性的な希望が合わないとき、どちらかが我慢して応じれば解決するとは限りません。まず断る自由が保たれているかを確かめ、そのうえで何を望み、何が負担なのかを分けて相談できます。
希望の違いと、同意を尊重しないことは別の問題
性行為を望む頻度やタイミング、好む触れ合いが違うことはあります。望む側の寂しさも、望まない側の負担も話してよい気持ちです。ただし、寂しさを理由に相手の同意を求め続けたり、断られた後に罰するような態度を取ったりすることは、単なる好みの違いとして済ませられません。
内閣府は、対等な関係で意思を確認し尊重すること、一つの行為への同意はほかの行為への同意ではないことを示しています。[1] 交際や結婚をしていること、過去に応じたこと、同じベッドに入ったことだけで、今回の同意が決まるわけではありません。途中で気が変わったときも、続ける義務はありません。
断ると怒鳴られる、脅される、避妊に協力してもらえないなどの場合は、相手を上手に説得することを最初の課題にしないでください。安全な場所から、性暴力の支援窓口や配偶者暴力相談支援センター等へ個別に相談する道があります。[2] 二人での面談や、この文章を相手に見せることも、安全が確かめられなければ勧められません。
「回数が違う」だけでは、困っていることが見えない
ここからは、互いに断る自由があり、話すことが安全な関係の説明用の例です。一人は「誘いを断られると、もう愛されていないと思う」。もう一人は「抱きしめるだけのつもりでも性行為を期待されそうで、触れ合い自体を避ける」と感じています。同じ夜の出来事でも、守りたいものが違います。
前者は、性行為の回数だけでなく、求められている実感を望んでいるのかもしれません。後者は、触れ合いを嫌っているのではなく、断った後の気まずさや期待の重さを避けているのかもしれません。これは相手の本音を推測して決める説明ではありません。「回数を増やせば二人とも楽になる」と急ぐ前に、本人が確かめられる違いです。
欧州性医学会の声明は、性的欲求のずれを一方の人の障害としてだけ捉えず、二人の関係、時間や行為の違い、互いの捉え方にも目を向けています。行為の頻度は欲求そのものを表すとは限りません。[3] ただしこの声明は研究の不足を明記し、主に専門家の見解に基づきます。特定の会話や工夫で必ず改善することを実証した治療試験ではありません。
今してよい触れ合いを、将来の約束にしない
先ほどの例なら、「今日は隣で映画を見るのはうれしいけれど、性的に触れられることは望んでいない」と、今の希望を具体的に伝える方法があります。聞く側は、「では明日はいいのか」と交換条件にせず、その日の返事として受け取ることが大切です。断った理由を詳しく説明し切らなければ、拒否できないわけではありません。
望む側は、「拒まれたようで寂しくなる。でも応じてほしいという要求とは分けて話したい」と、気持ちと相手への依頼を区別できます。寂しさを感じないように努力することと、相手の意思を尊重することは同じではありません。感情は残っていても、押しつけない行動を選ぶ余地があります。
話すなら、断った直後や寝る直前より、互いに落ち着いて終えられる時間を選べるとよいでしょう。ただし「毎週話す会を作る」などの宿題は必要ありません。話題にするだけで疲れる時期には、今は保留する、個別に相談して言葉を探す選択もあります。性行為以外の親密さを、望まない触れ合いに同意する代わりとして義務にしないことも大切です。
痛みや急な変化は、愛情の問題だけで説明しない
性欲や性機能には、疲労や生活状況、身体の病気、気分、薬などが関わる場合があります。NHSの患者向け情報も、関係だけでなく、心身の状態や薬の影響を含めて受診で相談することを案内しています。[4] 希望が少ない人を病気と決めるための情報ではありません。
痛み、出血、勃起や射精の変化、乾燥などがあるときや、急に状態が変わり気になるときは、婦人科・泌尿器科・かかりつけ医等で相談できます。服薬との関係が心配なら処方医へ伝え、自己判断で中止や変更をしないでください。「相手が満足するため」ではなく、本人の苦痛や健康のために相談してよいのです。どの診療科か迷う場合は医療機関の案内窓口へ尋ねられます。
相談では、関係を続ける前提まで決めなくてよい
心理相談では、希望を言いにくい理由、拒まれたときの意味づけ、近づきたいのに避けるようになった流れなどを扱えます。二人で受ける支援では、どちらが相談者で、個別に話した情報をどう扱うか、片方だけが続けたい場合はどうするかを、利用前に確かめる必要があります。個人相談で、参加していないパートナーの気持ちや病名を決定することはできません。
性的な悩みに対応する訓練・経験のある医療機関や心理支援機関へ、対象と方法を問い合わせられます。一般的なカウンセリングがすべて性機能の専門治療やカップル療法を提供するわけではありません。身体の診療、本人の心理相談、関係についての支援を必要に応じて分けます。無理に歩み寄ること、別れることのどちらかを、相談の条件にする必要もありません。
説明用の相談の一言:「性行為の回数を決めたいというより、断ることが怖くなり、普段の触れ合いも避けています。希望と負担を、安全に話せるところから考えたいです。」
ALVARAの個人向け心理相談は18歳以上が対象です。本人の気持ちや関係への迷いを扱う場で、診断・処方や、ここで紹介した専門的な性機能治療の提供を意味するものではありません。強要や切迫した危険があるときは通常の相談予約を待たず、専門の被害支援・警察・医療へつながることを優先してください。[2]
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参考・引用文献
- 内閣府男女共同参画局(2024)「共同参画」3・4月号・若年層の性暴力被害防止の啓発について
- 内閣府男女共同参画局「相談機関一覧」
- Dewitte M, Carvalho J, Corona G, et al. (2020). Sexual Desire Discrepancy: A Position Statement of the European Society for Sexual Medicine. Sexual Medicine, 8(2), 121–131. DOI:10.1016/j.esxm.2020.02.008.
- NHS(2026年5月26日更新)Low sex drive (loss of libido)
記事のつくり方
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このコラムについて
本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。