日本語で気持ちを説明しきれないときは、使いたい言葉や、分かりやすい話し方を相談できます。日常会話ができることと、つらい経験を十分に話せることを、同じ条件にしなくてかまいません。利用できる言語や通訳等の対応は、予約前に窓口へ確かめます。
言葉が出ない理由を、語学力だけにしない
「悲しい」に近いけれど違う、母語なら一つの言葉で言える、家族関係の説明には背景が要る。そんなとき、日本語をもっと勉強してから相談しようと考えるかもしれません。けれど、相談は、整った言葉を提出する試験ではありません。
説明用の例です。普段は日本語で働いている人が、亡くなった家族の話になると「大丈夫です」しか言えなくなります。仕事の会話ができることから、相談にも言葉の助けは要らないと判断されると、話したいことが残ります。「この話は母語のほうが近い言葉を選べます」と伝えることができます。
一方、言葉の詰まりが全て言語の違いで説明できるとも限りません。緊張、疲れ、話したくない内容、相手への不安もありえます。使う言語を変えるのか、話す速度を落とすのか、今はその話題を扱わないのか、本人の希望を聞きながら確かめることが大切です。
予約前には、言語と相談内容の両方を確かめる
対応言語の表示があっても、その言語でどの範囲の相談ができるかは機関によります。担当者自身が使うのか、通訳が入るのか、紹介先の案内なのかも違います。NICEの成人精神保健の指針は、本人が理解できる言葉や、必要な場合の通訳への配慮を示しています。[1] 英国の指針であり、国内の全施設で同じ体制が使えるという意味ではありません。
- 何語で相談したいか。必要なときだけ別の言語を使えるか。
- その方法で、自分が相談したいテーマを扱えるか。
- 通訳等の予約、費用、時間の追加はあるか。
- 予約の連絡や書類も理解できる方法にできるか。
問い合わせでは、つらい経験の詳細を最初から書く必要はありません。「日本語では家族の話を説明しにくいので、言葉の支えについて相談したい」と、希望から伝えられます。ALVARAについても、多言語対応や通訳の提供をこの記事が約束するものではありません。現行の案内を確かめてください。
通訳と、身近な人の同席は同じではない
身近な人が一緒だと安心する場合があります。一方で、その人に知られたくない話を避けたり、本人より先に説明してもらったりして、自分の希望が伝わらない場合もあります。家族が日本語を話せることだけで、通訳を任せると決めなくてよいのです。
厚生労働省の医療機関向けマニュアルも、家族・友人等による通訳には、専門の通訳体制とは異なる問題があると整理しています。[2] これは医療での資料ですが、心理相談でも「言葉を訳す役割」と「本人を支える役割」を区別して質問する手がかりになります。
子どもに親のつらい経験や大人同士の関係を訳してもらうことを、当たり前の役割にしないようにします。通訳を希望するなら、担当者の役割、守秘の説明、途中で話しにくくなった場合の対応を確かめます。家族の同席を望む場合も、本人だけで話す時間が必要かを考えられます。本人の希望と安全を、予約の都合だけで置き去りにしないことが大切です。
説明を聞き直すときは、「分からない所」から始める
うなずいた後でも、分かったふりを続けなくてかまいません。「今の言葉の意味を、別の言い方で教えてください」「次回までに私がすることを、一つずつ確認したいです」と伝えられます。内容を短く区切って確かめることは、説明が十分伝わったかを確認する方法であり、相談者の理解力を採点するためのものではありません。[3]
母語の短い言葉を紙に書く、分かる範囲で言い換える、担当者がどう受け取ったかを聞く方法もあります。言葉が持つ文化的な意味を、自分一人で全て説明する義務はありません。担当者の解釈が違えば「その意味とは少し違います」と戻れる進め方を相談できます。
翻訳アプリ等を使う場合も、機微な内容がどこに送られ、保存されるのかを確認してから使います。人名や詳しい経緯を外部の道具へ入れることを、相談者に当然の準備として求めるものではありません。使わない希望や、別の方法も伝えられます。
言葉の準備が整うまで、必要な支援を待たなくてよい
持参するなら、「今一番困る場面」「伝えたいのにうまく訳せない言葉」「相手にしてほしくない進め方」のうち、一つだけでも十分です。分からない部分は空白のまま、面談で一緒に確かめられます。
説明用の相談例:「日常の日本語は話せますが、つらさを説明すると言葉が出ません。使いやすい言葉や通訳の選択肢を確認し、説明が伝わったかを途中で確かめながら進めたいです。」
急な体の異変や命の危険があるときには、適切な医療等へつながることが優先です。完璧に訳せるまで一人で待たず、まず言語の助けが必要なことと現在の困りごとを、利用する機関へ知らせてください。話す言葉を選ぶことも、支援を受ける条件を整える一部です。
関連する心理コラム
参考・引用文献
記事のつくり方
記事ごとの関連資料は本文末尾に掲載しています。情報源の選定、更新、訂正、心理療法・心理検査の掲載範囲については、記事のつくり方を確認できます。
このコラムについて
本記事は一般的な心理情報の提供を目的とし、判断・支援の代替ではありません。記事で紹介する心理療法・支援法のすべてを当サービスが提供していることを示すものではありません。体調や安全に不安がある場合は、医療の窓口または地域の相談窓口をご利用ください。