退職を伝えるのが怖いとき|決断した後のやり取りを相談する

退職を決めても、伝える怖さがすぐになくなるとは限りません。意思を表すこと、日程や引継ぎを確認すること、威圧から自分を守ることを、別々に準備できます。

「辞めるか」ではなく、「伝えた後」が怖いとき

説明用の例です。次の働き方を考えて退職を決めたのに、上司へ面談を頼む文章を何日も書き直しています。「今辞めたら無責任と言われる」「理由を説明している間に、続ける約束をしてしまう」と考え、送る直前に消してしまいます。決断が足りないというより、相手の反応を引き受けることが怖い場面です。

ここでは、全員に納得してもらえる理由を完成させることを、連絡の条件にしないで考えます。お世話になったことへの感謝、残る人への心配、自分が働き方を変えたい気持ちは同時に存在できます。感謝があるから必ず残る、迷惑を全くかけない退職だけがよい退職、という二択ではありません。

ただし、まだ辞める意思が決まっておらず、勤務条件の変更を希望する場合は、相談の目的が違います。「辞めると伝える練習」をする前に、退職の意思を知らせたいのか、続ける条件を相談したいのかを区別します。ここが曖昧なまま相手の説得に応じると、何を自分で決めたのか分からなくなることがあります。

伝える前に、意思と手続きを分けて確認する

厚生労働省は、労働契約の終了には、合意による退職や労働者からの辞職などの区別があり、契約期間の有無等によって確認点が異なることを説明しています。[1] すべての人へ「今日伝えれば同じ日に辞められる」といった一律の助言はできません。

まず、労働契約や就業規則で、申出先と手続きの案内を確かめます。希望する退職日、提出が必要なもの、引継ぎの相談先を確認するためです。一方、就業規則だけを見て自分の法的な立場が全て決まると考える必要もありません。会社の説明と合わない、契約の解釈が分からない場合は、公的な労働相談や弁護士等へ個別に確認します。

退職後の生活費や保険、次の仕事の開始日は、相手を納得させるためでなく、自分の暮らしを守る情報です。手続きが分からないなら、人事等へ先に案内を尋ねる方法もあります。診断や私生活の事情を詳しく開示しなければ、手続きを聞けないとは限りません。

一度の面談で、全てに返事をしなくてもよい

先ほどの例なら、最初の連絡は「退職の意思をお伝えし、手続きを確認する時間をいただきたいです」と、話す目的を短く示す方法があります。理由を述べる場合も、事実と違う話を作る必要はありません。詳しく話したくない事情は、どこまで伝えるかを考えられます。

引き止められたときの言葉は、説得に勝つ台本ではなく、意思を見失わないための支えです。「ご配慮はありがたいですが、退職の意思は変わりません。日程と手続きについて確認したいです」と戻せる場合があります。条件を聞いて本当に再検討したいなら、その場で結論を約束せず、「持ち帰って考えます」と時間を取る道もあります。

代わりの人を自分で見つける、全ての業務を完了させるなど、実現できるか分からない約束を怖さから引き受けないことも大切です。引継ぎで何ができるかと、人員配置を誰が決めるかは別です。「現在の業務一覧を出します。優先する引継ぎ先と範囲を相談したいです」と、職場で決める話へ戻せます。

反対される不安と、現実の威圧は分ける

相手の落胆を見るのがつらいことと、脅しや暴言を受けて安全に話せないことは違います。「損害を全て払わせる」などと言われた場合、正当な請求かどうかをその場で判断したり、怖くて書面に署名したりする前に、労働相談や法律の専門家へ確認してください。

総合労働相談コーナーは、労働条件や退職をめぐる問題などの相談や、解決制度の情報提供を行います。[2] 社内で相談できない場合に、まず外で状況を説明する道があります。記録がすべて揃わなくても、言われたこと、日時、手元の書類など、分かる範囲から伝えられます。

直接会うことが危険なら、「勇気を出して対面で」という練習を優先しません。正式な窓口や連絡方法を、専門家と相談します。心理的な怖さへの支援は、現実の威圧へ慣れるために行うものではありません。切迫した危険があるときは、その場を離れ、警察等の緊急の助けを求めてください。

罪悪感があっても、手続きを進められる

退職を伝えられた後、「あの人に冷たくされた」と何度も思い返すこともあります。自分の選択への納得と、関係が変わる寂しさは別です。後悔が少し出たから決断が全て間違いだった、とすぐに戻さなくてもかまいません。

心理相談では、相手に不満を持たれることがどんな意味になるのか、感謝と義務がどこで結びつくのかを話せます。「退職の言い方さえ正しければ怖くないはず」と自分を追い込まず、伝える前後に使える支えや、今は返事をしなくてよいことを考えます。会社への法的な代理や退職手続きそのものとは役割が違います。

説明用の相談の一言:「辞める意思は決まっていますが、引き止められると相手を安心させる約束をしてしまいそうです。手続きの確認と、私が変えない意思を分けて準備したいです。」

ALVARAの個人相談は18歳以上が対象です。退職を勧めたり止めたりする結論を先に置かず、本人の怖さや希望を扱えます。退職可能日、損害賠償、契約の効力等は専門窓口で個別に確認してください。

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参考・引用文献

  1. 厚生労働省「確かめよう労働条件」退職、解雇、雇止めなど
  2. 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」

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このコラムを書いた人

齋藤 光公認心理師・臨床心理士

ALVARA Counseling Services代表。公認心理師・臨床心理士として相談に携わり、日々の暮らしや人との関わりを考えるための情報を執筆しています。

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このコラムについて

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