相手が不機嫌だと、自分が悪いと感じてしまうとき

相手が不機嫌なとき、「自分が原因だ」と感じても、それだけで責任が決まるわけではありません。起きたことと推測していること、自分が対応できる用事を分けて考えられます。

ため息一つから、謝る理由を探してしまう

説明用の例です。一緒に暮らす人が帰宅して返事をあまりしません。朝の会話が悪かったかと考え、先に謝り、食事を作り直し、予定していた外出もやめます。相手が少し笑うとほっとしますが、翌日も表情を確かめ続け、自分の疲れには気づきにくくなっています。

この場面で分かるのは、返事が短かったことやため息があったことです。自分への怒りなのか、仕事の疲れなのか、体調が悪いのかは、まだ分かりません。「私のせいかもしれない」という心配が、「私が直さなければならない」という義務へ、すぐにつながっているのかもしれません。

過去に機嫌を損ねるとつらいことが起きた経験があれば、相手の変化へ早く気づこうとしてきた場合もあります。ただし、この一場面だけで生育歴や愛着、病名を決めることはできません。まず、気分を確かめるために自分の生活をどこまで変えているかを考えます。

自分の行動への責任と、相手の気分全体への責任は違う

約束を忘れた、傷つける言葉を言ったなど、具体的なことが分かれば、その行動へ謝罪や修正を考えられます。一方、原因の分からない沈黙について、思いつく全てを謝っても、何を直すべきかは明確になりません。謝罪の数が増えるほど、相手の気分を完全に管理できるようになるわけでもありません。

先ほどの例なら、対等に尋ねられる関係では、「疲れているように見えるけれど、何か私に伝えたいことはある?」と確認する方法があります。返答が「今は休みたい」なら、その言葉を一度受け取り、自分の予定に戻る余地があります。何度も「本当に怒っていない?」と確かめる必要が強くなるなら、その怖さ自体を相談できます。

「朝の約束が変わって困った」と具体的な返答があれば、そこを扱います。相手の全ての不快感を消すことより、二人に関わる用事を決め直す話にできます。相手を理解することと、相手の望みを全て実現することは違います。自分にできない要望は、できないまま話題にしてよいのです。

分からない気持ちを、すぐ悪い方へ確定しない

NHSの一般向け情報は、人間関係の行き違いで、事実と自分の解釈を分けて捉える視点を示しています。[1] これは「相手は絶対怒っていない」と楽観する方法ではありません。まだ知らないことを、知らないまま扱い、必要なことだけ確かめる考え方です。

たとえば、「返事が短い」は確かめられる行動で、「私に失望している」は今の推測かもしれません。そのうえで、「夕食は一緒に取るかだけ確認したい」のように、生活に必要な問いへ近づけます。相手の心を完全に当てることが、予定を決める条件にならなくて済む場合があります。

この区別が難しいとき、頭の中で整理できなければ失敗という話ではありません。「相手が黙ると、自分の予定が全部止まる」と、その流れを心理職へ伝えられます。自分の感じ方を否定して相手へ合わせるのでなく、怖さが強くなる場所と、使える助けを探します。

沈黙が、相手を従わせる圧力になっている場合もある

誰にでも静かに休みたい時間はあります。一方、拒否すると物を壊す、長く無視して要求を通す、外出や交友を制限する、生活費を渡さないなどの行為が重なるなら、自分の受け取り方だけの問題ではありません。内閣府も、そのような精神的・経済的な圧迫等を相談対象の例として挙げています。[2]

個々の法的な該当性は専門窓口で確認しますが、「殴られていないから相談できない」と決める必要はありません。怖くて尋ねられない関係では、上の確認の言葉を試すことを課題にしないでください。安全な方法で、配偶者暴力相談支援センター等へ個別に相談できます。[3]

相手に反応しない練習を突然始めると危険が増す場合もあります。距離の取り方、連絡手段、生活上必要な助けを、現実の状況に合わせて考えます。本人が安心できる家族や友人に気持ちを聴いてもらうことは支えになりますが、相手を説得する役目を勝手に頼んだり、相談を知られることを前提にしたりしない方がよい場合があります。

相談では、「どうすれば機嫌を直せるか」以外を話せる

心理相談では、相手の気分を察することで何を防ごうとしているか、察した後にどんな行動を取り、何が失われているかを扱えます。「我慢できない自分が悪い」という話からでなく、「外出をやめるほど怖い」という生活の影響から伝えてかまいません。

目標も、全く気にしない人になることに限りません。具体的な用件を一つ確かめられる、理由の分からない謝罪を少し待てる、自分の予定を相談できるなど、本人が望む形を考えます。安全の問題がある場合は、その確保を先にします。相手の性格や診断を決めることで、答えを出す相談ではありません。

説明用の一言:「相手が黙ると、何か失敗したと思って謝り続けます。実際に私が対応すべきことと、分からない相手の気分を分けたいです。安全に尋ねられる関係かも含めて相談したいです。」

ALVARAの個人相談は18歳以上が対象です。眠りや食事が崩れる状態が続く場合は医療機関にも相談でき、切迫した危険があるときは通常の予約を待たず、警察・医療等の緊急の助けを優先してください。

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参考・引用文献

  1. NHS Every Mind Matters「Maintaining healthy relationships and mental wellbeing」
  2. 内閣府男女共同参画局「暴力の形態」
  3. 内閣府男女共同参画局「相談機関一覧」

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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このコラムについて

本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。