の続報を一つ読むつもりでSNSを開き、関連動画を次々見てしまう場面を考えます。このとき、「一日何分まで」と厳しく決めるだけでなく、動画が続けて流れる入口を変える、文章で要点を確認する、必要な情報源を直接開くといった選択があります。

自動再生や通知の設定を見直す、寝る直前の確認を別の時間に移す、負担の強いアカウントの表示を一時的に減らすなど、自分で選べる部分から検討できます。文字で読むのもつらい人には、それが唯一の正解ではありません。何を変えると生活への影響が違うかを、無理のない範囲で確かめます。

仕事上、情報を扱う必要がある場合は、本人の設定変更だけでは足りないことがあります。担当や閲覧量、休憩、共有方法について、管理者や産業保健など正式な窓口で調整する対象です。「仕事だから平気でなければ」と、自分の反応を隠して耐える必要はありません。

家でテレビがついていて離れにくいなら、「この映像のあと眠れなくなるので、今は別の部屋にいたい」「食事の間は消してほしい」と具体的に頼む案があります。家族全員の関心や心配の持ち方を同じにするより、共有の場所で何を減らせるかを相談できます。

関心を持つことを、苦しみ続ける義務にしない

「被害を受けた人はもっとつらいのに」と思うと、休む許可を自分に出せなくなることがあります。けれど、自分が消耗することが、相手の被害を減らすわけではありません。出来事を大切に思う気持ちは、視聴の長さだけでは測れません。

支援したい場合も、今すぐ何かしなければならないわけではありません。公的な案内を後で確かめる、生活に余裕が戻ってから考える、何も引き受けず関心を持っていることもできます。寄付や参加には経済や体力の条件があります。行動できないことを、思いやりの欠如として評価しなくてかまいません。

出来事が自分の過去の経験を思い出させる場合、理解するために映像を見直し続けたり、細部を調べたりする必要はありません。苦しくなる内容へ自分を慣らす練習を、一人で課さないでください。どの話題に触れるか、どこで離れるかも相談できます。

生活への影響が続くなら、見ていた内容より困り方を話す

眠れない、集中できない、食事が進まない、外出が怖くなるなどの影響があるなら、医療や心理相談で話せます。「現地にいなかったので相談する資格がない」と考える必要はありません。一方、ニュースを見てつらくなったことだけから、PTSDなどの診断を決めることもできません。

説明例なら、「寝る前に映像を見てから、同じ場面が浮かび、翌日の仕事に集中できません」と伝えられます。担当者に詳しい映像を再現したり見せたりしないと、負担が伝わらないわけではありません。「細かい内容は今は話さず、睡眠のことから相談したい」と希望を出せます。

自分が被害を受けた状況や、今も危険な場所にいる場合には、情報との距離だけでは足りません。現実の安全、住まい、医療、生活支援を優先します。心理的な工夫で危険な環境に耐えることを、目標にしなくてよいのです。

家族や友人が繰り返し動画を送ってくる場合も、「文章で必要な情報だけ送ってほしい」「今は関連する映像を受け取りたくない」と頼めます。送る側の心配や善意があっても、受け取る側が同じ形式で見続ける必要はありません。自分に合う情報の受け方を伝えることも、日常の調整の一つです。

今夜の一歩を選ぶなら、「何を確認するために見るか」を一つ決め、必要な情報を得たら生活へ戻る案があります。うまく区切れなければ、その難しさを相談できます。出来事を忘れずにいることと、自分の食事や睡眠を守ることを、競わせる必要はありません。

関連する内容は、SNSを見て疲れてしまうとき、トラウマとPTSDの違い、ストレスコーピングとはでも読めます。

参考・引用文献

  1. Holman, E. A., Garfin, D. R., & Silver, R. C. (2014). Media’s role in broadcasting acute stress following the Boston Marathon bombings. PNAS, 111, 93–98. doi:10.1073/pnas.1316265110.
  2. CDC. (2026). Managing Stress.

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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